魔王に誘拐された花嫁

さらさ

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㉗記憶の彼方(※一部残酷シーンがあります)

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私はいつの間にか、魔王様がとても大切な存在になっていたことに気がついていた。
国の事や私の事ばかりに気を使って自分の事には無頓着な魔王様の事が、無茶をしているんじゃないかと心配になってしまう。

私に困った顔で微笑む魔王様に、私が何かを忘れていることが申し訳無くて、それでも、その困った顔さえ愛おしく感じていることに気がついてしまった。

もう気持ちから目をそらさないで、ちゃんと向き合いたい。これ以上魔王様に不安そうな、困った顔をさせたくない。

私が忘れている事を思い出したい。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

大学を卒業してから就職した会社で働き始めて2年が経ち、仕事にも慣れてきだした頃、ある仕事でどうしても明日までに資料を作らないといけなくなり、残業していて22時になってしまった。
会社から自宅の最寄り駅までは約1時間、そこから自宅まで徒歩15分、社会人になり大人になったつもりだけど、やっぱり夜道の一人歩きは怖い。
なので自然と早足になり家路を急いでいた。

人通りの少ない路地に差し掛かり、ふと誰かがついてきてる気配を感じ、とても怖くなった。
振り向くことが出来ず早足になると、後ろの足音が走り出す。
近くなる足音に慌てて振り向くと、ニヤニヤ笑いながら近づく男性の顔があった。
男性は明らかに私を見ている。

嫌だ、怖い!レオン様!!

私はレオン様を思い浮かべる。
今の私は魔力も持たない非力な人間、こういう時本当に恐怖を感じる。
そして、距離が縮まった時、お腹の辺りに衝撃が走る。

痛い、熱い・・・!!
血が滴り落ちる。
それを見た男性は「ヒャハハハ」と嬉しそうな声を上げ何度も私に向かって刃物を突き立てて来た。
私は身動きが取れずその場に崩れ落ちた。
血の海に沈む私になおも突き立てられる刃。

「レオンさ・・・ま・・・」

意識を失った後、レオン様が私の傍で泣いていた。

泣かないでレオン様、これでやっとあなたの元へ帰れるのよ・・・




ああ、そうだ、私は前世から魔王レオン様のことを知っていたんだ。

前世の私にはその前の、ソフィアだった頃の記憶があった。
ソフィアは魔族でリリアムの姉、そしてレオン様の恋人だった。
ソフィアだった頃の私が息絶えた時、レオン様が悲しみと怒りに我を忘れてしまった時、魂となった私にはどうすることも出来ずに見ていることしか出来なかった。
レオン様を狂わせてしまった私が許せなくて、悲しくて、どうにかしてレオン様を元に戻したいと願った。


すると何処からか神様が現れて私に話しかけてきた。

『ソフィア、レオンは自我を引き換えに神のこの私でも抑えることが出来ないほど強大な魔力を手に入れてしまった。レオンをこのままにしておくとこの星が滅びることになる。』

『滅びる?!レオン様はどうなるの?』

『星が滅んだ後、一人誰もいない星をさ迷う事になるだろう』

『そんな・・・どうすれば止めることが出来るのですか?』

『私は今からレオンに話しかける。その前にお前と取引をしたい』

神様が取引?

『何ですの?』

『お前はあのようになってしまったレオンをまだ愛しているか?』

『もちろんです!私の大切な、愛おしいレオン様ですもの』

即答で答える。

『お前が生まれ変わっても会いたいと願うなら、願いを叶えてやろう』

『 生まれ変わることができるんですか?』

『それには条件がある。まず、同じ世界に転生させることは出来ない。よって、別の世界に一度転生させる。そこで寿命を全うすれば次はこの世界に転生させてやれる。ただし、自殺や自分から死にに行くような行動ををすればその時点で転生はとだえる。
後もう一つ、レオンの世界に転生した時はお前の記憶からレオンの記憶を抜き取る。レオンの記憶がなくてもお前はレオンをもう一度愛することが出来るか?
先の見えない長い話だが、この条件を飲むなら叶えてやれる』

『飲みます。必ずレオン様の元に戻ります』

私の答えは決まっている。即答で答える。
もう一度愛するレオン様に会うことができるならなんだってやれる。

『分かった。では、レオンに元に戻るよう説得しよう。次出会えるのは100年後かもしれない。それは私にも分からんが、レオンが待つと言うなら必ずお前たちを会わせてやろう。
さて、少し手が焼けそうなのでソフィア、お前も呼び掛けに協力してくれ』

そうして、神様は私に精神の奥深くに沈んだレオン様と話をする機会を与えてくれた。

『レオン様、レオン様!』

『ソフィア!!ソフィア!!良かった、探したよ、どこへ行ってたんだ?嫌な夢を見たんだ。ソフィアが私の元からいなくなってしまうんだ』

ほっとした顔で私を見るレオン様。

『レオン様、よく聞いて、私は死んでしまったの』

『嘘だ!!ここにいるじゃないか!!』

そう言って私を抱きしめるレオン様、でも、その手は空を描き私を捉えることは無かった。

『レオン様、ごめんなさい。今は神様の力を借りて話しかけているの。これ以上人を殺さないで!』

私を捉える事が出来ずに呆然としていたレオン様が首を横に振る。

『人間がソフィアを殺した!もうソフィアに会うことが出来ないなんて・・・許すことが出来ない!』

『レオン様、私は生まれ変わってあなたの元に戻ってくるわ。時間はかかるかもしれないけれど、必ずあなたの元へ戻るから、それまで待っていて欲しいの』

『生まれ変わる?戻って来れるのか?』

半信半疑に、でも、嬉しそうに話すレオン様。

『ええ、でも、生まれ変わると今の私ではなくなっているかも知れないわ。容姿も、性格も・・・それでも愛して頂けるかしら』

レオン様は私の姿が変わってしまうことに一瞬躊躇したようだったけれど、覚悟を決めたのか笑顔を向ける。

『ソフィアが戻ってきてくれるなら待つ、ソフィアの魂ならどんな姿でも俺は見つけ出してみせる。今度は絶対に離さないから覚悟しろよ』

『ええ、分かったわ。戻ったら鎖でもなんでも繋いで捕まえてちょうだい。それまで待っていてね』

『ああ、待っている』




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