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【136話】 公認勇者と冒険者仲間と
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リリアとブラックとダカットは惨殺の現場に立ち入った。
念のため書くが、いかにも三人にいるようだがビジュアル的にはホウキを手にしたポニーテールとごっつい奴の二人。
因みに現場に入る前にシェリフ達に「関係者以外立ち入り禁止」的に注意された。
リリアが自分は公認勇者だと言い張って、冒険者証や勇者の紋章入りハンカチを見せて力説。
「…… よくわからん奴らが来たが、こっちは忙しいし手伝ってくるというならどうぞ」的に参加を許可された。
「勇者の紋章を国から与えられてると言ってもハンカチじゃだめねぇ。あたし今度、もっとちゃんとしたそれっぽいの貰ってくる」リリアは言う。
アイテムの外見上の信用ではなく紋章の認知度な気がするが…
「勇者って大変なんすねえ、先輩。大変だからこその勇者っすね!」爽やかなブラック。
「ぅわぁ… これは酷い…」
惨殺の現場に行ってリリア達は絶句。
村人八名程で村の離れにある畑に移動中に襲われたようだ。突然襲いかかり、逃げ惑う村人を執拗に追って殺したのであろう。木々の中に犠牲者が倒れている。知らせを聞き駆けつけた家族であろう、変わり果てた姿の家人に縋り付いて泣き崩れている。
生存者がいるらしくシェリフが話を聞いたところによると、デスナイトとソールイーター数体が突然襲い掛かかり、殺戮の限りを尽くして去ったようだ。連中は生命力を感知して襲ってくる。野放しにはできない。討伐しなければいけない。
「ダカット、強敵よ。一時期置いていくから待っててね」リリアはホウキのダカットに言う。
「… やっぱり、俺が一緒じゃ戦えないか… 俺、待ってるぜ…」ダカットが呟く。
「先輩、その前にあの奥さんを落ち着かせてくるっす」ブラックが指さす方に犠牲者に寄り沿う女性がいる。
「うん… そんなに取り乱していそうにも見えないけど…」リリアは見まわすがもっと阿鼻叫喚している者達も多い。
「…… いや、あの人… 助けが必要っす…」ブラックが呟く。
リリア達が女性の傍に寄る。
「あなた… も、もう大丈夫よ。さあ、一緒に帰りましょう。子供達も待ってるわ」
男性の顔を丁寧になでながら女性が優しく語りかけている。
「生存者なのね。良かった、奥さん、治癒を……… ヴぇ!!」リリアは腰を抜かした。
「あなた… 首が見つかったわ。首と胴がまたつながったでしょ。さぁ、帰りましょう。起きてあなた」
切断された首を胴にあてがい語りかけている。
リリアが声を上げかけるのをブラックが制した。
「ショックで錯乱状態っす。このままスリープさせてシェリフ達にみていてもらうっす」
ブラックが手際よく呪文で女性を眠らせた。リリアは朝ごはんをリセット中。
「それではくれぐれも注意し、これ以上犠牲を出さないよう、犠牲にならないよう捜索願います」
ブリーフィングが行われ、デスナイトの捜索&討伐が始まった。
デスナイト一体とソールイーターが最低四体はいるようだ。強力で危険な魔物なので、数の有利で戦いたいが、同時に広範囲を探さなければならない。リリア達を含みシェリフ達で六人一組の四班をつくり周辺区域を捜索開始。
「これホウキのダカット。ホウキだけど宿ってるの、人権あるのよ。詳しくはまた後で。とにかく戻って来るまで預かってね」
リリアはダカットを設営本部に預けて出発。
ダカットも「いってらっしゃい」くらい言えば恰好つくが黙っているので周囲が“あの女、ホウキを置いていったぞ”的な視線で見送る。
リリアとブラックは村のシェリフ四人と組んで林を捜索。日没前までは捜索をする予定。
シェリフ達が緊張しているのがわかる。シェリフは村の保安官であり、村を守るのが仕事だ。範囲としては村に接続する地域も保護対象区域だが実際には村から離れて戦闘する事は少ない。村や道で襲われるならまだしも、森林や野原の魔物を探し出して退治することなど稀である。緊張で身を固くする。
リリアもウッソ村のシェリフ上がりであるが、シェリフの“実力は一般人より強い人”である。
代々シェリフをしているか、村で喧嘩が強いのでシェリフになり、村を通して国から給料が出る分、一般人より剣技の練習時間がある程度。
それ以上なら街で兵士なり傭兵なり何か手があるはず。とにかくリリアも含め、特別な人たちではないってこと。
冒険慣れしているリリア達はシェリフ達より状況に慣れがある。
周囲の魔物を数回退治して、実力差が現れる。ブラックに至っては一人で五人前働くし、リリアだってかなり手際が良い。緊張で無言だったシェリフ達とも打ち解けてくる。
「やっぱり冒険者は野戦のプロだな」シェリフ達。
「冒険者っていうか、勇者だからね」リリア。
「一緒だろう」シェリフ達。
「あのね、勇者は冒険者の中でもトップランカーの称号よ」リリア。
ブラックは水を飲みながら頷いている。
「勇者なんて自称じゃないのか?」シェリフ達。
「あのね、線引きが無いので名乗るのは勝手だけど、公認勇者なんだよね」リリア。
「公認?… 王国で認められた?… あの制度まだあったのか」シェリフ達。
「なるほど… それでそんなに強いのか… 確かに実力はすごいな」シェリフ達。
「今は女勇者だと聞いたことあるが… 男が勇者なのか…」シェリフ達。
「女勇者ってあれだろ。各地で無銭飲食して男を騙して歩いてた奴だろ?首になったんじゃねえの?」シェリフ達。
「今も女勇者だよ。勇者リリア」リリア。
「そうそう… リリア、そんな名前だったな… え?おまえがリリアなの? 俺たちはてっきり…」シェリフ達。
「あたしリリア。公認勇者なの、よろしくね。後、詐欺も無銭飲食もあたしじゃないからね」リリアが言う。
「お、おう…」
シェリフ達はリリアとブラックをしげしげと見比べている。
「先輩は俺なんかよりよっぽど勇者っす」
ブラックは胸を張っている。
念のため書くが、いかにも三人にいるようだがビジュアル的にはホウキを手にしたポニーテールとごっつい奴の二人。
因みに現場に入る前にシェリフ達に「関係者以外立ち入り禁止」的に注意された。
リリアが自分は公認勇者だと言い張って、冒険者証や勇者の紋章入りハンカチを見せて力説。
「…… よくわからん奴らが来たが、こっちは忙しいし手伝ってくるというならどうぞ」的に参加を許可された。
「勇者の紋章を国から与えられてると言ってもハンカチじゃだめねぇ。あたし今度、もっとちゃんとしたそれっぽいの貰ってくる」リリアは言う。
アイテムの外見上の信用ではなく紋章の認知度な気がするが…
「勇者って大変なんすねえ、先輩。大変だからこその勇者っすね!」爽やかなブラック。
「ぅわぁ… これは酷い…」
惨殺の現場に行ってリリア達は絶句。
村人八名程で村の離れにある畑に移動中に襲われたようだ。突然襲いかかり、逃げ惑う村人を執拗に追って殺したのであろう。木々の中に犠牲者が倒れている。知らせを聞き駆けつけた家族であろう、変わり果てた姿の家人に縋り付いて泣き崩れている。
生存者がいるらしくシェリフが話を聞いたところによると、デスナイトとソールイーター数体が突然襲い掛かかり、殺戮の限りを尽くして去ったようだ。連中は生命力を感知して襲ってくる。野放しにはできない。討伐しなければいけない。
「ダカット、強敵よ。一時期置いていくから待っててね」リリアはホウキのダカットに言う。
「… やっぱり、俺が一緒じゃ戦えないか… 俺、待ってるぜ…」ダカットが呟く。
「先輩、その前にあの奥さんを落ち着かせてくるっす」ブラックが指さす方に犠牲者に寄り沿う女性がいる。
「うん… そんなに取り乱していそうにも見えないけど…」リリアは見まわすがもっと阿鼻叫喚している者達も多い。
「…… いや、あの人… 助けが必要っす…」ブラックが呟く。
リリア達が女性の傍に寄る。
「あなた… も、もう大丈夫よ。さあ、一緒に帰りましょう。子供達も待ってるわ」
男性の顔を丁寧になでながら女性が優しく語りかけている。
「生存者なのね。良かった、奥さん、治癒を……… ヴぇ!!」リリアは腰を抜かした。
「あなた… 首が見つかったわ。首と胴がまたつながったでしょ。さぁ、帰りましょう。起きてあなた」
切断された首を胴にあてがい語りかけている。
リリアが声を上げかけるのをブラックが制した。
「ショックで錯乱状態っす。このままスリープさせてシェリフ達にみていてもらうっす」
ブラックが手際よく呪文で女性を眠らせた。リリアは朝ごはんをリセット中。
「それではくれぐれも注意し、これ以上犠牲を出さないよう、犠牲にならないよう捜索願います」
ブリーフィングが行われ、デスナイトの捜索&討伐が始まった。
デスナイト一体とソールイーターが最低四体はいるようだ。強力で危険な魔物なので、数の有利で戦いたいが、同時に広範囲を探さなければならない。リリア達を含みシェリフ達で六人一組の四班をつくり周辺区域を捜索開始。
「これホウキのダカット。ホウキだけど宿ってるの、人権あるのよ。詳しくはまた後で。とにかく戻って来るまで預かってね」
リリアはダカットを設営本部に預けて出発。
ダカットも「いってらっしゃい」くらい言えば恰好つくが黙っているので周囲が“あの女、ホウキを置いていったぞ”的な視線で見送る。
リリアとブラックは村のシェリフ四人と組んで林を捜索。日没前までは捜索をする予定。
シェリフ達が緊張しているのがわかる。シェリフは村の保安官であり、村を守るのが仕事だ。範囲としては村に接続する地域も保護対象区域だが実際には村から離れて戦闘する事は少ない。村や道で襲われるならまだしも、森林や野原の魔物を探し出して退治することなど稀である。緊張で身を固くする。
リリアもウッソ村のシェリフ上がりであるが、シェリフの“実力は一般人より強い人”である。
代々シェリフをしているか、村で喧嘩が強いのでシェリフになり、村を通して国から給料が出る分、一般人より剣技の練習時間がある程度。
それ以上なら街で兵士なり傭兵なり何か手があるはず。とにかくリリアも含め、特別な人たちではないってこと。
冒険慣れしているリリア達はシェリフ達より状況に慣れがある。
周囲の魔物を数回退治して、実力差が現れる。ブラックに至っては一人で五人前働くし、リリアだってかなり手際が良い。緊張で無言だったシェリフ達とも打ち解けてくる。
「やっぱり冒険者は野戦のプロだな」シェリフ達。
「冒険者っていうか、勇者だからね」リリア。
「一緒だろう」シェリフ達。
「あのね、勇者は冒険者の中でもトップランカーの称号よ」リリア。
ブラックは水を飲みながら頷いている。
「勇者なんて自称じゃないのか?」シェリフ達。
「あのね、線引きが無いので名乗るのは勝手だけど、公認勇者なんだよね」リリア。
「公認?… 王国で認められた?… あの制度まだあったのか」シェリフ達。
「なるほど… それでそんなに強いのか… 確かに実力はすごいな」シェリフ達。
「今は女勇者だと聞いたことあるが… 男が勇者なのか…」シェリフ達。
「女勇者ってあれだろ。各地で無銭飲食して男を騙して歩いてた奴だろ?首になったんじゃねえの?」シェリフ達。
「今も女勇者だよ。勇者リリア」リリア。
「そうそう… リリア、そんな名前だったな… え?おまえがリリアなの? 俺たちはてっきり…」シェリフ達。
「あたしリリア。公認勇者なの、よろしくね。後、詐欺も無銭飲食もあたしじゃないからね」リリアが言う。
「お、おう…」
シェリフ達はリリアとブラックをしげしげと見比べている。
「先輩は俺なんかよりよっぽど勇者っす」
ブラックは胸を張っている。
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