魔王に誘拐された花嫁

さらさ

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④特別な存在

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「おまえが魔王様が連れてきた人間か?」

翌日の朝、いつもの我が家と同じように用意された朝食を美味しく頂いていた時、勢いよく扉が開いて深い緑の腰まであるストレートの髪をなびかせた長身スレンダーな美女が、私を値踏みするような顔で入って来た。

「おはようございます。どなたかしら?」

私は手にしていたフォークを置くと、にっこりと優雅な笑顔を作って問い返した。

「私は魔王様が配下リリアム、お前は何者だ」

「私はカルナリカ王国のアリア・ルク・オブサークと申します」

立ち上がってにっこりと微笑むと淑女の礼を返した。
リリアム様、スレンダー美人でかっこいいなー。なんて思っていると、ツカツカと近づいてきてグイッと顎を持ち上げられた。

「ふん、顔はまあまあ、さすが魔王様だが、なぜ人間などを連れてきたのか」

マジマジと私の顔を見た後気に入らないと言うふうに荒々しく手を離した。

「お前はなぜここに来た?」

「私にも解りません」

「ふざけるな!そんな訳ないだろう!お前が魔王様をたらし込んだんだろう!」

そんな事言われても、本当に魔王と会うのは初めてだし、なぜ連れてこられたのか私が一番知りたい。

「リリアム!何をしている」

突然後ろから声がしてリリアム様がびっくりして背筋がピシッと伸びるのがわかった。

「魔王様」

リリアム様は振り向くと魔王に深々とお辞儀をした。

「ここへは立ち入るなと言っておいただろう、何をしていた?」

リリアム様が身体を下げてお辞儀をした事で魔王の姿が私から見えるようになった。
とても不機嫌そうな美男子が佇んでいる。

「申し訳ございません。しかし、なぜ人間を魔王城に招かれたのですか?」

リリアム様が覚悟を決めたように魔王に問いかけた。

「お前には関係ない」

「関係ないと言われましても、皆不可解に思っております」

「関係ないと言っている。私の城に私が誰を招こうと私の勝手だ。早くこの部屋から出ていけ。」

魔王はリリアム様に近づくと手を取りそのまま部屋の外へと連れ出した。
手を握られた時リリアム様は顔を赤らめて少女のような表情に変わった。あら、ひょっとしてリリアム様は魔王が好きなのね。


「すまない」

リリアム様を外に追い出し、扉を締めると魔王が私に向き直り発した第一声がそれだった。

「魔王様ともあろうお方が簡単に人間などに頭を下げてよろしいのですか?」

「魔族も人間も関係ないだろう。失礼なことをしたのだから王だろうが関係ない。皆の前でもあるまいし、個人的な客に対し礼儀を通すのは当たり前だ」

あら、この魔王様、外見だけでなく内面もイケメンだわ。

「失礼なこと・・・と仰いますと、私を攫ったことですか?それとも・・・ベッドに縛り付けた事?」

少し嫌味を込めて言い返してみる。

「あれは・・・手荒なことをしてすまなかった」

魔王様は少しバツが悪そうに俯いた。
少し長めの前髪の間から見える伏せられた赤い瞳に黒く長いまつ毛がかかる。
とても色っぽい仕草に思わず惹き付けられる。

「しかし、本当に俺のことを覚えていないのか?」

顔を上げ、真っ直ぐに私を見て魔王様が問いかけた。
やっぱり、魔王様は私のことを知っている。
そして私に会った事がある?

「申し訳ございません。魔王様は私をご存知のようですが、私には全くその記憶がございません」

余計な前世の記憶ならあるけれど。

「そうか・・・もし良ければしばらくここに居てはくれないか?」

がっかりした顔でイケメンに懇願されると弱い。

「私は構いませんが、他の方がどう思われるか・・・後、カルナリカ王国が黙っていないかと・・・」

そうだ、目の前で花嫁を連れ攫われたとあれば王家の威信に関わる。そのうち私を取り戻しにやって来るだろう。
でも、カルナリカ王国は魔王領の遥か西の国、他の国を二つまたがないと来ることが出来ない。国交やら何やら考えると果たして助けは来るのかしら?まぁ、来るにしても一月は有にかかるだろう。
あれ?そう言えば私は連れ攫われた後何日も飛んでたの?そんな感じはしなかったけれど・・・


「そうだな、カルナリカの事は何とかする。・・・アリア、何かあったか?」

私が遥か西の国からどうやって連れてこられたのか怪訝に思っていると、魔王様に怪訝な顔をされた。

「私は魔王様に攫われて来ましたのよね?」

「ああ、そうだが」

当然という顔で答える。

「カルナリカからここまで何日かかりましたの?私は何日気を失っていましたの?」

一気に疑問を投げかけた。

「何日・・・と言うか、私がカルナリカへ行きアリアを連れて戻ってきたのは10分程度だが、アリアが気を失っていたのは5時間ほどだっかな、なかなか目を覚まさないので心配したぞ」

「え???」

私そんなに眠ってたんだ、確かに式までは忙しくてほとんど寝てなかったからね・・・道理でスッキリしてるはずだわ。じゃなくて、

「魔王様は瞬間移動が使えるのですか?」

「ああ、会ったことのある者のいる所ならどこへでも行ける」

瞬間移動なんてかなり魔力を消耗する上、人間で出来る人は数えるほどしか居ないし、出来たとしても飛べる距離も短い。それに人を抱えて移動出来る人なんて聞いた事がない。それを魔王様は私を抱えたまま移動したと言うの?しかもかなりの長距離移動。それを平気でやってのけるなんてさすが魔王様、魔力量は半端ないって事ね・・・

「さすが、魔王様は凄いのですね」

感心して言うと魔王様がキョトンとした顔になってしばらく見つめた後、嘆息して言った。

「やはりお前は面白いな、普通魔王に対して恐怖を覚えるものだろう。俺の事を覚えていないのなら尚更だ」

そう言って微笑んだ魔王様、破壊力半端ない!
こんな美しい魔王様なら誰も恐怖心なんて覚えないし、みんな惹かれると思うんだけれど・・・。

「今の魔王様は全然怖くないですわ、皆が恐れるのは魔族の王だという理由だからでしょ?魔人は人間よりもはるかに魔力が高いもの。人間はそこに恐怖を覚えるんです」

「うん、私の魔力は歴代魔王に較べても高い。弱い人間なら近くにいるだけでも魔力に当てられてしまうだろう」

「え?そうなのですの?私大丈夫なんですけど、私にはそんなに魔力は無いはずです・・・」

私は転生者だからなのか魔力はほぼ無く、なんの能力も持たないただの娘だ。
普通こういう転生物ってチートとか聞くのに現実は甘くなかった。神様とかいうのも現れなかったし。でも、公爵家に生まれた事はチートと言えるかもしれない。
前世はごく一般家庭の娘だったしね。

「お前は特別だ」

そう言ってまた微笑む魔王様。

「特別?」

なんだろう、魔王様がこんなに優しい理由と繋がるのかしら・・・?

「それは自分で思い出せ、それまでここで自由にするといい。ただし、城の外へは出るな、それと、・・・そのドレス似合っている。やはりアリアのプラチナブロンドの髪にはその色が栄えるな、クローゼットの中の物は好きに使ってくれて構わない」

そう言うとニッコリ微笑んでからカツカツと足音をたてて部屋を出ていった。



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