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1話 始まりは婚約から(シルル)
しおりを挟む俺の名前はシルル・ディ・ファルスティア、現在12歳。
ファルスティア王国の第一王子だ。
俺には生まれた時から別の記憶があって、前世はこの世界とは全く別の世界の人間だった。
シスコンだった俺が突然死んでしまったのは俺が21歳の時、大学からの帰り道に大型トラックが突っ込んできて俺はあっけなく死んでしまった。
そして気がつけばなんだか知った世界に生きていた。
ここは小説と瓜二つの世界なんだ。俺が何故記憶を持ったまま生まれたのかは知らないけど、この世界はどうも、前世で妹がハマっていた小説の中のような気がする。
まず、俺の名前、国の名前、そして、今日今から婚約する婚約者の名前、全て小説の中に出てくる人物と同じ名前だ。
俺がどうしてその小説に詳しいのかって?
大好きな妹に話を合わせてやるために俺も小説を読んでいたから。
俺の中では推しは悪役令嬢のリリアンナだった。
この子は悪ぶってるけど、根はいい子に違いない。ちゃんとこの子の意見も聞いて、助けてあげたい。こういう子ほど萌える俺ってちょっとヤバい?とか思いながら読んでた小説なのでよく覚えてる。
もちろん、小説は小説、俺は俺、小説通りに生きる気は無いので、まだ出会ってもいない主人公ちゃんに謝るのもおこがましいけど、ごめんね、俺は今日初めて出会うリリアンナの事しか頭にないんだ。
「シルル王子、リリアンナお嬢様が到着されました」
伝えてくれたのは俺の執事のアグリだ。
「うん、ありがとう」
俺はアグリに礼を言うとソファーから立ち上がって部屋を出た。
俺が向かったのは城の中にある一室で、気心の知れた人と話をする為のサロンのような感じの部屋だ。
リリアンナは10歳なので堅苦しい場所よりこっちの方が落ち着くだろうという事でこの場所に決まった。
小説には挿絵はあるけど、俺も挿絵と違うし、実物のリリアンナがどんな子なのかめちゃくちゃ興味がある。会うのがとっても楽しみだ。
「シルル・ディ・ファルスティア様、到着なさいました」
俺が部屋に入ると、リリアンナと親である公爵が立ち上がって頭を下げて待っていた。
リリアンナは・・・ん? 気のせいかな?
「こんにちは、顔を上げてください」
俺が声をかけると、2人が顔を上げた。
リリアンナはシルバーの髪にエメラルドグリーンの瞳でにこやかに俺を見つめる。
うん、顔は可愛らしい・・・
え? リリアンナはまさかのぽっちゃりさん?
小説の中に出てくるリリアンナは16歳だから、昔はぽっちゃりだったのかもね・・・これはこれで可愛いけど・・・
「シルル様、初めまして、リリアンナと申します。どうぞよろしくお願い致します」
リリアンナははち切れそうな頬をピンク色に染めてにっこり笑って挨拶をしてくれる。
この子が悪役令嬢と呼ばれる子になるなんて想像出来ない。
「こちらこそよろしく」
俺はリリアンナに向かって手を差し出した。その手に、リリアンナは遠慮気味に触れる。柔らかくてすべすべの手だ。
この手を俺はこれから守っていくんだ。
絶対に離したりはしない。
俺はリリアンナの手をきゅっと握り返すと、にっこり笑った。
「僕の可愛いお姫様、これからよろしくね 」
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