侯爵令嬢は弟の代わりに男として生きることを決めました。

さらさ

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33話 心の迷い (ギルバート)

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あれから目に見えてクラウス様がクリスに対して過保護になった。

無理やりとか、自分のものにしようとか、そういった感じではなく、愛しいものを大切に扱うような感じだ。

クリスの事を大切に思ってくれるなら、クリスがそれを望んでいるなら俺は何も言わない。
正直、クラウス様にもクリスに触れさせたくない。
自分一人のものにして閉じ込めておきたい気持ちはあるけど、そんな事は出来ない。

しばらく熱を出して寝込んでいたクリスの元にカルロス様が見舞いに来た時、カルロス様はなんの迷いもなくクリスの唇を奪ってしまった。

突然の事に、唇を奪われたクリス自身も、俺も何が起こっているのか分からなかった。
時間にしてわずかな時間だろうけど、とても長い時間だったように思う。

我に返ってカルロス様を引き剥がすのと、クリスがカルロス様を突き放すのとが同時になった。

クリスは唇を奪われた事で、真っ赤な顔をしながら口を拭っている。

その姿に俺は戸惑っていた。
クリスを赤面させているのはカルロス様だ。

クリスはカルロス様の事は絶対なんとも思っていない。
なのに、キスされて赤面するのは、カルロス様を感じたからじゃないのか?

これでもし、カルロス様の事を少しでも意識するようになってしまったらどうする?
男にクリスを取られるくらいなら、自分のものにしてしまいたい。

今すぐ唇を奪って、カルロス様の感触を忘れさせたい。
全部俺の記憶に書き換えたい。
そんな衝動を抱えていると、クリスがクラウス様に言う。

「男にキスされるなんて気持ち悪くて、二度とごめんです。」

俺の気持ちが一気に消沈した。
そうだよな、男同士でキスなんて、気持ち悪いよな、俺は何を考えていたんだ・・・

カルロス様とクラウス様が部屋を出た後、クリスはやっぱり疲れたのか、すぐに横になって眠りについた。

熱があるのに無理していたクリスに、俺は自分勝手に何を考えていたんだ。

だけど、クリスの額に手を置いて熱を測ってやりながら、クリスの唇から目が離せなくなる。
まだ少し腫れて、切れた後もある痛々しい唇だ。

『 今なら気が付かないんじゃ無いのか? 』

俺の中の悪魔が声を出す。

『クリスの唇に、俺の唇を重ねて触れてみたい 』

ダメだ。今までも、こうやって眠るクリスを見てきたのに、何でそんな事を考える?
弱っている時を狙うなんて最低だ。

クリスの唇を手の親指でそっとなぞる。
柔らかくてほんのりピンク色の唇。
もう二度と誰にも触れさせたくない。

そう思いながら、今触れた親指を自分の唇にキスするようにあてるーーー



そういえば、クリスが以前見た幽霊、あれはカルロス様の密偵だった。
あれからも姿を現していたそうだが、クラウス様が警戒していたのでパッタリと来なくなった。
あの時、俺がカーテンを閉めるまでクリスが俺に抱きついていたのを見られていたので、カルロス様は俺との関係を疑ったらしい。
安全の為にも、そうだと思ってくれてた方が良かったんだけどな・・・




「ギル、今日もクリスちゃんはクラウス様の所か?」

俺が出撃の用意をして向かっていると、副団長のリオさんが横に並んで歩きながら話しかけてくる。

「はい、そうです。」 

「クラウス様どうしちゃったんだろうな? 最近やけにクリスちゃんの事を構うよな、クリスちゃんにマジになっちゃった?」

ニヤニヤと俺の反応を伺いながら話す。

「クラウス様、男に興味無いって言ってたのにな、ギル、気をつけないとクラウス様に先越されるぞ。」

「分かってます。」

クラウス様の事はクリスも信頼してるし、カルロス様みたいなケダモノでも無い。
だからクラウス様のそばに居る方が安全だ。
前にクラウス様に手合わせしてもらったけど、俺もクリスも一度も勝てなかった。
クラウス様は強い。
俺が離れないといけない時はそばにいてくれると心強いけど、そのままクリスがクラウス様を好きになるんじゃないかって恐怖もある。

「あれ? 前は否定してたのに、今認めたな、自覚した? 」

リオさんが俺の反応を見て嬉しそうにニヤニヤと笑う。

「はい、俺クリスの事好きですよ。でも、アイツには言わないでくださいね、後、クリスにも惚れないでくださいよ。」

俺はリオさんに釘を刺す。

「吹っ切れたみたいだな、今から参戦しても、お前とクラウス様には勝てそうにないからやめとくわ。」

そう言うと、カラカラと笑いながら行ってしまった。




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