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③アリア・ルク・オブサーク
しおりを挟む気がつくと私はベッドに寝かされ、鎖で両手を繋がれた状態だった。
「ここはどこかしら」
おそるおそる辺りを見回す。
広い室内は青を基調とした調度品が揃えられ、家具は白で統一されている。扉が二つと大きな窓が二つ、深い青のカーテンが掛けられていて白のレースカーテンが映えるとても清潔感のある室内だ。
「私は魔王に攫われたの?」
少しずつ記憶が蘇る。
そして、魔王の顔を思い出しかけた時、扉の1つが開いた。
「目が覚めたか」
扉から入ってきた人物は黒髪の前髪から覗くルビー色の瞳で私を見て言った。そしてベッドに近づき腰を下ろすと、私の頬に撫でるようにそっと触れ、甘く囁くように言った。
「さあ、俺をどうやって楽しませてくれる?」
私は思わずキッと睨み、
「どなたかしら?」
そう言うと、目の前の人物はわずかに眉を動かすと目を細め、じっと私を見つめてきた。
「アリア・ルク・オブサーク」
また囁くように呟く。
「なぜ私の名前をご存知なの?あなたは誰?」
私が問いかけると、男は一瞬驚いた顔をしてベッドから立ち上がり、少し考えてから扉に向かって歩き出す。
「私は魔王、レオン・アルフリート」
そう言うと振り返りもせず魔王は去ってしまった。
「・・・ちょっと!このまま置いていかないでくださる?」
閉まった扉に向かって叫ぶとキンという音がして鎖がガチャッと音を立てて落ちた。それと同時に小さくカチッという音がした。
「あら、聞こえてましたの?」
淑女にあるまじき大声を発したのは聞こえていないと思ったからで、聞かれてしまったことに対して思わず取り繕う。
今度は聞こえているかわからないけれど。
自由になったのでとりあえず部屋を散策してみる。さっき魔王が出入りしていた扉は鍵がかかっていて開かない。さっき鎖が外れた時にカチッと音がしたのは鍵をかけた音だろう。
窓から外を見たけれど、外は夜になっていて辺りが見渡せない。けれど、この部屋が高い位置にあるのは分かった。そして丁寧に窓も開かなくなっている。
もう一方の扉を開けてみるとそっちはお風呂とトイレになっていた。
つまり、ここからは出るなってことね。
どうしよう、あの人が魔王って事はここはおそらく魔人族の魔王城よね…今のところ私に危害を加えようという感じはないけれど、なぜ私は攫われてしまったのかしら…魔王は私を知っている風だった。でも私は魔王どころか、魔人に会ったことすらない。
そもそも魔人とは人型の魔族のことで魔族の中でも高位の存在で、深窓の令嬢である私は魔物すら見た事がないのに…
それにあんなイケメン一度見たら忘れないと思うんだけど…
まるで乙ゲーに出てくる魔王様みたいでめちゃくちゃ私の好みだったわ!
マンガのキャラでもああいう黒髪美男子は超好みで、よくキュンキュンしながら読んでたなー…懐かしい。
え?
深窓の令嬢じゃないのかって?
実は私転生者なんです。公爵家に生まれてしばらくして前世の記憶が残ったままだと気が付きました。
前世は地球という星の日本人、星野彩華と言う名前の女の子でした。私が死んだのは24歳の時、異常者に刃物でいっぱい刺されて死にました。思い出したくない記憶です。以来刃物を見るだけでも怖いくらい大の苦手です。
ある意味令嬢に生まれて良かった。
台所仕事しなくていいんですもん!
そして転生した先がファンタジーあふれる中世ヨーロッパ風の魔法あり、魔力あり、魔物や妖精ありの世界だと知った時には興奮しました!
まぁ、赤ちゃんの時から大人の記憶があるわけだから不気味な子供だったと思うけれど、そこはひた隠しに普通の子として今まで生活してきました。
特にイベントらしいイベントはなく、普通に今日まで生きてきて、初の大イベントが王子様との結婚式だったんだけど、さらにとんでもないイベントが発生したみたい。
今からどうなるのかしら…
とりあえず、ウエディングドレスのままなので着替えたい・・・
そう思ってクローゼットを開いてみると沢山のドレスが入っていた。
・・・これ、着てもいいのかしら?
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