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【87話】 線上のリリア
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リリアはマンティコアが出現する峠に来て、メソメソしていた。めっちゃメソメソだ。まぁ、メソを通り越している。
リリアはペコにこっぴどく怒られた後、一度本当に断る気で村長の所に向かった。
本当は断りたくない。自分は勇者として頼られたのだ。伝説の勇者の国で勇者としてクエストを引き受けたとたん「やっぱり無かったことに」と言わなければいけないなんて…
しかし、マンティコアと音的に飴玉の大きい奴気分で引き受けてみたら、見たことも無いガチモンスだ。あれはやばい…「マジでやべぇ奴」だ…
あれは無理だ、しかも一人では絶対無理…断るしかない。
リリアは思いながら、垣根の傍でふと足を止めた。
「村長から聞いたか?ルーダリアから女の勇者様が来て、マンティコア退治を引き受けてくださったそうだぞ」
「帝国の勇者様はお忙しそうで、時間がかかりそうらしいから良かった」
「最近、山を越えての荷物が届かなかったからこれで助かるわ」
リリアがそっと覗くと村人が安堵して話しているのが見えた…
「……やらずに諦めるのは… せめて少し挑戦しないと、父さんだって…」
リリアはペンダントを握り思い直すと村の外れに向かった。
村の外れから峠に来たリリア。夕暮れになってきた。
“この先マンティコア出現地帯・立ち入り禁止・保安部”の通行止めで大泣きしているリリア。
先刻ここを超えて峠を上がったリリア。
「言ったって、何とかなるわ」ここまで足早にやって来たリリアはアドレナリンのせいかそんな気分にもなっていた。
ところが…
現場まで来たリリアは驚愕した。
大量の馬車、鎧等食べれない者が累々と峠道に続く。骨だけになった馬、人。そしてそれらの骨は信じがたい力で砕かれているのが一目でわかった。
リリアが驚いて鎧に躓いた。見ると、頭部と四股と下半身が失われているだけで、潰れた鎧の中に胸部は綺麗に残っている、強大な力で一瞬に引きちぎられた証拠。
「ぅ… ぅわ… わあぁぁ!」リリアは慌てて逃げ出した。
リリアは通行止めで吐きながら大泣きしていた。
この通行止めから向こう側は死地。
いや、これは人間がかってに敷いた境界線であって、通行止めの向こうも手前も危険度は同じ事だが、リリアにとって死の象徴である“保安部”とかかれた看板の前で大泣きしている。
なんでこんな事を軽率に引き受けてしまったのだろうか。あれは退治できない。むしろ自分が一瞬で退治される側だ。逃げたい、断りたいが村長と村人は自分を勇者として信用と期待している。「これで平和になる」と笑顔で話していた…
ルーダリアでは空気勇者、むしろ笑い者だ。勇者になるまでは勇者なんてどうでもよかったが、あの扱いに比べたら、この国の民の期待に応えるべきではないのか。
今更「無理なので辞めます」とは言えない。
腹が立つがペコの言う通り、自分は一般人と何も変わらないただの一国民だ。勇者として何か活躍しようだなんて思いあがっていた。
でも、父のガウは自分の家系が勇者の血筋と誇りにしていた。国民が困っていると知って黙っている事を許しただろうか、今ここで辞めることを許してくれるだろうか。
やるだけやってみてダメなら逃げるか…
いや、あれはやるだけやってみてレベルではない。出会ったら最後に決まっている。
「リ、リリアは調和の神の信仰者よ… 争いごとを回避したって…」
自然の神の教義にはここで逃げ帰っても教えに背きはない。そもそも戦う事も争う事も想定されていない。世の中は全て繋がって、均衡、摂理に従え、なのだ。
「だけど、勇者として父さん、母さんと神殿で出会うには…」
戦いに身を投じる者はヴァルキリーの教えにより卑怯な戦いや仲間を見殺しにするような行いを禁じている。仲間… とはどこまで仲間なのか?どの状態までか?
困っている村人は?先に骸となってしまった冒険者達は?
勇者として死ぬ方が良いのか?… 勇者を辞めて帰るべきなのか…
「母さんごめんなさい命を粗末にしたと思わないで。あたしここに来て勇者様と呼ばれて嬉しかったの。リリアは父さんの子。父さん勇者の血を誇ってね。サンズリバーを渡って神殿に着いたら、家族団欒を飽くまでしましょう」
リリアは大泣きしながらペンダントを手に握る。
リリアは泣きながら通行止めを再び超えた。まだメチャメチャ泣いていた。
リリアの陰は長く伸びた山の陰に隠れる時間帯。
「リリア、泣きべそかいてトイレにでも閉じこもっていると思ったけど…」
「ちゃっかり、村長の家にお呼ばれしてるのかと思ったけど…」
「機嫌なおして食堂か屋台でお茶してるかと思ったけど…」
「そこにはいなかったね、どこ行ったのかしら?…………………… まさか…ね…」一同。
リリアはペコにこっぴどく怒られた後、一度本当に断る気で村長の所に向かった。
本当は断りたくない。自分は勇者として頼られたのだ。伝説の勇者の国で勇者としてクエストを引き受けたとたん「やっぱり無かったことに」と言わなければいけないなんて…
しかし、マンティコアと音的に飴玉の大きい奴気分で引き受けてみたら、見たことも無いガチモンスだ。あれはやばい…「マジでやべぇ奴」だ…
あれは無理だ、しかも一人では絶対無理…断るしかない。
リリアは思いながら、垣根の傍でふと足を止めた。
「村長から聞いたか?ルーダリアから女の勇者様が来て、マンティコア退治を引き受けてくださったそうだぞ」
「帝国の勇者様はお忙しそうで、時間がかかりそうらしいから良かった」
「最近、山を越えての荷物が届かなかったからこれで助かるわ」
リリアがそっと覗くと村人が安堵して話しているのが見えた…
「……やらずに諦めるのは… せめて少し挑戦しないと、父さんだって…」
リリアはペンダントを握り思い直すと村の外れに向かった。
村の外れから峠に来たリリア。夕暮れになってきた。
“この先マンティコア出現地帯・立ち入り禁止・保安部”の通行止めで大泣きしているリリア。
先刻ここを超えて峠を上がったリリア。
「言ったって、何とかなるわ」ここまで足早にやって来たリリアはアドレナリンのせいかそんな気分にもなっていた。
ところが…
現場まで来たリリアは驚愕した。
大量の馬車、鎧等食べれない者が累々と峠道に続く。骨だけになった馬、人。そしてそれらの骨は信じがたい力で砕かれているのが一目でわかった。
リリアが驚いて鎧に躓いた。見ると、頭部と四股と下半身が失われているだけで、潰れた鎧の中に胸部は綺麗に残っている、強大な力で一瞬に引きちぎられた証拠。
「ぅ… ぅわ… わあぁぁ!」リリアは慌てて逃げ出した。
リリアは通行止めで吐きながら大泣きしていた。
この通行止めから向こう側は死地。
いや、これは人間がかってに敷いた境界線であって、通行止めの向こうも手前も危険度は同じ事だが、リリアにとって死の象徴である“保安部”とかかれた看板の前で大泣きしている。
なんでこんな事を軽率に引き受けてしまったのだろうか。あれは退治できない。むしろ自分が一瞬で退治される側だ。逃げたい、断りたいが村長と村人は自分を勇者として信用と期待している。「これで平和になる」と笑顔で話していた…
ルーダリアでは空気勇者、むしろ笑い者だ。勇者になるまでは勇者なんてどうでもよかったが、あの扱いに比べたら、この国の民の期待に応えるべきではないのか。
今更「無理なので辞めます」とは言えない。
腹が立つがペコの言う通り、自分は一般人と何も変わらないただの一国民だ。勇者として何か活躍しようだなんて思いあがっていた。
でも、父のガウは自分の家系が勇者の血筋と誇りにしていた。国民が困っていると知って黙っている事を許しただろうか、今ここで辞めることを許してくれるだろうか。
やるだけやってみてダメなら逃げるか…
いや、あれはやるだけやってみてレベルではない。出会ったら最後に決まっている。
「リ、リリアは調和の神の信仰者よ… 争いごとを回避したって…」
自然の神の教義にはここで逃げ帰っても教えに背きはない。そもそも戦う事も争う事も想定されていない。世の中は全て繋がって、均衡、摂理に従え、なのだ。
「だけど、勇者として父さん、母さんと神殿で出会うには…」
戦いに身を投じる者はヴァルキリーの教えにより卑怯な戦いや仲間を見殺しにするような行いを禁じている。仲間… とはどこまで仲間なのか?どの状態までか?
困っている村人は?先に骸となってしまった冒険者達は?
勇者として死ぬ方が良いのか?… 勇者を辞めて帰るべきなのか…
「母さんごめんなさい命を粗末にしたと思わないで。あたしここに来て勇者様と呼ばれて嬉しかったの。リリアは父さんの子。父さん勇者の血を誇ってね。サンズリバーを渡って神殿に着いたら、家族団欒を飽くまでしましょう」
リリアは大泣きしながらペンダントを手に握る。
リリアは泣きながら通行止めを再び超えた。まだメチャメチャ泣いていた。
リリアの陰は長く伸びた山の陰に隠れる時間帯。
「リリア、泣きべそかいてトイレにでも閉じこもっていると思ったけど…」
「ちゃっかり、村長の家にお呼ばれしてるのかと思ったけど…」
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「そこにはいなかったね、どこ行ったのかしら?…………………… まさか…ね…」一同。
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