悪役令嬢は訳あり執事に溺愛される

さらさ

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㊵ミカの真実

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「ミカ、本当にミカなの?」

ヘンリー王子達を見送ったあと、わたくしはミカに問いかける。

「ええ、そうですよ。」

「でも、髪の色は?どうしたの?さっき、ジェフリー様がミカの事を皇帝って言ったわ。どういう事?」

わたくしは早く疑問から抜け出したくて、ミカを見る。

「髪は、カツラをずっと被っていました。本当は黒髪なんです。俺の本当の名前はクロード・セフィアス・ルシリア、ルシリア帝国の皇子でした。」

ミカの答えを聞いた瞬間、わたくしの頭は停止していた。
クロード・セフィアス・ルシリア皇子?・・・この名前は・・・そうだ、この姿、スチルで一度だけ見て一目惚れした。五人の攻略対象とは別の、特別攻略キャラ。同じルートを辿っても出てこない難易度MAXの隠れキャラ!わたくしも一度しか見た事なくて、もう一度会いたくて何度同じルートを辿っても、違うルートを辿っても出会えなかった。
まさか、そのレアキャラがミカなの?
全然気が付かなかったわ。

「レイラ嬢、どうされました?」

わたくしが固まっていると、ミカが心配そうに覗き込んでくる。

「な、なんでもないわ。」

ミカ、お嬢様って呼ばなくなったのね・・・

「ミカは皇子様なの?さっき皇帝って呼ばれてたわ。」

「ここを出ていくまでは皇子でした。」

「出ていくまでは?」

わたくしがオウム返しに聞くと、ミカがくすりと笑う。

「俺は戻ったら全てをお話すると約束したので、全てをお話します。長くなりますので、お部屋に戻りましょうか?」

ミカに促されて、立ち話しだったことに気がついて、部屋に戻ることになった。



目の前に座るミカは、とても立派な衣装を着ていて、グレーだと思っていた髪は漆黒の髪だった。
グレーの髪の間から覗くサファイアブルーの瞳も好きだったけれど、艶のある真っ黒な髪の間から覗くサファイアブルーの瞳は、瞳の色を更に妖艶に、美しく見せていて、息を飲むような美しさだわ。
その瞳に見つめられてわたくしは目を合わせることが出来なくて、目線を逸らす。
目を見ないように少し下を見た事で、ミカの形のいい唇が目に入って、わたくしは思わずカッと赤くなるのを隠すため、下を向いた。
ミカが居なくなる時に触れた唇の感触が甦る。

「レイラ嬢、お加減でも悪いのですか?」

わたくしの怪しい行動に!ミカが心配して問いかけてくる。

「大丈夫よ、それで?ミカは何者なの?」

わたくしは慌ててミカに話を促して誤魔化す。

「さっきも言いましたが、俺はルシリア帝国の第六皇子でした。12歳の時に次期皇帝に選ばれて以降、兄達の刺客に狙われる日々でした。そして、レイラ嬢に拾って頂いたあの日も、刺客に狙われた結果なのです。刺客の始末をした後、足を踏み外して谷を転げ落ちてしまって、川を流されました。あの時見つけて頂かなければ、俺は死んでいたでしょう。本当に感謝しています。」

改めてミカがわたくしに頭を下げる。

「その後、俺は事故の後遺症で一時的に記憶を無くしていました。ですが、その後半年ほどで思い出したのです。俺がルシリア帝国の第六皇子だと知れれば、レイラ嬢達を危険な目に合わせることになる。しかし、俺が生きていると知られれば、また命を狙われる。
なので、グレイシス侯爵に協力してもらうことにしたのです。」

「じゃあ、お父様はミカが皇子様だと知っていたの?」

「ええ、俺が思い出すより先に勘づいていたようです。拾って頂いたのが、レイラ嬢で、グレイシス侯爵で本当に良かった。私利私欲の為に俺を売る奴も居るだろうに・・・」

ミカは小さい頃から常に命を狙われていたのね、自分の国にも帰れないほどに・・・

「ミカ・・・いえ、クロード様、お辛かったでしょう。知らなかったとはいえ、クロード様を使用人として使ってしまった事、本当に申し訳ございません。」

わたくしはクロード様がどれほど、辛い思いをされていたのか考えると、胸が苦しくなった。

「いいえ、レイラ嬢と一緒にここに居る間はとてもたのしかったですよ。」

クロード様が微笑む。
ああ、ミカの笑顔だわ。
わたくしはいつものミカの笑顔にやっとほっと一息つくことが出来た。

「ルシリア帝国はクーデターが起きてるって聞いたわ。大丈夫だったの?」

「兄達が結託して、父皇帝を捕らえて幽閉してしまったと連絡が入り、俺は直ぐに父を助けるべく帝都に向かいました。俺は父皇帝より、俺の20歳の誕生日、即ち成人を持って皇帝の座を譲ると言う正式書面も受け取っていたので、それと、皇帝の証となる指環を手に、帝都に入ったんです。それからは反乱分子を取り押さえ、兄達を全て捉えることが出来ました。これには兵を貸して下さり、指揮して頂いた国王陛下と、グレイシス侯爵のおかげでもあります。」

「まぁ、お父様が?」

知らなかったわ。一緒に居なくなったのはその為だったのね。

「マーカス伯にも強い戦力として参加して、指揮にも加わって頂きました。」

「マーカス様まで?マーカス様もミカの事ご存知だったの?」

「いいえ、グレイシス侯爵意外誰も知らなかったことなので、一緒に国境を越え、俺の兵と合流した時に、皆がクロード皇子殿下と呼ぶのを聞いて驚いていましたよ。」

その時の事を思い出しているのか、くくっと笑うクロード様。
そして、わたくしを見る。

「父を助け出し、皇位継承の義を終えて直ぐに、レイラ嬢に逢いに来ました。俺はレイラ嬢が傍に居ないと落ち着かない性格のようです。」

そう言って、クロード様が肩をすくめる。

「じゃあ、ミカ・・・クロード様はルシリア帝国の皇帝様なのね?」

「そうです。」

笑った顔はミカなのに、今わたくしの目の前にいるクロード皇帝陛下は全然別人のようで、遠い存在なのだと実感した。









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