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奥方たちへの挨拶(ファティマ)
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次に訪れたのはファティマの部屋だった。昨日、カシムとのお茶会の続きにと誘われたが、緊張しすぎてろくに受け答えできなかった。それでもファティマは笑ってくれていたが、今日はしっかり挨拶しようとシャイムは気合いをいれた。
「ファティマさま、カシムです。シャイムさまをご案内してきました」
カシムが声をかけると、中から「どうぞ、お入りなさい」と返事がある。カシムに続いてシャイムが部屋に入ると、ファティマは侍女に髪を結ってもらっている最中だった。
「おはようございます。髪結いの最中でしたか」
「おはようございます。少し待っていてくださいね」
おっとりと笑うファティマは美女と言われても納得してしまうほど美しかった。昨日の衣装もそうだが胸元と腰まわりを隠す程度で肌があらわになっている。腰にはくびれを強調するように宝石を連ねたものが二重に巻かれていた。
「お待たせしました」
髪を結い終わって侍女が出ていく。ファティマはふたりの前に立つとシャイムの手をそっと握った。
「シャイムさま、昨日はありがとうございました」
「あ、いえ、昨日はろくにご挨拶もできずに申し訳ありませんでした。これからよろしくお願いいたします」
手を握られて驚いたシャイムがなんとか挨拶して頭を下げる。その様子にファティマはころころと笑った。
「可愛らしい方ですね。そのようにかしこまらなくていいんですよ?ここでは皆平等なのですから」
「ありがとうございます」
ファティマの言葉にシャイムは泣きそうな顔をして頭を下げた。
ここにきてから皆が優しくしてくれる。人狩りにあってから人間としての扱いを受けてこなかったシャイムにとって、こんな綺麗な人たちに優しくしてもらえるのは夢のようだった。
「もう他の方へのご挨拶はおすみ?」
「あとはシャロンさまだけです」
シャイムにかわってカシムが答えると、ファティマはクスクスと笑った。
「そうなの。カシムさま、昨夜はファティマさまとお楽しみだったのでしょう?彼、今日は起きられるかしら?」
「え?」
ファティマの言葉にシャイムが不思議そうに首をかしげる。カシムは困ったように笑うと肩をすくめた。
「相変わらずお耳が早いですね」
「シャロンさまのお部屋は隣ですもの。彼の声はよく響きますし」
そう言って悪戯っぽく笑ったファティマはシャイムの耳元に顔を寄せた。
「ここは陛下の花園ですけど、陛下は花同士が睦み合うのを禁じていません。一晩にふたりを愛されることもありますし、花同士が愛し合うのを眺めて楽しまれることもあります」
「え…」
ファティマの言葉にシャイムの顔が耳まで真っ赤になる。ファティマはその様子を見ると「可愛らしい」と言ってシャイムを抱き締めた。
「今度わたくしが可愛がってあげましょうね」
「お戯れもほどほどに。シャイムさまは初なのですから」
逆上せたように真っ赤になっているシャイムに苦笑しながらカシムが嗜める。ファティマはクスクス笑うとシャイムの頬にチュッとキスした。
「あとはシャロンさまのところだけでしょう?ご挨拶をすませて今日はゆっくりなさるといいですよ」
「あ、ありがとうございます」
真っ赤なままシャイムが頭を下げる。ファティマは楽しげに笑いながらふたりを見送った。
「ファティマさま、カシムです。シャイムさまをご案内してきました」
カシムが声をかけると、中から「どうぞ、お入りなさい」と返事がある。カシムに続いてシャイムが部屋に入ると、ファティマは侍女に髪を結ってもらっている最中だった。
「おはようございます。髪結いの最中でしたか」
「おはようございます。少し待っていてくださいね」
おっとりと笑うファティマは美女と言われても納得してしまうほど美しかった。昨日の衣装もそうだが胸元と腰まわりを隠す程度で肌があらわになっている。腰にはくびれを強調するように宝石を連ねたものが二重に巻かれていた。
「お待たせしました」
髪を結い終わって侍女が出ていく。ファティマはふたりの前に立つとシャイムの手をそっと握った。
「シャイムさま、昨日はありがとうございました」
「あ、いえ、昨日はろくにご挨拶もできずに申し訳ありませんでした。これからよろしくお願いいたします」
手を握られて驚いたシャイムがなんとか挨拶して頭を下げる。その様子にファティマはころころと笑った。
「可愛らしい方ですね。そのようにかしこまらなくていいんですよ?ここでは皆平等なのですから」
「ありがとうございます」
ファティマの言葉にシャイムは泣きそうな顔をして頭を下げた。
ここにきてから皆が優しくしてくれる。人狩りにあってから人間としての扱いを受けてこなかったシャイムにとって、こんな綺麗な人たちに優しくしてもらえるのは夢のようだった。
「もう他の方へのご挨拶はおすみ?」
「あとはシャロンさまだけです」
シャイムにかわってカシムが答えると、ファティマはクスクスと笑った。
「そうなの。カシムさま、昨夜はファティマさまとお楽しみだったのでしょう?彼、今日は起きられるかしら?」
「え?」
ファティマの言葉にシャイムが不思議そうに首をかしげる。カシムは困ったように笑うと肩をすくめた。
「相変わらずお耳が早いですね」
「シャロンさまのお部屋は隣ですもの。彼の声はよく響きますし」
そう言って悪戯っぽく笑ったファティマはシャイムの耳元に顔を寄せた。
「ここは陛下の花園ですけど、陛下は花同士が睦み合うのを禁じていません。一晩にふたりを愛されることもありますし、花同士が愛し合うのを眺めて楽しまれることもあります」
「え…」
ファティマの言葉にシャイムの顔が耳まで真っ赤になる。ファティマはその様子を見ると「可愛らしい」と言ってシャイムを抱き締めた。
「今度わたくしが可愛がってあげましょうね」
「お戯れもほどほどに。シャイムさまは初なのですから」
逆上せたように真っ赤になっているシャイムに苦笑しながらカシムが嗜める。ファティマはクスクス笑うとシャイムの頬にチュッとキスした。
「あとはシャロンさまのところだけでしょう?ご挨拶をすませて今日はゆっくりなさるといいですよ」
「あ、ありがとうございます」
真っ赤なままシャイムが頭を下げる。ファティマは楽しげに笑いながらふたりを見送った。
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