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8話 脱出(シルル)
しおりを挟む「ここまで来れば少し見えるね」
窓際まで移動すると、外の明かりで顔が見えるようになった。
セイラ嬢の表情は困ったような、嬉しいようななんとも言えない表情だ。頬が赤らんでいるから恥ずかしいのかな?
セイラ嬢の手を離すと、俺は近くにあった椅子を窓際まで移動させて、セイラ嬢に座るよう促した。
「ねえ、ちょっと聞いてもいいかな 」
「はい、何をですか? 」
「セイラ嬢はもしかして僕の事好きなの? 」
「え? 」
僕の質問に、セイラ嬢は明らかに焦った表情になる。
普通こんな質問したらどんだけ自信過剰なんだよって質問だけど、俺は答えを知ってる。
小説では俺とセイラ嬢は両思いになるんだけど、俺はセイラ嬢のことはなんとも思っていない。
なら、セイラ嬢はどうなんだろう?俺の事なんて興味無い設定になってないだろうか? そんなことを思っていたけど、入学してからセイラ嬢の態度は明らかに僕を狙ってる。
小説通りなら、やっぱり僕を好きなんだろう。
だけど僕はリリアンナが好きだから、もし本当に僕を好きでいてくれるのなら早めに言ってあげないと可哀想だ。
「僕の事、どう思ってるの? 」
「と、突然なんですか? 」
セイラ嬢は俯いて目をそらす。
顔が真っ赤だ。
「ちょっと気になったから・・・僕の事を好いてくれてるのなら、僕はその気持ちに答えてあげることは出来無いから、ちゃんと言っておこうと思って 」
「何故ですか? 」
セイラ嬢が顔を上げて不安そうに僕を見る。
「何故って、僕には婚約者がいるから。君も知ってるでしょ? 僕は婚約者の事が好きなんだ。だから君の気持ちには答えてあげられない 」
「そんな・・・ 」
セイラ嬢は悲しそうな表情になるけど、こればっかりは嘘をついても仕方ないし、俺は二股を掛ける気もない。
はっきりさせておくのはセイラ嬢の為でもある。
早く僕への熱から覚めて他の人を見つけてくれる方がいい。
「じゃあ、少し待っててね 」
俺はそう言うと近くの窓を開け、窓枠に足を掛けた。
「シルル様! 何をするのですか! 」
セイラ嬢の止めるのも聞かず、俺は窓から外に出ると、僅かな壁の凸部に手を掛けて下にぶら下がってそのまま地面に飛び降りて着地した。
セイラ嬢の悲鳴が聞こえていたけど、下から大丈夫だと手を振ってからまた建物の中に入った。
身体は鍛えてるから丈夫だし、前世では田舎育ちだったから野山を駆け回ったり、結構危険なこともして来た。
今世では顔がお上品だからそんなことしないと思われがちだけど、危険なことをするのは大好きだったりする。
とはいえ、立場があるから誰もそんなことさせてくれなかったけど、今のはちょっとわくわくして楽しかったな。
俺は上機嫌で職員室に行って事情を話して鍵を受け取ると、そのまま鼻歌交じりに図書室に戻った。
「セイラ嬢、お待たせ、大丈夫? 」
鍵を開けて電気を付けると、セイラ嬢が慌てて駆け寄ってきた。
「シルル様! 大丈夫ですか? 」
「うん、全然平気だよ 」
セイラ嬢は僕の笑顔にほっと息を吐く。
「本当にびっくりしました、まさか飛び降りるなんて・・・ 」
本当に心配したみたいだな、安心した顔してる。
それとも、閉じ込められた状態から開放されたことへの安堵からかな?
そりゃ、怖かっただろうな。
「心配してくれてありがとう、寮まで送っていくよ、セイラ嬢も怖かったろうけど、よく頑張ったね、帰ろう 」
「はい、でもシルル様が一緒だったから全然怖くはなかったです 」
そう言ったセイラ嬢の表情は何故か嬉しそうだった。
あれ? 俺さっきキッパリ断ったよな? 振ったんだよ? なんで嬉しそうなんだ?
疑問に思いつつも、まぁ、泣かれるよりはいいか、とか思っていたら女子寮の前までたどり着いた。
「今日はありがとうございました。シルル様が本当に優しい方だって改めて思いました 」
「僕は何もしてないけど・・・とりあえずセイラ嬢が無事で良かった。じゃ、おやすみ 」
何故かとっても笑顔で嬉しそうなセイラ嬢は無視して俺は自分の寮へと戻った。
戻った所でアグリが出迎えてくれた。
「遅かったですね、何かありましたか? 」
「いや、何も無いよ 」
俺はいつも通りの王子スマイルでアグリに応えると部屋に入った。
翌日、もう一度図書室を調べると、手帳は本と本の間に挟まっていた。
俺が見た書棚では無いのに、なんでこんな所にあったんだろう?
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