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⑧にえって何?
しおりを挟む「それにしても、シンラは魔法が使えるのですか?素晴らしいですね。」
食事をしながらユリアンさんが話しかけてくる。
「魔法を使えるのは凄いことなの?」
「誰もが使える訳ではありません。高い魔力を持つ人だけが使える物なんです。」
そうなんだ。まぁ、俺は魔王と同等の魔力持ってるから使えるよねー。
「ユリアンさんは?使えるの?」
強そうだし、使えるんだろうな。
「ええ、使えます。」
やっぱりねー。
涼しい顔でさらりと言っちゃうとか、イケメンめ。
「俺、魔法よく分かんないんだけど、どうやって出すの?」
「ん?シンラは使えるんですよね?」
「うん、適当にやってみたらなんか出来た。」
その言葉にユリアンさんがちょっと呆れた目になる。
「適当・・・って・・・本来魔法は呪文を編み込んで発動させるのですが、熟練度と魔力が高くなればなるほど短い呪文で出せるようになります。」
「そうなんだ。」
俺、「火」とか「水」だけで出しちゃったよ。それって最短だよね。黙っといた方がいいのかな?
「ユリアンさんは今日はどんな事してたの?」
とりあえず話を逸らしとこう。
「私は城で隊の練習に参加していました。」
「剣の練習してたの?ユリアンさんってその歳で副団長になるくらいだから強いんだよね?」
「ええ、私は幸運な事に生まれつき周りより魔力が高かったので、戦う事については隊では負け無しですね。」
おお、なんか凄いことをさらりと言っちゃてますね。
いいなー。俺、ユリアンさんみたいな男に生まれたかったなー。
・・・なのになんで女の子になってんだ?
神様、俺が女の子になって喜ぶとか思ったのかよー!
「シンラ?どうしました?」
「あ、なんでもない。」
いかんいかん、また落ち込むところだった。
「しばらく窮屈な思いをさせてしまいますが、この部屋に居てくださいね。」
ユリアンさんは申し訳無さそうに言うけど、仕方ないよね。外が危険なら俺はユリアンさんに従う。
そうしてしばらく部屋で過ごすことになった。ユリアンさんは朝と夜顔を出してくれる。他の人とはメイドさん以外接触してないので、ユリアンさんの家族とも会ったことない。
俺は暇なので、色々と魔法を研究して、結界の中で思う存分魔法を使う事を覚えた。
どうやら、魔法は呪文よりもイメージが大事で、呪文は発動させるきっかけに過ぎない。だから正直、その言葉からイメージ出来る言葉なら何でもいいみたい。
この家に来てから十日、そろそろいつものユリアンさんが帰ってくる時間だ。
ユリアンさんは日に日に俺を見ると困ったような、悲しい顔をするようになった。
何か困ってることがあるのかな?
俺がここに居るのって、ユリアンさんに迷惑を掛けてるんじゃないのかな・・・
俺は結界を解いてソファーに座り込むと、ユリアンさんが現れるのを待った。
しばらく待ってもユリアンさんが帰って来ない。今日は残業なのかな?
ユリアンさん居ないと寂しいな・・・
俺はソファーの上で膝を抱えてユリアンさんの帰りを待った。
それからしばらくして、扉が荒々しく開いた。
ユリアンさん?イヤ、ユリアンさんは必ずノックしてから開けるから違う人?
俺はびっくりして立ち上がった。
「黒髪、黒目、・・・やっぱりユリアンのヤツ隠してたのか!」
俺の目の前にツカツカとやってきたのは二人の男性だった。一人はユリアンさんに少し似てる。
ユリアンさんのお兄さん?
もう一人はなんかチャラそうな兄ちゃんだ。
「ユリアンにしては珍しく女を囲っていると思っていたら、まさか贄を囲っていたとはな。」
ユリアンさんに少し似た人が言う。
にえ?にえって何?俺そんな名前じゃないよ?
「確かに可愛いね。ユリアンが囲いたくなるのも分かるわ。」
チャラそうな兄ちゃんが言う。
俺、可愛いって言われて喜ぶ男じゃないから!
「ユリアンには悪いけど来てもらうよ。」
そう言ってチャラ男が俺に手を伸ばしてくる。
「やっ、」
俺は怖くてその手を跳ね除けた。
「荒っぽい事はしたくないんだ。素直に来てくれると助かるんだけど、抵抗するならこちらも考えなくてはいけなくなるよ。」
チャラ男がなんか口説き文句のような手馴れた口調で優しく話しかけてくる。
「ユリアンさんと一緒じゃなきゃやだ。」
ユリアンさんはこの事を知ってるんだろうか?きっと知らないんだ。
コイツらはユリアンさんが居ないのを分かってて来たんだ。
「声まで可愛いね。お兄さんゾクゾクしちゃうじゃん。」
チャラ男がいやらしい目付きになる。
可愛い声とか言うな!それ、気にしてるやつ!
「バカ、ジョシュア、手を出すんじゃないぞ!」
兄に言われて「分かってますよ!」と答えるチャラ男。ジョシュアって言うのか。
「でも、ユリアンが既に手出しちゃってるんじゃないの?」
なんかよからぬ話をしてるようだけど、ユリアンさんはそんな人じゃないやい!
超紳士なんだぞ!チャラ男と一緒にするな!
俺はキッとチャラ男を睨みつけてやった。
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