魔王に誘拐された花嫁

さらさ

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㉖安堵と疑問

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気が付くと、見慣れた魔王様の執務室に居た。

見慣れた景色に安心すると、一気に腰と脚の力が抜けて崩れそうになるけれど、魔王様ががっしりと抱き止めてくれてゆっくりとソファに座らせてくれる。
私は魔王様にしがみついてブルブルと震えが止まらなくなっていた。
今更、斬首台の恐怖が蘇る。

「怖い思いをさせてすまなかった」

「なぜ魔王様が謝るの?」

魔王様は全然悪くないのに、何故謝るのかしら。
震える私をそっと抱きしめて私の肩に顔を埋める魔王様。
魔王様は私を抱いて震えていた。

「もしアリアが俺を呼んでくれなかったら・・・考えるだけで恐ろしい。またアリアを失う所だった・・・」

また?
リリアム様のお姉様の事ね・・・気が動転しているのかしら・・・

私も恐怖で震えていたはずなのに魔王様が震えて取り乱しているのを見てだんだんと落ち着きを取り戻してきた。
不思議ね、自分より取り乱している人がいると逆に落ち着くって前世で聞いたことあるけれど、本当にそうだわ。

私は魔王様の背中に腕を回すとそっと抱きしめた。

「あの時魔王様はなぜ来てくれたの?」

本当に、あの時来てくれなければ今頃私の首は胴体とバイバイしていた。
考えただけでもゾッとする。

「逆に、何故あんなギリギリまで俺を呼ばなかった?」

魔王様が顔を上げて私を見つめる。

逆質問されてしまった。

「魔王様のことを考えると辛くなるもの。でも、最後に魔王様の事しか頭になくて、魔王様って言ったら来てくれたのよ?何故?」

魔王様って、本当に小さな声で呟いただけなのに。

「危なくなったら俺を呼ぶように言っただろう?」

優しく諭すように答える魔王様。
そう言えばそんなこと言われた気がするけれど、呼んだからきてくれたの?どんな地獄耳よ!

「アリアが危ない時、会いたいと思ってくれた時、俺を声に出して呼ぶ事で発動する術を掛けていた。俺はアリアの一言でどこへでも飛んでいくぞ」

ニヤリと笑って話す魔王様、いつの間にそんな術をかけてたのかしら。

「それならもっと早くに呼んでれば斬首台に上がらずにすんだの?」

私は体から緊張がふにゃりと抜けたようになって魔王様を見た。

「そうだ、まさかあんな事になっているとは・・・ちゃんと話していれば良かった。アリアにまた刃物の恐怖を与えてしまった・・・本当にすまない」

魔王様が頭を下げる。

私はそっと魔王様の、手を取った。

「ちゃんと魔王様は助けてくれたじゃない。魔王様が謝ることなんてないわ」

笑って魔王様の手を見ると手に血が付いている。

「魔王様、手を怪我してるわ!」

「本当だ、斬首台の刃を壊した時かな?油断したな」

何でもないことのように言う魔王様、よく見ると手のひらがざっくりと切れている。
まず血を拭わなければ・・・

「アリアっ!!」

魔王様が慌てて手を引っこめる。
見ると青ざめた顔で魔王様が私を見ていた。

「魔王様?どうかしました?」

キョトンとする私に魔王様はしばらく息が止まったように固まっていたけれど、しばらくしてふっと息を吐き出した。

「俺の血を舐めるとは・・・」

少し顔を赤らめながら魔王様が呟いた。
私はその言葉を聞いて、今私がした事を思い出し、とんでもない事をしてしまったと我に返った。
 
「こ、これはっ・・・はしたない事をしてしまいました。申し訳ございませんっ!」

私は無意識に魔王様の手を、血を舐めてしまっていたのだ。
我に返るととんでもなく恥ずかしいことをしてしまった。
魔王様忘れて!魔王様の記憶から消して!

「いや、大丈夫だ、それよりアリア、身体は何ともないのか?」

魔王様は照れたように私を気遣うけれど、その照れが私をさらに追い込む。

なんであんな事をしてしまったのかしら、穴があったら入りたい・・・

魔王様は、私の体を気遣ったり、私の心配ばかり。さっきもまた刃物の恐怖を与えてしまったって、気にしてたし・・・
あれ?また?この前のキース様の時のことよね、そういえば、キース様の時も魔王様は私の刃物恐怖症を知ってる風な言い方だった。
あの時はそんなに気に止めていなかったけれど、まさか、魔王様は私の前世での最後を知っている・・・?

でも、私は前世でも魔王様のことなんて知らないし・・・

「ひょっとして、魔王様は前世の私をしっているの?」

疑問を思わず口に出して言うと、魔王様がぎょっとした顔で私を見つめた。

「前世・・・とは?」

魔王様が躊躇いがちに問い返す。

あれ?違ったかしら。そうよね、前世のことを知っているなんてありえないわよね。

「ごめんなさい、前世とかそんなのある訳無いわよね」

ああ、変なことを言う娘だと思われたかしら。
魔王様をちらりと見ると何故か戸惑ったような顔で私を見つめていた。
 
「魔王様?」

「アリアは前世の事を何か覚えているのか?」

戸惑いがちに魔王様が尋ねてきた。
前世の記憶・・・あります。
言うと魔王様は変に思うかしら・・・でも、魔王様のこの様子はやっぱり何か知っているの? 


話そうか迷っていると、急に目の前が真っ暗になり、意識が遠くなってそばに居た魔王様に寄りかかるように倒れ込んだ。

「アリア!アリア!アリアーーー!!」

魔王様が叫ぶ声が遠くに聞こえていた。 



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