勇者の血を継ぐ者

エコマスク

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【173.5話】 “一”冒険者の勇者リリア

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「危険な思いをしなくて良い仕事って楽ちんね」
エリフテンのお世話係りと警備の仕事に来てリリアはご機嫌。要領よく仕事とサボりをしている。


「えぇ?ブラック達があたしを呼んでる?馬車が襲撃?わかった、直ぐ行く」
施設内を警備に回っていたら知らせが来た。
何度か魔物による被害を受けていたが今までは大事ではなかった。

「コトロ、事件よ、お世話はニャンとピョンに任せて行くわよ」リリアが言う。
「わかりました。でも、ネーコは気まぐれなところがありますから…失礼をしかねません… 私とラビで残った方が良いと思います」コトロが心配する。
「襲撃だよ、まぁ危険な事はリリアがやるとして… ニャン子ちゃんは残った方が良いでしょ」リリア。
「ネーコ行くニャン。危険が無いならお嬢様のご機嫌とるよりいいニャン」
「襲撃ですか… そうですね私が妥当ですね。お世話はラビを中心にお願いして私がリリアと向かいます」
リリアとコトロ急いで空いている馬車を借りて塔の砦を出た。


「襲撃だって?怪我人は?相手は賊?」
リリア達は現場に到着。塔への丘の道を少し外れた草原。ブラック達と他の者が結構集まっている。
「先輩、お疲れ様っす。貴族の方がここで馬車を止めて休息していたようで、少し馬車を離れた隙にゴブリンに荷物の一部等を盗まれたらしいっす。子供が脅された程度で怪我人はいないっす」ブラックが説明する。
「襲撃だなんて言うからてっきり… まぁ、怪我人がいなかったのは良かったけど… こんな塔まで目と鼻の先で休息しなくても良いのに… 馬車の装飾品を取られて、食料と着替えを取って逃げていったのね… それで勇者リリアにどんなご用?」
「冒険者全員に声をかけたんだ。勇者に用事はないぜ」ザンドンが淡々と言う。
「ゴブリンを退治して荷物を取り返せってよ」ゴーザル。
「… 大した盗難でもないじゃない。お金持ちなんでしょ。諦めなさいよ…って皆に言ってもしょうがないけど… この辺はゴブリンの集落が多いし、地元だし現行犯を取り逃がしたら見つけるのは不可能だよ」リリア。
「そうすっけど… 他の者は道の警備と村からの来賓の警備に戻しますけど… 貴族
方がゴブリンを退治してこいと… カンカンっす」ブラック。

「放っておけば?… え?… リリアが?… 何でリリアがその貴族と… 責任者だから?… ……いやよ、行かない。だってさっきザンドンに勇者リリアには用はないって言われたよ… あのね、リリアが責任者なのは勇者だから責任者なのよ。だから“一”冒険者のリリアには関係無い事なの… あたし“一”冒険者なの、ザンドンがそう言ったよね… 皆も納得したよね? じゃ、行かない… なにザンドン… 俺をなめてるのかって?… 違うわよ。勇者リリアとして責任者をしているって話よ。じゃなによ!駆け出しの女冒険者で美人でグラマラスで弓が凄いだけのプリティリリアちゃんに責任者が務まると思ってるの?… い・や・よ!!絶対に行かない!なんで馬鹿にされてるのにこんな時だけ責任者扱いされるの!絶対にいや! コトロ、帰ろう。冒険者のリリアちゃんには全然無関係な事みただいよ。 …なにザンドン!やろうっての!いいわよ!やってやるわよ! 泣きべそかかせてやるわ!」
何だかリリアが内輪もめを始めた。周りが止めに入る。
リリアの気持ちも理解できるし、結構理屈も通っている。


なんだかんだで責任者としてリリアが貴族の話しを聞くことになった。
ダダをこねても実際に責任者としての立場にあるので仕方ない…
「なんだよ… こんな時だけ…」リリアはブツブツ言いながら貴族の所に行く。
ポニーテールを揺らしてホウキと弓を手に歩く後ろ姿…
「うーん… 責任者ですが… リリアでは不安がありますね」コトロが呟く。
「… 同感っす… 様子を見ますか」ブラック。

リリアが貴族と話す、貴族はかなりご立腹のようだ。
「こんにちは、あたし… え?あぁ、ですから… あたしが責任者です。小娘じゃ話にならないですって? じゃ、あたしは帰りますね。さようなら」
リリアはスタスタと戻って来た。早業…

「リリアには用はないってさ… コトロ、帰ろう!帰るわよ! だって本人があたしに用がないって言ってるし… 後は任せたよ。犯人捜ししなくていいわよ。行きたいならどうぞご勝手に。この辺はゴブリン集落も多いから間違っても証拠も無しに暴力ふるっちゃだめよ。後輩君任せた!」
リリアはコトロを馬車に押し上げると、さっさと現場を後にする。


「リリア、あれで良かったのですか?ちょっと無責任な気も…」コトロは馬車に揺れながら質問する。
「リリアが目の前にいて、話す必要ないっていうのだからいいでしょ。馬車の装飾を剥がして持っていったのと荷馬車から荷物を少し持っていったんでしょ?ゴブリン達のホームグラウンドだし、追いかけたって無駄よ。もう絶対に犯人なんか捜せないから。馬車にたかるゴブリンを子供が発見したら脅されただけでしょ?騒ぐほどじゃないよ。それより警備したようが良いよ」リリアは手綱を握って淡々としている。
「正しいけど… 後で怒られないか?貴族だぞ」ダカットが言う。
「大丈夫よ、あたし目の前にいましたけど何か?って怒鳴りこんでやるわ」リリア。
「傍で見ているとハラハラの連続ですね」コトロが苦笑い。

「戻ったらミーナかジュリエッタとおやつタイムよ!」
馬車は緑の中、つづら折りの坂を上がる。
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