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②思い出したのです
しおりを挟むわたくしはレイラ・グレイシス、十六歳です。侯爵家の娘として生まれました。
何不自由なく育ち、その家柄から八歳の時に第一王子のヘンリー様の婚約者となりました。
それから四年後、十二歳になったある日、庭で散歩をしている時に突然出てきたヘビに驚いて、後ずさった拍子に後ろに転んで頭を強く打ちました。
私はしばらく気を失っていたようで、目が覚めた時には全て思い出していました。
わたくしの前世が地球という、こことは別の世界の女の子だった事、病弱で、ずっと家でゲームをしていた事、そして、大好きだった乙女ゲームの世界が今いるこの世界に似ていると気がついたの。
国の名前、王子様の名前、わたくし自身の名前にも覚えがあったわ。私はゲームの中ではヘンリー王子の婚約者を笠に着たとてもわがままな悪役令嬢だったのよ!
突然入ってきたたくさんの情報に頭が混乱したわ。
ゲームで憧れだったヘンリー王子様の婚約者なのよ!ゲームの中では悪役令嬢だけれど、大人しくしていれば憧れの王子様と結婚できるのよ!
しばらくは嬉しくて嬉しくて仕方なかったわ。
でも、ある時気がついたの。
ここが本当にゲームの中と同じ世界ならわたくしが大人しくしていれば他の方はどうなるのかしら、悪役令嬢はどのルートでも王子様とは結ばれない運命だけれど、私の行動が違えばほかの方の運命が変わってしまうのでは?何かとんでもない結末になってしまうのではないかしら。
そのことに気がついた時、わたくしはすごく悩んだわ。
いっぱい悩んだ結果、わたくしは決心したの。
わたくしはゲーム通りの令嬢を演じようと。
わたくしの行動で他の人が傷付くのは耐えられない。
それなら、私は悪役令嬢としてヘンリー王子様に婚約破棄される。
そう覚悟したの。
わたくしの執事、ミカエルとの出会いはわたくしが記憶を思い出す三年前の九歳の時、郊外に住むおじい様に会いに行った帰り、大きな川の近くを通りがかった時、倒れている少年を発見したの。
周りには何も無く、衣服もボロボロであちこちから血が出ていたわ。
わたくしはとても怖かったけれど、助けたいという思いの方が強くて、彼を馬車に乗せて連れて帰ってきてしまったの。
そして、なかなか目を覚まさない彼をわたくしは看病し続けたの。ずっと気を失っていた少年が目覚めた時には本当に嬉しかったわ。
髪の色はグレーで、整った顔立ちだとは思っていたけれど、グレーの髪の間から覗いたのは綺麗なサファイアブルーの宝石のような瞳で、彼は息を飲むくらい美しかったの。
その後、彼が記憶喪失だと知って、わたくしはミカエルと名前をつけたわ。
天使のように美しかったから。
でも、ミカエルはその名前を嫌がったので、わたくしはミカと呼ぶことにしたの。
ミカにうちの子にならないかと聞いたらそんなことは出来ない、置いて貰えるなら働くと言うので、わたくし付の執事になってもらったの。
ミカはゲームの中には居なかった人物だけれど、レイラの家の事情なんてゲームには出てこなかったから実は設定上は居たのかもしれない。
分からないけれど、それもわたくしが前世を思い出す前のことなので、しょうが無いわよね?
そして、前世を思い出した時、悪役令嬢を演じると決めた時、ミカにはわたくしが前世の記憶を持っていることを話して協力してもらう事にした。
心細くて・・・これくらいはいいわよね?
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