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【61.5話】 リリアとゼフと教会と ※過去の話し※
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リリアの生まれ育った村、ウッソ村
リリアが教会に住み始めて少し経つ。両親を失ってショックだったリリアも元気になってきている。
ゼフがリリアを教会に引き取った当初はショック状態で不安定だったが、無理させず教会の日課をこなす事により回復してきている。どうやら、回復し始めた今、リリアは忙しくしておく方が回復に良いようだ。
朝起きて、掃除、洗濯、教科の勉強、法典読み等を行う。ゼフが食事を用意していたが、最近では朝目覚めると朝食が出来上がっている事も増えた。
法事があればリリアも法事についていく。問題があるかと思っていたが、お墓も掃除して、ガウとメルの墓にも山から取って来た花を供えているようだ。
ゼフ(ゼフロード・アギガン・ド・ベリンガー)
治癒魔法を使えない、少々異色のファーザー。元々、今は廃村になってしまったが、ウッソ村の近くにあった村出身の農民。孤児となり、ルーダ・コートの教会で修道児となったが、勉学に才能を発揮し、当時のファーザーに見初められ国の学校を卒業。神学、自然学、薬学の課程を修業している。
その後、教会の関係で人脈を広げ王宮に出入りできる特級市民階級を得たが、街の生活に見切りをつけて、教会不在となっていたウッソ村の牧師として街の教会職を早期退職し着任してきた。薬草の知識は豊富だが治癒魔法は出来ない。
ファーザーとして申し分ない知識と勤務内容だが、元々学者であり、引退生活っぽい感覚もあり、布教活動や説法をあまりせず、特に子供達に学問教える時等は科学的な考え方をしている。
この“らしくない”考え方がリリアを自由に育てられた環境かも知れない。
元々アギガンと言う名前であったが、特級市民となった時にゼフロードと名前を改名している。
リリアはゼフ、ゼフ様、ファーザー・ゼフと気まぐれに呼んでいる。
最初はリリアにファーザー・ゼフと呼ぶように注意していたが、リリアは気にしてない上、プライベート、感情的な時はゼフ、叱られた時はゼフ様、法事等ではファーザー・ゼフとリリアが呼び分けている感があったため自由に呼ばせるようになった。
さて、リリアは教会に来ていちよう修道女となったわけだが、ゼフはあまり修道女としてのしつけはしていなかった。ただ、掃除、洗濯、勉強等は日課としてきっちりとやらせていた。リリアは性格的にも修道女には合っていないようだ。日課をこなしたら山で狩り、薬草取りをさせた方が生き生きとしている。
薬草作りはメルに教わってなかなかの腕前、教会でも治療の役に立つ。
料理については、もう少し大人になったら支度させようと思っていたが、必要に応じて簡素な物をかってに作って食べている。ついでにゼフに作ってくれる時もある。
リリアは卵と肉を料理に使う時には必ずゼフの許可をとりに来た。
リリアも法事にはついて来た。必要に応じてお手伝いをするが、それ以外は家人の様な体で座っている。礼拝堂でも同じようにお手伝いをしては、それ以外は「リリアは修道女らしないねぇ」と笑うのを聞いてか聞かずか、黙って席に座っていた。
村の頂き物はゼフの書斎か礼拝堂に置いておく。誰が何を持ってきたか聞くと次からは報告もするようになった。
山で獲れた肉や果実はゼフに報告するし、定期の商人が来れば薬草を売る。ガウがするのを見ていたのであろう。
ゼフが一緒に行って、商人にリリアの事情を話すと、ちょっと高く買い取ったり、おまけしてくれるようになった。
申し分ない。この年齢にしては出来過ぎだが…
“はたしてリリアはこんな娘であろうか?”ゼフは思っていた。
ある晩、何気なく食事場に行こうとしたゼフは小さな礼拝堂に人影を見た。
“おや?ゴーストか?鎮魂したと思ったが、わしの腕では足りないか?”
暗い中、影に歩み寄ると見たことある姿。
リリアが座りポロポロと涙を流している。驚きはなかった。リリアの年で両親を喪いそうそう簡単に立ち直れるはずはない。
ゼフはホットミルクにレモンとハチミツを入れた飲み物を持って来てリリアの前に置くと自らもしばらく隣に座していた。
ゼフが座ると、安心したのかリリアの嗚咽が大きくなった。
「… 夢か… 怖いのか」沈黙の後にゼフがリリアに聞く。
リリアが言うには事件以来、時々同じような夢を見るようになったそうだ。
夢なので違いはあるが、得体の知れない何かが四方から迫りくる中、無人の村をどこまでも逃げる夢。ガウとメルが村のどこかにいるはずだが出会う事もできず、ひたすら何かから逃げるのだ。リリアはこの夢が大嫌い。
日中眠そうにしていたり、時にはゼフの書斎に来てウトウトしている時があるが、たいてい悪夢を見た次の日だろうとゼフは思っている。
「…………」リリアはゼフに聞かれコクコクと頷いて続けた。
「ゼフ… もう今日は寝たくないよ…」
「… 例の悪夢か…」ゼフが静かに言う。
「… 夢だけど、悪夢じゃないの。本当に怖いのは悪夢じゃないの」リリアが涙をこぼす。
「………… もっと怖い夢をみるのか?」
リリアはうつ向き首を振ると続けた。
「夢は… 楽しいのよ。父さんと手をつなぎ、母さんのお膝の上で甘えられるの。幸せいっぱいの夢…」
「……………」ゼフは黙って聞いている。リリアの恐怖と悲哀が理解できた気がする。
「でも、夢から覚める度に父さんと母さんを喪うの。もう何十回も喪って、この先も起きる度に何百回も死に別れがあるの… 寝るの怖い… 起きるのも怖いの…」
言うとブルブルと肩を震わせて泣き出した。
なるほど、悪夢等と比べようもない程残忍な事だ…
言葉のかけようもない。
しばらく泣いていたリリアがゼフに抱き着き訴えた。
「明日、鶏肉のオムライスが食べたい…」
「… よかろう。しかし、オムライスとはそもそも鶏肉を使う物じゃ」
ゼフが答えると、リリアは声をあげてワンワンと泣き出した。
リリアが教会に住み始めて少し経つ。両親を失ってショックだったリリアも元気になってきている。
ゼフがリリアを教会に引き取った当初はショック状態で不安定だったが、無理させず教会の日課をこなす事により回復してきている。どうやら、回復し始めた今、リリアは忙しくしておく方が回復に良いようだ。
朝起きて、掃除、洗濯、教科の勉強、法典読み等を行う。ゼフが食事を用意していたが、最近では朝目覚めると朝食が出来上がっている事も増えた。
法事があればリリアも法事についていく。問題があるかと思っていたが、お墓も掃除して、ガウとメルの墓にも山から取って来た花を供えているようだ。
ゼフ(ゼフロード・アギガン・ド・ベリンガー)
治癒魔法を使えない、少々異色のファーザー。元々、今は廃村になってしまったが、ウッソ村の近くにあった村出身の農民。孤児となり、ルーダ・コートの教会で修道児となったが、勉学に才能を発揮し、当時のファーザーに見初められ国の学校を卒業。神学、自然学、薬学の課程を修業している。
その後、教会の関係で人脈を広げ王宮に出入りできる特級市民階級を得たが、街の生活に見切りをつけて、教会不在となっていたウッソ村の牧師として街の教会職を早期退職し着任してきた。薬草の知識は豊富だが治癒魔法は出来ない。
ファーザーとして申し分ない知識と勤務内容だが、元々学者であり、引退生活っぽい感覚もあり、布教活動や説法をあまりせず、特に子供達に学問教える時等は科学的な考え方をしている。
この“らしくない”考え方がリリアを自由に育てられた環境かも知れない。
元々アギガンと言う名前であったが、特級市民となった時にゼフロードと名前を改名している。
リリアはゼフ、ゼフ様、ファーザー・ゼフと気まぐれに呼んでいる。
最初はリリアにファーザー・ゼフと呼ぶように注意していたが、リリアは気にしてない上、プライベート、感情的な時はゼフ、叱られた時はゼフ様、法事等ではファーザー・ゼフとリリアが呼び分けている感があったため自由に呼ばせるようになった。
さて、リリアは教会に来ていちよう修道女となったわけだが、ゼフはあまり修道女としてのしつけはしていなかった。ただ、掃除、洗濯、勉強等は日課としてきっちりとやらせていた。リリアは性格的にも修道女には合っていないようだ。日課をこなしたら山で狩り、薬草取りをさせた方が生き生きとしている。
薬草作りはメルに教わってなかなかの腕前、教会でも治療の役に立つ。
料理については、もう少し大人になったら支度させようと思っていたが、必要に応じて簡素な物をかってに作って食べている。ついでにゼフに作ってくれる時もある。
リリアは卵と肉を料理に使う時には必ずゼフの許可をとりに来た。
リリアも法事にはついて来た。必要に応じてお手伝いをするが、それ以外は家人の様な体で座っている。礼拝堂でも同じようにお手伝いをしては、それ以外は「リリアは修道女らしないねぇ」と笑うのを聞いてか聞かずか、黙って席に座っていた。
村の頂き物はゼフの書斎か礼拝堂に置いておく。誰が何を持ってきたか聞くと次からは報告もするようになった。
山で獲れた肉や果実はゼフに報告するし、定期の商人が来れば薬草を売る。ガウがするのを見ていたのであろう。
ゼフが一緒に行って、商人にリリアの事情を話すと、ちょっと高く買い取ったり、おまけしてくれるようになった。
申し分ない。この年齢にしては出来過ぎだが…
“はたしてリリアはこんな娘であろうか?”ゼフは思っていた。
ある晩、何気なく食事場に行こうとしたゼフは小さな礼拝堂に人影を見た。
“おや?ゴーストか?鎮魂したと思ったが、わしの腕では足りないか?”
暗い中、影に歩み寄ると見たことある姿。
リリアが座りポロポロと涙を流している。驚きはなかった。リリアの年で両親を喪いそうそう簡単に立ち直れるはずはない。
ゼフはホットミルクにレモンとハチミツを入れた飲み物を持って来てリリアの前に置くと自らもしばらく隣に座していた。
ゼフが座ると、安心したのかリリアの嗚咽が大きくなった。
「… 夢か… 怖いのか」沈黙の後にゼフがリリアに聞く。
リリアが言うには事件以来、時々同じような夢を見るようになったそうだ。
夢なので違いはあるが、得体の知れない何かが四方から迫りくる中、無人の村をどこまでも逃げる夢。ガウとメルが村のどこかにいるはずだが出会う事もできず、ひたすら何かから逃げるのだ。リリアはこの夢が大嫌い。
日中眠そうにしていたり、時にはゼフの書斎に来てウトウトしている時があるが、たいてい悪夢を見た次の日だろうとゼフは思っている。
「…………」リリアはゼフに聞かれコクコクと頷いて続けた。
「ゼフ… もう今日は寝たくないよ…」
「… 例の悪夢か…」ゼフが静かに言う。
「… 夢だけど、悪夢じゃないの。本当に怖いのは悪夢じゃないの」リリアが涙をこぼす。
「………… もっと怖い夢をみるのか?」
リリアはうつ向き首を振ると続けた。
「夢は… 楽しいのよ。父さんと手をつなぎ、母さんのお膝の上で甘えられるの。幸せいっぱいの夢…」
「……………」ゼフは黙って聞いている。リリアの恐怖と悲哀が理解できた気がする。
「でも、夢から覚める度に父さんと母さんを喪うの。もう何十回も喪って、この先も起きる度に何百回も死に別れがあるの… 寝るの怖い… 起きるのも怖いの…」
言うとブルブルと肩を震わせて泣き出した。
なるほど、悪夢等と比べようもない程残忍な事だ…
言葉のかけようもない。
しばらく泣いていたリリアがゼフに抱き着き訴えた。
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