ヒロインが迫ってくるのですが俺は悪役令嬢が好きなので迷惑です!

さらさ

文字の大きさ
8 / 30

8話 脱出(シルル)

しおりを挟む



「ここまで来れば少し見えるね」

窓際まで移動すると、外の明かりで顔が見えるようになった。
セイラ嬢の表情は困ったような、嬉しいようななんとも言えない表情だ。頬が赤らんでいるから恥ずかしいのかな?

セイラ嬢の手を離すと、俺は近くにあった椅子を窓際まで移動させて、セイラ嬢に座るよう促した。

「ねえ、ちょっと聞いてもいいかな 」

「はい、何をですか? 」

「セイラ嬢はもしかして僕の事好きなの? 」

「え? 」

僕の質問に、セイラ嬢は明らかに焦った表情になる。
普通こんな質問したらどんだけ自信過剰なんだよって質問だけど、俺は答えを知ってる。
小説では俺とセイラ嬢は両思いになるんだけど、俺はセイラ嬢のことはなんとも思っていない。
なら、セイラ嬢はどうなんだろう?俺の事なんて興味無い設定になってないだろうか? そんなことを思っていたけど、入学してからセイラ嬢の態度は明らかに僕を狙ってる。
小説通りなら、やっぱり僕を好きなんだろう。
だけど僕はリリアンナが好きだから、もし本当に僕を好きでいてくれるのなら早めに言ってあげないと可哀想だ。 

「僕の事、どう思ってるの? 」

「と、突然なんですか? 」

セイラ嬢は俯いて目をそらす。
顔が真っ赤だ。

「ちょっと気になったから・・・僕の事を好いてくれてるのなら、僕はその気持ちに答えてあげることは出来無いから、ちゃんと言っておこうと思って 」

「何故ですか? 」

セイラ嬢が顔を上げて不安そうに僕を見る。

「何故って、僕には婚約者がいるから。君も知ってるでしょ? 僕は婚約者の事が好きなんだ。だから君の気持ちには答えてあげられない 」

「そんな・・・ 」

セイラ嬢は悲しそうな表情になるけど、こればっかりは嘘をついても仕方ないし、俺は二股を掛ける気もない。
はっきりさせておくのはセイラ嬢の為でもある。
早く僕への熱から覚めて他の人を見つけてくれる方がいい。

「じゃあ、少し待っててね 」

俺はそう言うと近くの窓を開け、窓枠に足を掛けた。

「シルル様! 何をするのですか! 」

セイラ嬢の止めるのも聞かず、俺は窓から外に出ると、僅かな壁の凸部に手を掛けて下にぶら下がってそのまま地面に飛び降りて着地した。
セイラ嬢の悲鳴が聞こえていたけど、下から大丈夫だと手を振ってからまた建物の中に入った。

身体は鍛えてるから丈夫だし、前世では田舎育ちだったから野山を駆け回ったり、結構危険なこともして来た。
今世では顔がお上品だからそんなことしないと思われがちだけど、危険なことをするのは大好きだったりする。
とはいえ、立場があるから誰もそんなことさせてくれなかったけど、今のはちょっとわくわくして楽しかったな。

俺は上機嫌で職員室に行って事情を話して鍵を受け取ると、そのまま鼻歌交じりに図書室に戻った。


「セイラ嬢、お待たせ、大丈夫? 」

鍵を開けて電気を付けると、セイラ嬢が慌てて駆け寄ってきた。

「シルル様! 大丈夫ですか? 」

「うん、全然平気だよ 」

セイラ嬢は僕の笑顔にほっと息を吐く。

「本当にびっくりしました、まさか飛び降りるなんて・・・ 」

本当に心配したみたいだな、安心した顔してる。
それとも、閉じ込められた状態から開放されたことへの安堵からかな?
そりゃ、怖かっただろうな。

「心配してくれてありがとう、寮まで送っていくよ、セイラ嬢も怖かったろうけど、よく頑張ったね、帰ろう 」

「はい、でもシルル様が一緒だったから全然怖くはなかったです 」

そう言ったセイラ嬢の表情は何故か嬉しそうだった。
あれ? 俺さっきキッパリ断ったよな? 振ったんだよ? なんで嬉しそうなんだ?
疑問に思いつつも、まぁ、泣かれるよりはいいか、とか思っていたら女子寮の前までたどり着いた。

「今日はありがとうございました。シルル様が本当に優しい方だって改めて思いました 」

「僕は何もしてないけど・・・とりあえずセイラ嬢が無事で良かった。じゃ、おやすみ 」

何故かとっても笑顔で嬉しそうなセイラ嬢は無視して俺は自分の寮へと戻った。

戻った所でアグリが出迎えてくれた。

「遅かったですね、何かありましたか? 」

「いや、何も無いよ 」

俺はいつも通りの王子スマイルでアグリに応えると部屋に入った。

翌日、もう一度図書室を調べると、手帳は本と本の間に挟まっていた。
俺が見た書棚では無いのに、なんでこんな所にあったんだろう?








しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

強すぎる力を隠し苦悩していた令嬢に転生したので、その力を使ってやり返します

天宮有
恋愛
 私は魔法が使える世界に転生して、伯爵令嬢のシンディ・リーイスになっていた。  その際にシンディの記憶が全て入ってきて、彼女が苦悩していたことを知る。  シンディは強すぎる魔力を持っていて、危険過ぎるからとその力を隠して生きてきた。  その結果、婚約者のオリドスに婚約破棄を言い渡されて、友人のヨハンに迷惑がかかると考えたようだ。  それなら――この強すぎる力で、全て解決すればいいだけだ。  私は今まで酷い扱いをシンディにしてきた元婚約者オリドスにやり返し、ヨハンを守ろうと決意していた。

断罪の準備は完璧です!国外追放が楽しみすぎてボロが出る

黒猫かの
恋愛
「ミモリ・フォン・ラングレイ! 貴様との婚約を破棄し、国外追放に処す!」 パルマ王国の卒業パーティー。第一王子アリオスから突きつけられた非情な断罪に、公爵令嬢ミモリは……内心でガッツポーズを決めていた。 (ついにきたわ! これで堅苦しい王妃教育も、無能な婚約者の世話も、全部おさらばですわ!)

【完結】ゲーム序盤に殺されるモブに転生したのに、黒幕と契約結婚することになりました〜ここまで愛が重いのは聞いていない〜

紅城えりす☆VTuber
恋愛
激甘、重すぎる溺愛ストーリー! 主人公は推理ゲームの序盤に殺される悪徳令嬢シータに転生してしまうが――。 「黒幕の侯爵は悪徳貴族しか狙わないじゃない。つまり、清く正しく生きていれば殺されないでしょ!」  本人は全く気にしていなかった。  そのままシータは、前世知識を駆使しながら令嬢ライフをエンジョイすることを決意。  しかし、主人公を待っていたのは、シータを政略結婚の道具としか考えていない両親と暮らす地獄と呼ぶべき生活だった。  ある日シータは舞踏会にて、黒幕であるセシル侯爵と遭遇。 「一つゲームをしましょう。もし、貴方が勝てばご褒美をあげます」  さらに、その『ご褒美』とは彼と『契約結婚』をすることで――。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ もし「続きが読みたい!」「スカッとした」「面白い!」と思って頂けたエピソードがありましたら、♥コメントで反応していただけると嬉しいです。 読者様から頂いた反応は、今後の執筆活動にて参考にさせていただきます。

乙女ゲームに転生したので、推しの悲恋EDを回避します〜愛され令嬢は逆ハーはお断りです!

神城葵
恋愛
気づいたら、やり込んだ乙女ゲームのサブキャラに転生していました。 体調不良を治そうとしてくれた神様の手違いだそうです。迷惑です。 でも、スチル一枚のサブキャラのまま終わりたくないので、最萌えだった神竜王を攻略させていただきます。 ※ヒロインは親友に溺愛されます。GLではないですが、お嫌いな方はご注意下さい。 ※完結しました。ありがとうございました! ※改題しましたが、改稿はしていません。誤字は気づいたら直します。 表紙イラストはのの様に依頼しました。

悪役令嬢に転生したけど、知らぬ間にバッドエンド回避してました

神村結美
恋愛
クローデット・アルトー公爵令嬢は、お菓子が大好きで、他の令嬢達のように宝石やドレスに興味はない。 5歳の第一王子の婚約者選定のお茶会に参加した時も目的は王子ではなく、お菓子だった。そんな彼女は肌荒れや体型から人々に醜いと思われていた。 お茶会後に、第一王子の婚約者が侯爵令嬢が決まり、クローデットは幼馴染のエルネスト・ジュリオ公爵子息との婚約が決まる。 その後、クローデットは体調を崩して寝込み、目覚めた時には前世の記憶を思い出し、前世でハマった乙女ゲームの世界の悪役令嬢に転生している事に気づく。 でも、クローデットは第一王子の婚約者ではない。 すでにゲームの設定とは違う状況である。それならゲームの事は気にしなくても大丈夫……? 悪役令嬢が気付かない内にバッドエンドを回避していたお話しです。 ※溺れるような描写がありますので、苦手な方はご注意ください。 ※少し設定が緩いところがあるかもしれません。

転生賢妻は最高のスパダリ辺境伯の愛を独占し、やがて王国を救う〜現代知識で悪女と王都の陰謀を打ち砕く溺愛新婚記〜

紅葉山参
恋愛
ブラック企業から辺境伯夫人アナスタシアとして転生した私は、愛する完璧な夫マクナル様と溺愛の新婚生活を送っていた。私は前世の「合理的常識」と「科学知識」を駆使し、元公爵令嬢ローナのあらゆる悪意を打ち破り、彼女を辺境の落ちぶれた貴族の元へ追放した。 第一の試練を乗り越えた辺境伯領は、私の導入した投資戦略とシンプルな経営手法により、瞬く間に王国一の経済力を確立する。この成功は、王都の中央貴族、特に王弟公爵とその腹心である奸猾な財務大臣の強烈な嫉妬と警戒を引き寄せる。彼らは、辺境伯領の富を「危険な独立勢力」と見なし、マクナル様を王都へ召喚し、アナスタシアを孤立させる第二の試練を仕掛けてきた。 夫が不在となる中、アナスタシアは辺境領の全ての重責を一人で背負うことになる。王都からの横暴な監査団の干渉、領地の資源を狙う裏切り者、そして辺境ならではの飢饉と疫病の発生。アナスタシアは「現代のインフラ技術」と「危機管理広報」を駆使し、夫の留守を完璧に守り抜くだけでなく、王都の監査団を論破し、辺境領の半独立的な経済圏を確立する。 第三の試練として、隣国との緊張が高まり、王国全体が未曽有の財政危機に瀕する。マクナル様は王国の窮地を救うため王都へ戻るが、保守派の貴族に阻まれ無力化される。この時、アナスタシアは辺境伯夫人として王都へ乗り込むことを決意する。彼女は前世の「国家予算の再建理論」や「国際金融の知識」を武器に、王国の経済再建計画を提案する。 最終的に、アナスタシアとマクナル様は、王国の腐敗した権力構造と対峙し、愛と知恵、そして辺境の強大な経済力を背景に、全ての敵対勢力を打ち砕く。王国の危機を救った二人は、辺境伯としての地位を王国の基盤として確立し、二人の愛の結晶と共に、永遠に続く溺愛と繁栄の歴史を築き上げる。 予定です……

悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます

久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。 その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。 1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。 しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか? 自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと! 自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ? ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ! 他サイトにて別名義で掲載していた作品です。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

処理中です...