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第二十五話
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イエルハート領を出て、2日が過ぎた。明日の昼間ぐらいには到着する位置で野営をしている。皆が交代で見張りを変わりながら食事を終えて眠りに着いている。
結局のところ、皆が馬を乗れる者達だけにする事はできなかった。馬車も用意して総勢60名で移動することになった。
私は目の前の小さい焚火に寄せ集めた小枝を1本ずつ放り込んでいく。明日は決戦になるかもしれない。それを考えてしまうと眠れなかった。
「寝ないのですか?お嬢」
見張りを終えたクロウが戻ってきた。隣に腰を降ろして虚ろな目で焚火を見つめている。
もう一つ寝れない理由はあった。出発前にルイ様から伝えられた言葉が私の頭を何度も何度も繰り返されていた。
ーーー2日前。
「フィオラ殿、伝えたい話がある。時間を貰えますか?」
皆が荷物を馬に乗せている所にルイ様に声をかけられた。近くの兵士に馬の準備の続きをお願いして後を付いていく。護衛としてクロウも距離を取って後を追ってくる。
ルイ様に連れてこられたのは屋敷の裏のやや開けた森の中だった。クロウは距離を取って反対側を向いて腕を組んで背中を気にかけている。
「言われずとも聞こえない位置かつ、護衛として即対応できる位置で待機するのか。優秀な騎士だな」
クロウを見たルイ様がそう小さく呟いた。私はルイ様に向き合って本題に入った。
森の中は肌でわずかに感じられる程度の風に吹かれている。不思議と鳥や虫の声はしなかった。
ルイ様は鋭い眼差しを閉じてから息を吸い込んで、言葉を発した。
「王族には代々魔法と呼ばれる特殊な能力を持って生まれます。ヴァイオレットも俺もそうだ」
その話はヴィオから聞いた事がある。能力を持って生まれるが連続で使用したり、むやみに使ってはいけないと。
それだけでは無いはず。ルイ様がいうからには何かもっとあるはず。
目を開いて私に背中を向けると近くの木に手で触れると力を込めるように手に血管を浮き上がる。
そして、触れていた木は綺麗に切り裂かれた様になめらかな切り口で地面に倒れた。
「これが俺の能力……風を操って切り裂くことが出来るらしい……痛っ!」
ルイ様は触れていた右手を左手で抑えながら、顔から冷汗を滝のように流して痛みを必死にこらえている声と表情を浮かべていた。
肩を上下に動かして、両手は血塗れ。
私は眼を大きく開いてその様子をただ眺めるしかできなかった。
ルイ様は慣れた手つきでハンカチで右手を縛り上げて出血を止める。
「俺は能力を使うとこのように自分自身を外傷として切り付けてしまう。そして、使えば使うほど外傷も大きくなる」
王族の能力を幼い頃に羨んだ事もあったが、目の前に起きた事を見てその認識は一瞬で塵になった。
魔法と言いつつこの能力は呪いだ。
ルイ様の様子を見る限り、能力を使えば何らかの形で体に現れる。
という事はマクバーン様の視力を失った事は能力に関係しているのだろうか。
それに、ヴィオの場合はどうなるのだろうか。
「ヴィオ……ヴァイオレット様はどのようになるのでしょうか?」
不思議だ。私はヴィオの事を心配する言葉を口にしていた。
「わからない。ただ、血族者の記録を見る限り、体に確実に現れるわけではない。ヴァイオレットもそうなのかもしれない。今回の反乱を決心した根本的な原因はここにあるのかもしれない」
その言葉を残して、屋敷へと戻ることにした。
今回の反乱を決心した根本的な原因はヴィオの能力にあるのかもしれないという言葉が頭の中をぐるぐると回る。
焚火の中へと放り込んでいた小枝は全て無くなっていた。そして、クロウの袖を引っ張った
「今日は一緒に眠って」
自分の寝床へと戻ろうとしていた彼を私の寝床である麻布を数枚敷いた上に茶色の布を広げて、かろうじて地面の硬さを気にしなくていいほどの柔らかさだった。
横に刀を立て掛けて先に横になるクロウ。私はクロウの右腕に頭を乗せて、背中を体に密着させて横向きに寝る。
まだ、燃えている焚火のパチパチという音だけが聞こえる。
背中にはクロウの体温を感じ、呼吸で胸が小さく動いているのもわかる。
「お嬢がこんな事して欲しいという事は、何か怖いんですか?」
クロウには私の心の中はお見通しらしい。左手を掴んで両手の指で絡めるように握る。
星の瞬きをかき消す目の前の焚火をじっと見つめた。
「クロウは大事な人が自分の手で殺す事になるかもしれないってなったら、どうする?」
しばらく黙ったまま、私の返答に対して考えているようだった。
焚火から数回だけ木が弾ける音がする。私とクロウの呼吸も聞こえた。
「俺はお嬢と出会う前から色々と命を奪ってきました。全部、命のやり取りの上の事です」
武器と共に成長してきたクロウらしい答えだ。クロウの師匠は戦場で生き残るすべを、ほとんど叩きこんだという事は聞いている。
死が当たり前だった環境だ。それ以外の常識が欠如してしまうのもしょうがないだろう。
そして、戦場の中で師匠と生き別れてしまった事も。
クロウは私が想像できない世界で生きてきた。何か話を聞けるかと思ったがダメそうだ。
「私はヴィオを殺さなければならない。そして、明日には皆が殺されているかもしれないって考えたらすごく怖い」
心の中の物を吐き出すように答えた。
両手で掴んでいたクロウの左手に力を込める。それに応える様にクロウも握り返してくれた。
私の手に比べて皮が厚くて太い指。タコと傷だらけの手を感じる。
「俺はどんな手段を取ったとしても着いて行きますよ。間違った選択をした時は俺が引き戻すだけですね」
いつもの様にやる気のない声で答えてくれた。たまに喧嘩をした事も思い出す。
クロウの左手を離すと体の向きを変えて、向き合うように姿勢を変えた。
分厚い胸板に額をこすりつけるように密着する。
「……バカ。けど、ありがとう」
クロウは何も言わずに上から夜風に冷えないように毛布をかける。
私は頭まで全部覆われると目を閉じた。
いつの間にか眠っていたクロウと一緒に睡眠に入る。
目を開いた時には、毛布の中にいたのは私だけだった。
皆が出発の準備を始めている。武器や鎧の手入れや馬の世話を行っている人など様々だ。
まだ、日が昇ったばかりで朝露で近くの茂みは濡れている。
「おはようございます。フィオラお嬢様」
私が体を起こして、いつもの鎖帷子を仕込んだコートを羽織ると皆が声を掛けてくれた。
皆に簡単に挨拶を返してから、私も準備を進める。
その内にクロウが帰ってきた。視線を合わせるとクロウの刀と一緒に持っていた私の青のバスタードを渡してくれた。
少しだけ鞘から抜くと刃と刀身は綺麗に磨かれている。朝日を少し反射して、薄っすらと私の顔が写っていた。
「綺麗にしておきました。俺に出来る範囲でですが」
鞘に納めると腰に携えた。いつもよりしっかりと固定する。
「ありがとう」
柄の位置を調節する様に右手で簡単に握りしめる。
そして、王都に向けて出発した。ヴィオを止める事が出来る様に心から誓って。
城下町に入ると秋の時期という事もあり、市場には様々な国から来たであろう商人達と住民達で賑わいを見せている。王城内でヴィオが反乱を起こしてるという事を知っているという様子は全く見えない。
恐らく、王都から情報が漏れないように管理しているのだろう。そして、信頼を置ける貴族達に書状を送り、地位を盤石にするという作戦だったに違いない。
王都内へと入るための門の前で止まる、重装備の兵が2人と弓兵が2名が門番として、出入りを監視しているようだった。赤い薔薇が巻き付いた剣の紋章が見えた、彼らは第五師団の兵に違いない。
「書状に応じに来ました。ヴァイオレット様への謁見をお願いします」
重装備の兵にヴィオから届けられた書状を渡せば、道を塞いでいたバリケードを横へと移動させた。
そして、真っ直ぐ王城へと向かうようにと言い渡されると、馬と馬車を進める。皆が門をくぐり抜けると再びバリケードで道が閉ざされた。
門の中は相変わらず綺麗に整備された石造りの道路に、朱色のレンガで建てられた家が並んでいる。ただ、いつもと違うのは大通りなのに人が少ない。家の窓から覗き込む人が見えたが視線を向けた瞬間に奥に隠れてしまう。
やや上り坂になっている大通りの一番奥には白い城がそびえ立っている。まるで城の中で反乱が起きていないかのように堂々と街を見下ろしているようだ。
「お嬢、この状況は流石にマズいですね」
隣に馬を寄せて来たクロウに声を掛けられると、裏路地に繋がる脇道へと視線を送る。
ローブを使って体を隠しているようだったが腰の剣と浮かび上がる鎧の形からして正規軍に配備されている鎧の形をしている。
間違いなくヴィオの兵士達だろう。街中を監視しているようだった。
「決戦前の情報統制でしょうね。ヴィオもルイ様と戦うつもりなんだろうね」
兵士達は一瞬だけ私達を見ると、脇道の奥へと消えて行った。きっと、抜け出そうとする人達を監視しているのだろう。
どちらにしろ、既に第五師団との対決は避けられない。勝負を仕掛ける瞬間を見極めなければ負ける。王城の城門前に到着すると、街中へ入った時と同様に書状を渡す。しばらくして、3回鐘の音が響くと吊り橋が下がり城門が開いた。
吊り橋の先には私達を監視する様に、城内を巡回してた兵士達が5名ほど見つめているようだった。
皆が吊り橋を渡り終えると城門が閉められて、吊り橋が鎖で巻き上げられる音が響く。
丁度、ヴィオも上の階にあるテラスから私たちが入ってきた様子を見ていたようだった。
クロウと分隊長達に視線を向ける。後ろの分隊長達に確認できるように剣の鞘を3回叩くと皆が見られないように剣の柄に手を乗せた。
城内から警備部隊と思える兵士達がさらに増える。まるで捕虜になった気分だ。
私は大きく息を吸い込むとヴィオに向かって、言葉をぶつける。
「第2王子ルイ様の命で、王城解放を命じられた!直ちに降伏すれば寛大な処置を頂ける!」
そうすると皆が一斉に剣を抜いた。
静かだった城内が一気に殺気で雰囲気が変わった。今にも切りかかりそうな表情を皆が浮かべている。
「その言葉を受けるわけにはいけません。私は、王座でお待ちしております」
ヴィオはテラスから姿を消した。
結局のところ、皆が馬を乗れる者達だけにする事はできなかった。馬車も用意して総勢60名で移動することになった。
私は目の前の小さい焚火に寄せ集めた小枝を1本ずつ放り込んでいく。明日は決戦になるかもしれない。それを考えてしまうと眠れなかった。
「寝ないのですか?お嬢」
見張りを終えたクロウが戻ってきた。隣に腰を降ろして虚ろな目で焚火を見つめている。
もう一つ寝れない理由はあった。出発前にルイ様から伝えられた言葉が私の頭を何度も何度も繰り返されていた。
ーーー2日前。
「フィオラ殿、伝えたい話がある。時間を貰えますか?」
皆が荷物を馬に乗せている所にルイ様に声をかけられた。近くの兵士に馬の準備の続きをお願いして後を付いていく。護衛としてクロウも距離を取って後を追ってくる。
ルイ様に連れてこられたのは屋敷の裏のやや開けた森の中だった。クロウは距離を取って反対側を向いて腕を組んで背中を気にかけている。
「言われずとも聞こえない位置かつ、護衛として即対応できる位置で待機するのか。優秀な騎士だな」
クロウを見たルイ様がそう小さく呟いた。私はルイ様に向き合って本題に入った。
森の中は肌でわずかに感じられる程度の風に吹かれている。不思議と鳥や虫の声はしなかった。
ルイ様は鋭い眼差しを閉じてから息を吸い込んで、言葉を発した。
「王族には代々魔法と呼ばれる特殊な能力を持って生まれます。ヴァイオレットも俺もそうだ」
その話はヴィオから聞いた事がある。能力を持って生まれるが連続で使用したり、むやみに使ってはいけないと。
それだけでは無いはず。ルイ様がいうからには何かもっとあるはず。
目を開いて私に背中を向けると近くの木に手で触れると力を込めるように手に血管を浮き上がる。
そして、触れていた木は綺麗に切り裂かれた様になめらかな切り口で地面に倒れた。
「これが俺の能力……風を操って切り裂くことが出来るらしい……痛っ!」
ルイ様は触れていた右手を左手で抑えながら、顔から冷汗を滝のように流して痛みを必死にこらえている声と表情を浮かべていた。
肩を上下に動かして、両手は血塗れ。
私は眼を大きく開いてその様子をただ眺めるしかできなかった。
ルイ様は慣れた手つきでハンカチで右手を縛り上げて出血を止める。
「俺は能力を使うとこのように自分自身を外傷として切り付けてしまう。そして、使えば使うほど外傷も大きくなる」
王族の能力を幼い頃に羨んだ事もあったが、目の前に起きた事を見てその認識は一瞬で塵になった。
魔法と言いつつこの能力は呪いだ。
ルイ様の様子を見る限り、能力を使えば何らかの形で体に現れる。
という事はマクバーン様の視力を失った事は能力に関係しているのだろうか。
それに、ヴィオの場合はどうなるのだろうか。
「ヴィオ……ヴァイオレット様はどのようになるのでしょうか?」
不思議だ。私はヴィオの事を心配する言葉を口にしていた。
「わからない。ただ、血族者の記録を見る限り、体に確実に現れるわけではない。ヴァイオレットもそうなのかもしれない。今回の反乱を決心した根本的な原因はここにあるのかもしれない」
その言葉を残して、屋敷へと戻ることにした。
今回の反乱を決心した根本的な原因はヴィオの能力にあるのかもしれないという言葉が頭の中をぐるぐると回る。
焚火の中へと放り込んでいた小枝は全て無くなっていた。そして、クロウの袖を引っ張った
「今日は一緒に眠って」
自分の寝床へと戻ろうとしていた彼を私の寝床である麻布を数枚敷いた上に茶色の布を広げて、かろうじて地面の硬さを気にしなくていいほどの柔らかさだった。
横に刀を立て掛けて先に横になるクロウ。私はクロウの右腕に頭を乗せて、背中を体に密着させて横向きに寝る。
まだ、燃えている焚火のパチパチという音だけが聞こえる。
背中にはクロウの体温を感じ、呼吸で胸が小さく動いているのもわかる。
「お嬢がこんな事して欲しいという事は、何か怖いんですか?」
クロウには私の心の中はお見通しらしい。左手を掴んで両手の指で絡めるように握る。
星の瞬きをかき消す目の前の焚火をじっと見つめた。
「クロウは大事な人が自分の手で殺す事になるかもしれないってなったら、どうする?」
しばらく黙ったまま、私の返答に対して考えているようだった。
焚火から数回だけ木が弾ける音がする。私とクロウの呼吸も聞こえた。
「俺はお嬢と出会う前から色々と命を奪ってきました。全部、命のやり取りの上の事です」
武器と共に成長してきたクロウらしい答えだ。クロウの師匠は戦場で生き残るすべを、ほとんど叩きこんだという事は聞いている。
死が当たり前だった環境だ。それ以外の常識が欠如してしまうのもしょうがないだろう。
そして、戦場の中で師匠と生き別れてしまった事も。
クロウは私が想像できない世界で生きてきた。何か話を聞けるかと思ったがダメそうだ。
「私はヴィオを殺さなければならない。そして、明日には皆が殺されているかもしれないって考えたらすごく怖い」
心の中の物を吐き出すように答えた。
両手で掴んでいたクロウの左手に力を込める。それに応える様にクロウも握り返してくれた。
私の手に比べて皮が厚くて太い指。タコと傷だらけの手を感じる。
「俺はどんな手段を取ったとしても着いて行きますよ。間違った選択をした時は俺が引き戻すだけですね」
いつもの様にやる気のない声で答えてくれた。たまに喧嘩をした事も思い出す。
クロウの左手を離すと体の向きを変えて、向き合うように姿勢を変えた。
分厚い胸板に額をこすりつけるように密着する。
「……バカ。けど、ありがとう」
クロウは何も言わずに上から夜風に冷えないように毛布をかける。
私は頭まで全部覆われると目を閉じた。
いつの間にか眠っていたクロウと一緒に睡眠に入る。
目を開いた時には、毛布の中にいたのは私だけだった。
皆が出発の準備を始めている。武器や鎧の手入れや馬の世話を行っている人など様々だ。
まだ、日が昇ったばかりで朝露で近くの茂みは濡れている。
「おはようございます。フィオラお嬢様」
私が体を起こして、いつもの鎖帷子を仕込んだコートを羽織ると皆が声を掛けてくれた。
皆に簡単に挨拶を返してから、私も準備を進める。
その内にクロウが帰ってきた。視線を合わせるとクロウの刀と一緒に持っていた私の青のバスタードを渡してくれた。
少しだけ鞘から抜くと刃と刀身は綺麗に磨かれている。朝日を少し反射して、薄っすらと私の顔が写っていた。
「綺麗にしておきました。俺に出来る範囲でですが」
鞘に納めると腰に携えた。いつもよりしっかりと固定する。
「ありがとう」
柄の位置を調節する様に右手で簡単に握りしめる。
そして、王都に向けて出発した。ヴィオを止める事が出来る様に心から誓って。
城下町に入ると秋の時期という事もあり、市場には様々な国から来たであろう商人達と住民達で賑わいを見せている。王城内でヴィオが反乱を起こしてるという事を知っているという様子は全く見えない。
恐らく、王都から情報が漏れないように管理しているのだろう。そして、信頼を置ける貴族達に書状を送り、地位を盤石にするという作戦だったに違いない。
王都内へと入るための門の前で止まる、重装備の兵が2人と弓兵が2名が門番として、出入りを監視しているようだった。赤い薔薇が巻き付いた剣の紋章が見えた、彼らは第五師団の兵に違いない。
「書状に応じに来ました。ヴァイオレット様への謁見をお願いします」
重装備の兵にヴィオから届けられた書状を渡せば、道を塞いでいたバリケードを横へと移動させた。
そして、真っ直ぐ王城へと向かうようにと言い渡されると、馬と馬車を進める。皆が門をくぐり抜けると再びバリケードで道が閉ざされた。
門の中は相変わらず綺麗に整備された石造りの道路に、朱色のレンガで建てられた家が並んでいる。ただ、いつもと違うのは大通りなのに人が少ない。家の窓から覗き込む人が見えたが視線を向けた瞬間に奥に隠れてしまう。
やや上り坂になっている大通りの一番奥には白い城がそびえ立っている。まるで城の中で反乱が起きていないかのように堂々と街を見下ろしているようだ。
「お嬢、この状況は流石にマズいですね」
隣に馬を寄せて来たクロウに声を掛けられると、裏路地に繋がる脇道へと視線を送る。
ローブを使って体を隠しているようだったが腰の剣と浮かび上がる鎧の形からして正規軍に配備されている鎧の形をしている。
間違いなくヴィオの兵士達だろう。街中を監視しているようだった。
「決戦前の情報統制でしょうね。ヴィオもルイ様と戦うつもりなんだろうね」
兵士達は一瞬だけ私達を見ると、脇道の奥へと消えて行った。きっと、抜け出そうとする人達を監視しているのだろう。
どちらにしろ、既に第五師団との対決は避けられない。勝負を仕掛ける瞬間を見極めなければ負ける。王城の城門前に到着すると、街中へ入った時と同様に書状を渡す。しばらくして、3回鐘の音が響くと吊り橋が下がり城門が開いた。
吊り橋の先には私達を監視する様に、城内を巡回してた兵士達が5名ほど見つめているようだった。
皆が吊り橋を渡り終えると城門が閉められて、吊り橋が鎖で巻き上げられる音が響く。
丁度、ヴィオも上の階にあるテラスから私たちが入ってきた様子を見ていたようだった。
クロウと分隊長達に視線を向ける。後ろの分隊長達に確認できるように剣の鞘を3回叩くと皆が見られないように剣の柄に手を乗せた。
城内から警備部隊と思える兵士達がさらに増える。まるで捕虜になった気分だ。
私は大きく息を吸い込むとヴィオに向かって、言葉をぶつける。
「第2王子ルイ様の命で、王城解放を命じられた!直ちに降伏すれば寛大な処置を頂ける!」
そうすると皆が一斉に剣を抜いた。
静かだった城内が一気に殺気で雰囲気が変わった。今にも切りかかりそうな表情を皆が浮かべている。
「その言葉を受けるわけにはいけません。私は、王座でお待ちしております」
ヴィオはテラスから姿を消した。
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