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第参話「隠レンボ」
隠レンボ・漆
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「……引き摺り込まれたか」
気がつくと鴉取は祠の中にいた。
小さく見えた祠の内側は無限とも思える深淵が広がっている。
格子戸からは夕焼けの光が差し込んでいるが、外にいるはずであろう三毛縞と子供たちの姿は確認できない。どうやらこの祠の内部もまた三毛縞たちがいる場所とは違う異界のようなものなのだろう。
隙間から差し込む光を頼りに視線を動かすと、祠の中で座り込んでいる和服姿の少女を見つけた。
「お嬢さん、大丈夫か」
鴉取は少女の傍に跪き声をかける。しかし返事はなかった。
少女の目は開いてはいるものの光が宿っていない。なにを写すわけでもなく虚空を見つめていた。
「……不味いな、鬼に食われかけている」
鴉取は忌々しそうに顔をしかめ舌打ちを一つ。
少女の体は影に飲み込まれかけていた。手足の先からゆっくりと黒い影が侵食している。今にも体全体が影に覆われようとしている。きっとこのまま影に飲み込まれしまったら、少女が助かる見込みはない。
「うめ。うめ。起きるんだ。皆がうめの帰りを待っているよ」
鴉取は少女の意識を戻そうと頬を軽く叩くがやはり反応はない。
どうしたものかと鴉取が考えあぐねていると、祠の中に差し込んでいた夕暮れの光がふつと消えた。
「……見つかったか」
そこにはもう一人の鬼がいた。茜色を背景に佇む黒い影。それは鴉取たちに手を伸ばす。しかし祠の扉に阻まれ鬼の手は中に入ってこない。
「祠の守りは強力だが……いつまでもつか」
鬼の手は格子戸に指をかけ開けようと思い切り揺さぶる。その度に祠はみしみしと鈍い音を立てて揺れた。
祠の守りが破られれば鬼は少女を喰うだろう。最初は力なく鴉取達から逃げていた影が、祠全体を覆い隠している。今や、この祠の中が鬼の体内のようだ。
四方八方から獣の呻き声のような、風の音のような、形容し難い不気味な音が聞こえてくる。
「俺まで喰う気か」
じわりと鴉取の足元が影に侵食され始めた。少女だけでなく、怪異は鴉取までの飲み込もうとしているようだ。
格子戸の扉は僅かに開いている。その隙間から大きな鬼の目玉がこちらをじっと覗き、白い牙と真っ赤な舌を覗かせ今にも二人を食らおうと舌舐めずりしていた。
「くくっ……少女はともかく、俺を喰らっても腹を壊すだけだぞ。まぁ……そんなことをいってもお前たちには無意味だろうがな」
こんな危機的状況にあっても鴉取は一切慌てなかった。
鬼は唾液を飛ばしながら、男のような女のような、気味の悪い笑い声をけらけらとあげる。耳鳴りのような酷い音に思わず眉をしかめた。そしてなんとも酷い腐臭。
「——残念だが、この子は連れてはいかせない。お前達が食べてはいいモノではないよ」
鴉取は少女を片腕に抱き立ち上がると、何の躊躇もなく扉を開け、鬼の口の中に己の左手を突っ込んだ。
そして鬼の口の中をかき回すように左腕を動かす。
一瞬の沈黙。鴉が羽ばたく音がして、漆黒の羽が数枚闇の中に溶け込んだ。その刹那、鬼が金切り声のような悲鳴をあげた。
「お前達は、私が喰らおう」
暗闇の中に紅い瞳がぼうっと浮かび上がる。そうして黒い鴉は怪しく笑い鬼を啄む。
「——みぃつけた」
咀嚼、嚥下。咀嚼、咀嚼。嚥下。
そうしてなんの音も聞こえなくなった暗闇に男の低い声が響いたのであった。
*
「——さぁ、目を覚ますんだ」
優しい声が聞こえてうめが目が開けると紅い瞳と目があった。そこには自分を抱く鴉のように黒い男が微笑んでいる。
寝起きのように頭がぼんやりとしている少女は宝石のような紅をじっと見つめた。
「もう大丈夫。怖い鬼は私が食べてしまったからね」
前髪の隙間から覗く紅が細められる。
安心させるような心地よい低音。背中を摩る優しい手。見ず知らずの男だというのに、とても安心できた。
「きれいなおめめ。夕焼けみたい」
その紅玉に目を奪われた。
少女の言葉に男は驚きに目を瞬かせ、微笑を浮かべる。
「ありがとう。お嬢さんも素敵な目をしているよ」
「……おにいさんは、だあれ?」
「俺はお嬢さんのお友達に頼まれてお嬢さんを救いにきたんだよ。さぁ、皆の元に戻ろうか。これ以上此処にいては危ないからね」
鴉取はうめを抱えて立ち上がる。
格子戸の向こうには綺麗な優しい夕焼け空が見えていた。鴉取が扉に手をかけると、軋んだ音を立てながらゆっくりと開く。
「——鴉取!」
「うめちゃん!」
二人が外に出ると、三毛縞と子供達が青ざめた顔で駆け寄ってきた。
「みんな見つけてくれないから、あたし祠の中で寝ちゃってたんだ」
「くくっ、随分と肝が座ったお嬢さんだ」
心配している仲間達をよそに、戯けて微笑む少女を見て鴉取は可笑しそうに微笑む。
無事でよかったと三毛縞は胸に手を当てほっと息をついた。
「さぁ、最後の一人が見つかった。隠れんぼを終わらせるにはどうしたらいいかな?」
鴉取が子供達を見下ろすと、彼らは互いに顔を見合わせ笑顔でうめを見つめる。そして子供たちは口をそろえ町内中に響きそうな大声で叫んだ——。
「うめちゃん、みぃつけた!」
全員の声が重なり響く。
その瞬間、先ほどまで静かだったはずの場所に、遠くから大人達がうめを探す声が聞こえてきた。空には鴉の群れが鳴きながら飛んでいる。
「戻ったのか」
「ああ。怪異は過ぎ去った。もう、大丈夫だよ」
こうして隠れんぼは終わりを告げ、皆は無事に元の世界へ戻ってきたのであった。
その後、子供達を親元へ送るため、鴉取と三毛縞も彼らに同行することにした。
「あの祠の扉を開けた瞬間、鴉取の姿が消えたから驚いたよ。とにかく無事でよかった」
「心配かけて悪かったな」
「鴉取なしで異界に取り残されて僕はどうやって子供を守ればいいのか考えあぐねたよ。もう本当に心臓が止まりそうになった……」
鴉取の腕に抱えられているうめの元気そうな姿を見て三毛縞は安堵したように胸を撫でおろした。
「本当に怪我とかないかな? 体が痛むとか……具合が悪いとか」
「ううん、大丈夫」
三毛縞の問いかけにうめは数回首を横に振る。
「……どうかした?」
無言のまま、少女は三毛縞の目をじっと見つめていた。
日本人にはいない青い瞳。怖がらせてしまったかと、三毛縞ははっとして視線をそらす。
「おにぃちゃんのおめめもきれいなお色。青いお空みたい」
聞こえてきた言葉に三毛縞は視線を戻し少女を見た。
少女は三毛縞の瞳を恐れることなく、蒼玉に映る自身の姿を不思議そうに見た。
「おにぃちゃんのおめめにあたしが映ると、お空に浮かんでるみたいにみえるの。とてもきれい」
「……ありがとう。そんなに見つめられると恥ずかしいけど、嬉しいよ」
今まで気味が悪いといわれ続けた容姿を褒められ三毛縞は照れ臭そうにはにかんだ。
「うめちゃん、みつかったよー!」
住宅地に戻ってくると、子供たちは近くの大人に報告に向かう。
すると方々から、うめがみつかったぞ、との声が響く。集落の伝達速度はとてつもなく早いものだった。
「……さて。坊や、これで依頼は完了かな?」
鴉取はうめを地面に下ろすと、最初に三毛縞にぶつかってきた少年を見つめた。
空は徐々に闇に染まっていく。もう半刻としないで日が沈むだろう。
「お兄ちゃん、助けてくれてありがとう!」
「礼には及ばないよ。さて、親御さんが心配するだろう。早くおかえり」
「ちょっと待って。お兄ちゃんたち、手を出してよ」
少年は懐を漁りながら鴉取たちを呼び止める。
「これあげる! お仕事してくれたらお礼をしなきゃいけないんだろう?」
言われるがままに鴉取と三毛縞は手を出す。手のひらの上にころんと転がったのは赤と青のビー玉だった。
「それ、きれいだろ! 俺の宝物、にいちゃんたちにあげるよ!」
「……ありがとう。十分すぎる礼だ」
二人は嬉しそうに微笑んで、少年の頭を優しく撫でた。
「にいちゃんたち、また一緒に遊ぼうな!」
「君達もどうか健やかに」
少年たちは鴉取たちを手を振って見送る。
三毛縞が気になって振り返っても、子供たちはまだその場にいて手を振り続けている。その光景が微笑ましくて、ついつい後ろ髪引かれてしまう。
しかしどこかでやめなければと思い、三毛縞は最後に大きく手を振ってそれから振り返ることはしなかった。
子供というのは一度遊んでしまえばもう友達になってしまうのだろう。
背後から聞こえてくる子供達の賑やかな歌と共に鴉取達は夕暮れの道を歩いていた。
気がつくと鴉取は祠の中にいた。
小さく見えた祠の内側は無限とも思える深淵が広がっている。
格子戸からは夕焼けの光が差し込んでいるが、外にいるはずであろう三毛縞と子供たちの姿は確認できない。どうやらこの祠の内部もまた三毛縞たちがいる場所とは違う異界のようなものなのだろう。
隙間から差し込む光を頼りに視線を動かすと、祠の中で座り込んでいる和服姿の少女を見つけた。
「お嬢さん、大丈夫か」
鴉取は少女の傍に跪き声をかける。しかし返事はなかった。
少女の目は開いてはいるものの光が宿っていない。なにを写すわけでもなく虚空を見つめていた。
「……不味いな、鬼に食われかけている」
鴉取は忌々しそうに顔をしかめ舌打ちを一つ。
少女の体は影に飲み込まれかけていた。手足の先からゆっくりと黒い影が侵食している。今にも体全体が影に覆われようとしている。きっとこのまま影に飲み込まれしまったら、少女が助かる見込みはない。
「うめ。うめ。起きるんだ。皆がうめの帰りを待っているよ」
鴉取は少女の意識を戻そうと頬を軽く叩くがやはり反応はない。
どうしたものかと鴉取が考えあぐねていると、祠の中に差し込んでいた夕暮れの光がふつと消えた。
「……見つかったか」
そこにはもう一人の鬼がいた。茜色を背景に佇む黒い影。それは鴉取たちに手を伸ばす。しかし祠の扉に阻まれ鬼の手は中に入ってこない。
「祠の守りは強力だが……いつまでもつか」
鬼の手は格子戸に指をかけ開けようと思い切り揺さぶる。その度に祠はみしみしと鈍い音を立てて揺れた。
祠の守りが破られれば鬼は少女を喰うだろう。最初は力なく鴉取達から逃げていた影が、祠全体を覆い隠している。今や、この祠の中が鬼の体内のようだ。
四方八方から獣の呻き声のような、風の音のような、形容し難い不気味な音が聞こえてくる。
「俺まで喰う気か」
じわりと鴉取の足元が影に侵食され始めた。少女だけでなく、怪異は鴉取までの飲み込もうとしているようだ。
格子戸の扉は僅かに開いている。その隙間から大きな鬼の目玉がこちらをじっと覗き、白い牙と真っ赤な舌を覗かせ今にも二人を食らおうと舌舐めずりしていた。
「くくっ……少女はともかく、俺を喰らっても腹を壊すだけだぞ。まぁ……そんなことをいってもお前たちには無意味だろうがな」
こんな危機的状況にあっても鴉取は一切慌てなかった。
鬼は唾液を飛ばしながら、男のような女のような、気味の悪い笑い声をけらけらとあげる。耳鳴りのような酷い音に思わず眉をしかめた。そしてなんとも酷い腐臭。
「——残念だが、この子は連れてはいかせない。お前達が食べてはいいモノではないよ」
鴉取は少女を片腕に抱き立ち上がると、何の躊躇もなく扉を開け、鬼の口の中に己の左手を突っ込んだ。
そして鬼の口の中をかき回すように左腕を動かす。
一瞬の沈黙。鴉が羽ばたく音がして、漆黒の羽が数枚闇の中に溶け込んだ。その刹那、鬼が金切り声のような悲鳴をあげた。
「お前達は、私が喰らおう」
暗闇の中に紅い瞳がぼうっと浮かび上がる。そうして黒い鴉は怪しく笑い鬼を啄む。
「——みぃつけた」
咀嚼、嚥下。咀嚼、咀嚼。嚥下。
そうしてなんの音も聞こえなくなった暗闇に男の低い声が響いたのであった。
*
「——さぁ、目を覚ますんだ」
優しい声が聞こえてうめが目が開けると紅い瞳と目があった。そこには自分を抱く鴉のように黒い男が微笑んでいる。
寝起きのように頭がぼんやりとしている少女は宝石のような紅をじっと見つめた。
「もう大丈夫。怖い鬼は私が食べてしまったからね」
前髪の隙間から覗く紅が細められる。
安心させるような心地よい低音。背中を摩る優しい手。見ず知らずの男だというのに、とても安心できた。
「きれいなおめめ。夕焼けみたい」
その紅玉に目を奪われた。
少女の言葉に男は驚きに目を瞬かせ、微笑を浮かべる。
「ありがとう。お嬢さんも素敵な目をしているよ」
「……おにいさんは、だあれ?」
「俺はお嬢さんのお友達に頼まれてお嬢さんを救いにきたんだよ。さぁ、皆の元に戻ろうか。これ以上此処にいては危ないからね」
鴉取はうめを抱えて立ち上がる。
格子戸の向こうには綺麗な優しい夕焼け空が見えていた。鴉取が扉に手をかけると、軋んだ音を立てながらゆっくりと開く。
「——鴉取!」
「うめちゃん!」
二人が外に出ると、三毛縞と子供達が青ざめた顔で駆け寄ってきた。
「みんな見つけてくれないから、あたし祠の中で寝ちゃってたんだ」
「くくっ、随分と肝が座ったお嬢さんだ」
心配している仲間達をよそに、戯けて微笑む少女を見て鴉取は可笑しそうに微笑む。
無事でよかったと三毛縞は胸に手を当てほっと息をついた。
「さぁ、最後の一人が見つかった。隠れんぼを終わらせるにはどうしたらいいかな?」
鴉取が子供達を見下ろすと、彼らは互いに顔を見合わせ笑顔でうめを見つめる。そして子供たちは口をそろえ町内中に響きそうな大声で叫んだ——。
「うめちゃん、みぃつけた!」
全員の声が重なり響く。
その瞬間、先ほどまで静かだったはずの場所に、遠くから大人達がうめを探す声が聞こえてきた。空には鴉の群れが鳴きながら飛んでいる。
「戻ったのか」
「ああ。怪異は過ぎ去った。もう、大丈夫だよ」
こうして隠れんぼは終わりを告げ、皆は無事に元の世界へ戻ってきたのであった。
その後、子供達を親元へ送るため、鴉取と三毛縞も彼らに同行することにした。
「あの祠の扉を開けた瞬間、鴉取の姿が消えたから驚いたよ。とにかく無事でよかった」
「心配かけて悪かったな」
「鴉取なしで異界に取り残されて僕はどうやって子供を守ればいいのか考えあぐねたよ。もう本当に心臓が止まりそうになった……」
鴉取の腕に抱えられているうめの元気そうな姿を見て三毛縞は安堵したように胸を撫でおろした。
「本当に怪我とかないかな? 体が痛むとか……具合が悪いとか」
「ううん、大丈夫」
三毛縞の問いかけにうめは数回首を横に振る。
「……どうかした?」
無言のまま、少女は三毛縞の目をじっと見つめていた。
日本人にはいない青い瞳。怖がらせてしまったかと、三毛縞ははっとして視線をそらす。
「おにぃちゃんのおめめもきれいなお色。青いお空みたい」
聞こえてきた言葉に三毛縞は視線を戻し少女を見た。
少女は三毛縞の瞳を恐れることなく、蒼玉に映る自身の姿を不思議そうに見た。
「おにぃちゃんのおめめにあたしが映ると、お空に浮かんでるみたいにみえるの。とてもきれい」
「……ありがとう。そんなに見つめられると恥ずかしいけど、嬉しいよ」
今まで気味が悪いといわれ続けた容姿を褒められ三毛縞は照れ臭そうにはにかんだ。
「うめちゃん、みつかったよー!」
住宅地に戻ってくると、子供たちは近くの大人に報告に向かう。
すると方々から、うめがみつかったぞ、との声が響く。集落の伝達速度はとてつもなく早いものだった。
「……さて。坊や、これで依頼は完了かな?」
鴉取はうめを地面に下ろすと、最初に三毛縞にぶつかってきた少年を見つめた。
空は徐々に闇に染まっていく。もう半刻としないで日が沈むだろう。
「お兄ちゃん、助けてくれてありがとう!」
「礼には及ばないよ。さて、親御さんが心配するだろう。早くおかえり」
「ちょっと待って。お兄ちゃんたち、手を出してよ」
少年は懐を漁りながら鴉取たちを呼び止める。
「これあげる! お仕事してくれたらお礼をしなきゃいけないんだろう?」
言われるがままに鴉取と三毛縞は手を出す。手のひらの上にころんと転がったのは赤と青のビー玉だった。
「それ、きれいだろ! 俺の宝物、にいちゃんたちにあげるよ!」
「……ありがとう。十分すぎる礼だ」
二人は嬉しそうに微笑んで、少年の頭を優しく撫でた。
「にいちゃんたち、また一緒に遊ぼうな!」
「君達もどうか健やかに」
少年たちは鴉取たちを手を振って見送る。
三毛縞が気になって振り返っても、子供たちはまだその場にいて手を振り続けている。その光景が微笑ましくて、ついつい後ろ髪引かれてしまう。
しかしどこかでやめなければと思い、三毛縞は最後に大きく手を振ってそれから振り返ることはしなかった。
子供というのは一度遊んでしまえばもう友達になってしまうのだろう。
背後から聞こえてくる子供達の賑やかな歌と共に鴉取達は夕暮れの道を歩いていた。
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