勇者の血を継ぐ者

エコマスク

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【195話】 リリアと大使

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リリアはルーダリア城に来ている。もちろんコムラとホックを伴って。


リリアが本当の本物のルーダリア公認勇者と理解したコムラとホックはリリアにルーダリア国王にお目通りを頼んだ。
「まっかせなさい!…っと言いたいけど…  たぶん会えるような会えないような…」リリアは曖昧に笑っている。
リリアも少しは学んだ、王様は勇者に大した用はない。都合の良い時だけ呼び、その他は適当に他の者に相手をさせている。
確約はしない方が良いとさすがのリリアでも気がついている。
「我々はただの小さな商人ギルドのメンバーですからさすがに…」
コムラ達もリリアはともかく自分達が王様に会えるとは思っていない。会えても何か即日実益のある内容の話しはまずありえないだろう。
しかし、王様がダメでも通商関係者に顔通ししてもらえるだけでも実になる。
少しでも今後の種まきになるだろう。

そう言った意味ではリリアはリリアマップの件も含めて護衛以上の働きを十分にこなし、コムラ達から結構なお礼をしてもらい、今後もルーダリアに来る際は優先的にリリアと契約を結ぶ約束をしてくれた。
「ん?えぇ?こんなに貰えるの? お礼?何の?何かしたっけ? …なんかすごい事やらそうとしてない?… もらえるなら貰うけど… 大丈夫なかなぁ? まぁ、これで何かコトロ達と美味しいものでも食べに行くよ。お腹弾けるだろうね。うっふっふ」
物が右往左往したり技術を使ってサービスを提供する事に金銭が動くと思っているリリアには、今回リリアと旅をした恩恵が商売人としてコムラ達にどれだけあったのかよくわかっていないがとにかくリリアはハッピー。

リリアも可能な限り協力をしてコムラ達の最後のお願い「可能ならルーダリア国王にお目通り…」を実現させてこれが終わればリリアがコムラ、ホックを国境まで送って終了。


そういうわけでリリアはコムラ達とお城まで来ている。
今日のためにリリアは前日コムラとは別に単身お城に来ている。根回しのためだ。
コムラ達のリリアに対する評価は「やっぱ勇者名乗るだけあるんじゃね?」的になっている。リリアとしてはお城でもそれっぽい扱いをしてもらいたい。
「あなたどちら様?ユーシャさん?え?勇者さん?」ってな扱いは受けたくないリリア。

リリアの根回しの足取り
・庁舎に寄って勇者として入城希望を告げる→「とりあえずお城へ」と告げられる
・入城者リストに名前を記載すると一般客として入城、インフォメーションで要件を告げる
・長い時間待たされて勇者管理室のディルがリリアを引き取り現れる
 宮中で一番行きたくない部屋だが明日恥をかかされるよりはと立ち寄って室長の愚痴ともお説教ともつかない長話に我慢してつきあう。
・それが終わったらディルに用件を伝えて明日、王様に謁見できるように伝える。
 ついでにディルが門まで迎えに来て一般客入城以外の枠で入れてくれるように頼む。
・「明日は朝から王様は出かけるので無理な上に一商人と会う事はない」と断られる。
 リリアが通商大臣だけでもと頼むと「他国の商人と会って勝手に発言出来るものではないです」と断られた。リリアが頼み込むと「友好親善大使との雑談枠なら」と言われるのでリリアもそれで渋々了承。誰にも会えないよりは良い。
・「リリアが来たならついでに王様に会いましょう」と突然謁見の間に押し出される。
 王様は「勇者殿か…ぼちぼちやってる? あぁ、また何かあったらこっちから呼ぶから」的で手短な感じ。
 リリアにしたら「明日に会えないなら今会っても意味ない」的、王様の方も「特に呼んでねぇけど何しにきた?」的。どうやら管理室の私たち仕事していますPRに付き合わされた形。

「とにかく明日はディルが門まで迎えに来て!出来れば衛兵とかいっぱいで出て来て!何でって?勇者っぽい扱いを受けたいの、勇者なんだからその権利はあるでしょ!一般入場者の札を首からかけてインフォメーションで迷惑がられながら隅っこで待たされたくないの!お願い!… それと呼び捨てじゃなくてリリア様、か、リリア殿でもいいわ、とにかくフリートでは勇者はそれっぽい扱いされてるの!リリアだってそうされたいの!… えぇ?ルーダリアにはルーダリアのやりかた? わかってるって!でも、明日はおねがいしたいの!」
リリアはディルに頼み込む。見栄っ張りリリア…
いや、確かにもう少しそれっぽい扱いを受けても罰は当たらないはず…
「なんだか良くわかりませんが… リリアには結構がんばっていただいているので希望に添える様努力します」ディルは頷いた。


それで今日、コムラ達を伴ってお城に来たリリア。
「リリア殿、お待ちいたしておりました」
リリア達が一般開放門までいくとディルが待機していてくれた。メイドを一人連れている。
可愛らしいメイドさん。名札には“掃除番ミミ(見習い)”と書かれている。余って暇な人呼んできました感バリバリだが贅沢も言えない。とりあえず迎えて貰って一安心。
リリア、コムラ、ホックと三人で“ゲスト”と書かれた札を首から下げて一般入城門から入城。
リリアが話が違うと腹話術で問いただすと「来賓客、招待客門は書類を通さないといけない上、衛兵が配置に付き門の開閉を行わないといけません。大変なのです。このままゲストとしてロビーから通りましょう」とディルが説明する。

で、とりあえず勇者管理室に連れて行かれる。
「ねぇ!ここには来たくないっていったじゃない!何でここなの?」リリアの腹話術。
「昨日リリアが帰った後に室長が説教しわすれた事を思い出したそうで、今日連れてくるようにと仰せつかっています」ディルも腹話術。
こんな事にならないよう、昨日散々我慢して説教を黙って聞いてやっていたのに全く無意味…昨日の苦労は何だったのか…
リリア、コムラ、ホックと並ばされて長々と昨日の分と昨日、リリアが帰ってから思い出した分をトクトクと延々と説教される。
コムラとホックは明らかに“何で俺達まで…”と言いたげな表情…
室長の小言は続く、三人は直立不動…

説教が終わるとリリア達は“第12A会議室”と書かれている部屋に通された。
小さいけど立派な部屋。リリア達が席に着くと茶菓子が用意され、ミミさんがお茶を入れる。
“ようやくそれっぽくなったじゃない”リリアはちょっとニコニコしている。
さっきまでコムラ達の前でクレーム手紙を読み上げられては小言+宮仕えの愚痴を聞かされていた。リリアは頭ごなしに怒られていたのだ。
「ごめんね、さっきの人、世間話し長くって、たまに愚痴聞いてあげないとね、勇者も大変よね、えっへっへ」リリアは誤魔化し笑い。
「……… えぇ…」コムラとホックは苦笑い…

「王様とか何とか大臣は忙しくって無理みたいだけど友好親善大使は会えるみたいだよ」
リリアもルーダリアの友好親善が何者なのかどんな役割なのか全然知らないがとにかく会ってくれるようだ。何とか形は整えると言って良いのではないか。
「はい、やはりいきなり王様、大臣は無理なのは理解できます。親善大使でも何か良い話ができると思います」コムラ。
「こういう事は、次回お城に寄れる機会作りになればそれでよんじゃ」ホックも言う。

リリア達が雑談しながらお茶をしていると退席していたディルが“第12A会議室”に戻ってきた。
「ルーダリアの友好親善大使ですが、現在は特に指名されていないようでして… この場合は公認勇者がその代わりを務めるようです」ディルが丁寧に説明する。
「えぇ?つまり?」リリアがクッキーを食べながら聞き返した。

「つまり、リリア…殿が… 親善大使でして… そのような次第でこのまま二国間の親睦を深めていただきたいと思います」ディルが慇懃に言う。

「……… えへ… えぇ… じゃじゃーん!実はリリアちゃんは公認勇者兼任親善大使ぃ! サプラーイズ! ど?ちょっと驚いた」
リリア愛想笑いを満面に称え立ちあがって自己紹介。チラっとディルに向けた視線は鉄に穴を空ける勢い…

コムラもホックも啞然…
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