陛下の溺愛するお嫁様

さらさ

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⑤ミカのお誘い

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離宮へ戻ると、直ぐに濡れたドレスを脱いで湯浴みをした。
着替え終わってミーナに手を引かれながらサニタリーを出ると、部屋の前でミカが待っていてくれた。
そして、わたくしを抱き上げるとソファまで連れていってくれる。

「わたくし本当にダメね、また足を怪我しちゃったわ。」

「ほんとうに、俺が着いていないとレイラ嬢はすぐに転びますね。」

ミカがイタズラっぽくクスクスと笑いながら言う。
そしてソファにわたくしを降ろすと、跪いてわたくしの足を見る。

「大したことは無さそうですが、前と同じ所ですね、癖になっているようなので固定はしておきましょうね、ミーナ、包帯を用意してくれ。」

「畏まりました。」

ミカに言われて、ミーナが包帯を取りに出ていく。

ミカはわたくしの執事をしていた頃からよくこうしてくれてたので、慣れた光景なのだけど、皇帝陛下に膝まづかせて足を見ていただくなんて、他の方が見たら発狂しそうね・・・見せられないわ・・・

そうしていると直ぐにミーナが包帯を持って戻ってきた。

「お邪魔します。」

ミーナと一緒にアイリス様が入ってくる。
そして、わたくしとミカの光景を見てしばらく硬直しているように見えた。
その間も、ミカがミーナから包帯を受け取ると、わたくしの足を固定する為にテキパキと巻いてくれる。
その光景をアイリス様はじっと見つめていた。
怒るかしら・・・

「暫くはあまり歩かないようにしてくださいね。」

包帯を巻き終わると、ミカが膝まづいた状態からわたくしを見上げて言う。

「ええ、分かったわ。ありがとう。」

そして、わたくしはアイリス様を見る。

「アイリス様、お待たせしました。先程は申し訳ございませんでした。せっかくお呼びいただいたのに、途中で退席してしまって・・・」

「そんな事いいのよ。それより、ごめんなさい。私のせいでレイラ様がお怪我をしてしまって・・・大丈夫なの?」

何故か頬を赤くしてわたくしを見ていたアイリス様がわたくしを気遣ってくれる。

「大丈夫よ。それよりアイリス様にお怪我が無くて本当によかったわ。」

わたくしはにっこり笑って答えた。

「レイラ様・・・」

「レイラ嬢がアイリスを助けたのか?」

わたくし達のやり取りを見ていたミカが立ち上がりながら言う。

「そうなの、転びそうになった私を助けてレイラ様が噴水の中に転んでしまったの。」

アイリス様の言葉に、ミカがわたくしを見る。

「助けて転ぶなんて、レイラ嬢らしいですね。」

クスクスと笑うミカ。

「そんなに笑わなくても・・・」

わたくしが不貞腐れていると、ミカがわたくしの頬に手を当てる。

「アイリスを助けてくれてありがとうございます。」

その笑顔に、思わずミカの手の触れている頬がカッと赤くなる。


「じ、じゃあ、私は失礼するわね!」

アイリス様はそう言うとバタバタと出ていってしまった。

「騒がしい奴だな。」

ミカがアイリス様の出ていった方を見ながら嘆息する。

「今日はアイリス様と随分仲良くなれたと思うの。ミカが離宮から出ていいって許可をくれた御陰よ。ありがとう。」

「どうやらアイリスはレイラ嬢に惚れたようですけど?」

「え?惚れた?ミカ、何を言ってるの?」

「アイリスはレイラ嬢に心を奪われてしまったようでしたよ。」

ミカが言い直す。

「そ、そうなの?」

わたくし何かしたかしら・・・

「アイリスはちょっと我儘だけど、根は素直で優しい子なんです。俺もレイラ嬢をずっと閉じ込めるためにここに呼んだんじゃありません。だからこれからもアイリスとは仲良くしてやってください。」

ミカが兄の表情をしている。

「ええ、そのつもりですわ。」

わたくしはにっこり笑ってミカに答えた。

「今日はレイラ嬢の楽しそうな様子を見に来たのと、レイラ嬢に伝えることがあって来ました。」

ミカがわたくしの隣に座りながら言う。

「何ですの?」

「一ヶ月後に俺の即位パーティを開いて国中に俺の存在を知らしめる事になりました。」

「まぁ、そうなの?」

沢山のお客様を呼ぶ事になるのね?とても大変なんじゃないかしら。

「そのパーティーに俺のパートナーとしてレイラ嬢にも出てもらいたいんだ。」

ミカがわたくしを見つめる。

「え?わたくしが?」

「嫌ですか?」

「いえ、わたくしなんかがそんな場所に出てもいいの?」

まだほとんどの方がわたくしのことを知らないのに、そんな場所に出るなんて、場違いじゃないかしら。

「俺はみんなにレイラ嬢を見てもらいたいのです。一緒にいて頂けませんか?」

わたくしもミカと一緒にいる為に来たのに、拒んでいてはダメよね。

「分かったわ。」

「良かった。ドレスをプレゼントするから楽しみにしていて下さい。」

わたくしの答えに、ミカが嬉しそうに答える。

「後、上皇と上皇后も来るので、そこでの挨拶になると思いますが、会ってもらえますか?」

ミカのお父様とお母様ね、
どんな方なのか、とても興味があるわ。

「ええ、お会いするのが楽しみですわ。」












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