侯爵令嬢は弟の代わりに男として生きることを決めました。

さらさ

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55話 再びの洞窟

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4日目の昼前に僕達はあの洞窟までたどり着いていた。

「ここか? 」

「はい・・・」

カルロス様に聞かれて答えながらも辛くなる。

ギル・・・

「洞窟はどこまで進んだんだ? 」

「半日ほど進んだだけです。」

「そうか、先はかなり長いんだろ? 急ごう。」

カルロス様がそう言うと、クラウス様も頷く。

「行きましょう、ここからは森の魔物より強い魔物が多いので気をつけて。」

「わかった。」

そう言って先をめざして歩き出す。
何度か魔物と遭遇しながら歩き続けて、ギルが落ちた場所までたどり着いた。
僕はもう一度崖の下を覗き込む。

「ギル・・・」

そこにギルの姿があるはずもないのに、姿が無いことに戸惑い、涙があふれる。

「ギル、ギル・・・」

名前を叫んでも答えることは無いとわかっていても、叫ばずにはいられない。

「クリス・・・」

そんな僕を後ろからそっと包み込むようにクラウス様が抱きしめてくれる。

「クリス、クラウス、先を急ぐぞ、ここにギルは居ない。居るとしたらこの先だ。」

カルロス様にそう言われて、確かにそうだと我に返る。

「はい。」

僕は涙を拭いて立ち上がるとカルロス様を見て頷いた。

そこからは川の様子も確認しながら進んだ。
川はずっとはるか下を流れ、どこまで歩いても下りられる所はなかった。

「そろそろ休もう、外の様子は分からないけど、もう夜だ。」

カルロス様にそう言われて、僕達はそこで野営をすることになった。

ギルがその先いるかもしれない。
どこかで生きていて欲しい。
けれど、それは淡い期待なんだって分かってる。
なので口には出さない。
またクラウス様を困らせるだけだから。
ここまでカルロス様は特に何も変なことはしてこなかった。
眠る時はクラウス様がずっと僕を抱きしめるように寄り添っていてくれるからというのもあるけど、カルロス様の様子は普通だった。

洞窟の中で休むのは、ギルのことを思い出して眠れない。
そんな思いで眠ることが出来ず、目だけを閉じていた。

しばらくして僕の傍に見張りをしているカルロス様が近づく気配を感じて目を開けると、カルロス様は僕の左隣に座った。
右側にはクラウス様が僕を片手で抱き寄せて寝ている。

「起きてたか・・・」

僕が目を開けたのを見てカルロス様が呟く。

「はい・・・眠れなくて・・・」

「・・・お前、本当にクラウスが好きなのか? 」

突然の質問に、僕は驚いてしまった。

「え? 何でですか? 」

恋人らしく見えなかったんだろうか?
どうしよう、恋人じゃないって分かったら、カルロス様は迫って来る?

「お前、本当はギルが好きなんじゃないのか? 」

その言葉に心臓がぎゅっと締め付けられる。
なんでわかったんだろう?

「ど、どうしてですか? 」

「見てればわかる。特に、この洞窟に入ってからのお前の様子がおかしい。ただの友達を失った悲しみには見えない。」

カルロス様本当によく見てるな・・・

でも、ここでそうだって認めたら、今まで恋人のふりをして守ってくれてたクラウス様に申し訳ない。

「何言ってるんですか? 僕が好きなのはクラウス様ですよ? 」

そう言った瞬間、僕を抱きしめて眠るクラウス様の手の力が強くなる。

「え? 」

僕はその感覚にびっくりしてクラウス様を見る。
クラウス様は目を閉じたままだ。

「クラウス様? 」

寝てる?

「ん? どうした? 」

何があったのか分からないカルロス様は僕が突然クラウス様の名前を呼んだので、何かあったのかと尋ねる。

「なんでもありません。」

気のせいかな?

「本当に言っているのか? ・・・まぁ・・・もしギルが好きだったとしてもどうしようもないんだけどな・・・」

カルロス様の言葉に胸が締め付けられる。
僕はギルに好きだって言ってもらったけど、ギルは僕の気持ちを知らないままだ。
僕に振られたと思っている。

「今は辛いかもしれないけど、そのうち気持ちも落ち着くさ、」

カルロス様はそう言いながら僕の頭を撫でてくれる。

僕は周りの人に恵まれてるな・・・こんなに大事にしてくれる人が沢山いる。
いつまでも泣いていられない。



それから3日間洞窟の中を歩き続けた。
魔物の強さは奥に行けば行くほど強くなっていた。
それでも、カルロス様とクラウス様が居るのでなんとか切り抜けられている。

「クリス、あれ。」

カルロス様に促されてカルロス様の指した方を見ると、光が見えた。
外が近い?

「外? 」

僕は慌てて走った。
すぐそこにクリスがいるかもしれない。
ギルがいるかもしれない。
そう思うとドキドキする。
この先はどうなってるの?

「クリス、走っちゃダメだ! 」

クラウス様に諌められて足を止めた時、岩陰から数人の人が現れた。
いや、魔族だ、肌が青い、耳が尖っている。

「「クリス!! 」」

クラウス様とカルロス様が慌てて僕の前に立ちはだかる。

向こうも僕達の登場に驚いたのか、焦ったように剣を抜いて構えるとそのまま襲いかかってきた。

クラウス様とカルロス様が立ち向かい、僕も戦う。
いきなり襲ってくるって、魔族ってやっぱり好戦的なの?

向こうは10人はいる。
クラウス様とカルロス様は戦ってるけど、僕の剣は軽すぎて相手に傷もつけられない。
魔族は身体能力が違う。
そのうち負ける・・・そう思った時、別の魔族がまた10人ほど現れた。
絶望的だ・・・そう思ったのに、後から現れた魔族は僕達と戦っていた魔族と戦い始めた。

「え?? 」

なんで魔族同士で戦ってるの?
訳が分からないでいると、襲ってきた方の魔族が僕に剣を振り下ろして来たのでそれを受け止める。
・・・ぐっ・・・力が強い、横にいなせない。
そう思った時、僕の横から剣が伸びて僕に剣を振り下ろしていた魔族に突き刺した。
目の前の魔族は力なく崩れ落ちる。 
横から伸びた剣を持つ手は僕と同じ肌の色をしていた。青くない。

え? 誰?

振り向こうとした僕に声が聞こえる。

「まったく、相変わらず無茶してるな。」

僕は横に立つ人物を見て息を止めた。







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