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47話 お嬢様の我儘
しおりを挟む「我儘、なんでも聞いてくれるのよね? 」
「はい・・・・・・」
俺は何か間違ったかもしれない。
お嬢様は何を言うつもりなんだろう。
「あのね、ルーに魔王の時に戻って欲しいの 」
「・・・・・・・・・は? 」
満面の笑みでお嬢様は何を言っているのだろう?
俺が魔王でも怖くないのは分かった。
だけど魔王に戻れとは?
「あの、どういう意味ですか? 」
「ルーが魔王の時ってきっともっと俺様だったと思うの、今のルーは私に気を使って話してるでしょ? それをやめて欲しいの、敬語もダメ、俺様希望! 」
「え? いや、でもそれは・・・ 」
さすがに雇い主に対してそれは出来ない。
「私がいいって言ってるんだからいいの! 我儘聞いてくれるんでしょ? 」
う・・・上目遣いに見つめられると弱い。
「・・・・・・何をすれば良いんですか? 」
「食事を進める所からやり直しね 」
お嬢様は楽しそうに笑う。
気が紛れているのならいいけど、魔王の頃?
俺様? 確かに俺様だったかもしれないが、どんな風だった?
今の生活に馴染みすぎて分からない。
「・・・・・・お嬢様、食事をしてください 」
「それじゃあ、変わらないわ、敬語禁止よ 」
少し強めに偉そうに言ってみたが直ぐにダメ出しされてしまった。
「分かりました、では、・・・・・・いい加減食事をしろ 」
「だって、食欲がないんだもの・・・ 」
俺の言葉遣いの変化に明らかに嬉しそうな顔になるお嬢様。
これがお望みか、なら・・・・・・
「食べないと倒れても知らないぞ 」
「それは分かってるんだけど・・・・・・ 」
「食えないなら俺が食わしてやる 」
そう言ってお嬢様の顎を少し持ち上げて俺と視線を合わせさせる。
その瞬間、お嬢様が顔を真っ赤にした。
それを見て、何故かとても恥ずかしくなり俺も顔が火照り、それを隠す為に片手で顔を隠して横を向く。
何だこれ、俺は何をやってるんだ?
「くすすっ、うん、ルーが食べさせてくれるなら食べるわ 」
「っ、・・・・・・分かった、直ぐに用意するから待ってろ 」
あまりの恥ずかしさにお嬢様の顔を見る事が出来ずに、食事を用意するため一旦部屋を出た。
食べさせろってマジか・・・・・・いや、俺が食べさせるって言ったんだけど、まさか受け入れるとは思わなかった。
これ、何時まで続けるつもりだろう?
コンコンコン
「お嬢様、戻りました 」
顔の火照りを納めて落ち着いてから再び食事を持ってお嬢様の部屋に入る。
「久しぶりの食事だからな、消化にいいものを用意したから無理せず食べれるだけ食べるといい 」
温かいものと入れ替えて来たスープとミール、後食べれそうならブレッドを用意してテーブルに並べながらお嬢様を見ると、ニコニコと嬉しそうに俺を見ている。
「うん、ありがとう、ルーが食べさせてね 」
「・・・・・・分かっている。今日だけだぞ 」
ふぅっと息を吐き出して出来るだけ意識しないように、俺はお嬢様の横に腰掛ける。
「ほら、口開けろ 」
スープの皿を手に取りひと匙すくってお嬢様の口元まで運ぶ。
「ふふっ、頂きます 」
嬉しそうに口を開けるお嬢様。
零れないようにそっと口へ匙を運ぶ。
「うん、美味しい 」
良かった、食べてくれた、これで一安心だ。
「もっとちょうだい? 」
嬉しさに振るえていると、お嬢様が物欲しそうに俺を上目遣いに見る。
・・・・・・その可愛い顔は反則だ。
「ああ、もっと食べろ 」
「うん 」
俺に素直に口を開け委ねるお嬢様に何とも言えない感情が湧き上がる。
何だこれ、いつも可愛いのは変わらないが、心がザワザワする。
お嬢様に触れたい、お嬢様を抱きしめたい。
・・・・・・って、何考えてんだ俺!
「どうしたの? 」
我に返って手が止まったのを見てお嬢様が首を傾げる。
「あ、いや、何でもない、まだ食べられるか? 」
「うん 」
「ははっ、元気になって良かった 」
お嬢様の明るい表情にほっとして一気に力が抜ける。
「ルーのその笑顔好きよ 」
「え? 」
突然の言葉に驚きお嬢様を見ると、頬をピンク色に染めて嬉しそうに微笑んでいる。
「くすっ、何を今更焦っているの? 私はルーの事が好きだって告白したでしょ? 」
お嬢様は俺の事を信頼している。
俺が居なくなるなんて考えもしていないんだろう。
俺が居なくなったらこの笑顔は消えてしまうんだろうか?
この笑顔を壊したくない。
だけど俺がここに居ると恐れを抱くものも多いだろう。
お嬢様やレオルカ様が気にしていなくとも迷惑が掛かる。俺は居なくなるべきだ。
なのに・・・・・・心が苦しい。俺はここに居たいと思っているのか?
「ねぇ、ルー、お父様が亡くなってとても悲しいけれど、これで喪に服してる間は結婚の話は出ないわ。・・・・・・とても不謹慎なことなのだけど、ルーと少しでも一緒にいられる時間が増えて嬉しいの 」
「お嬢様・・・・・・ 」
「あっ、でも安心してね、ルーを困らせるようなことはしないから、ちゃんと誰かと結婚するわ、・・・・・・ああ、今困ってるか、私の我儘に付き合ってもらっちゃってごめんね 」
無理して笑うお嬢様を見た瞬間、俺はお嬢様を抱きしめていた。
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