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第1章 レイレード国王と側近
とある国の一日
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空が曇り気味なこの日、クリスタルとルーグは『城下町の視察』に来ていた。
国王であるクリスタルは政治の最終決定権があり、側近のルーグはクリスタルの補佐をしつつも代理を務めることがある。この国、『レイレード王国』は、この二人で国を動かしているというのが実情だ。それ故に、二人は「住民の生活に合わせた政治をする事」「住民の感覚を忘れない事」に気を付けている。そのための視察である。
二人は市民に混じり旅人の様な服を着ており、普通の国王では着ないような、少しばかり汚れたマントも羽織っている。衣服は綺麗だが、決して目立たない色合いだ。この様な恰好をするのは、今回は『一般人としての視察』だからである。ルーグの腰には短剣が装備されているが、国王の視察に無防備で同行する訳にはいかない為、あくまでも護身用としての短剣である。
城のお膝元とも言える城下町は、木材を柱としたレンガ造りの民家が並ぶ。路地裏には小さな個人店や民家の玄関が少し見える。ここでは貴族の屋敷といった豪華な建物は見当たらず、見えるのは一般民家ばかりだ。大きな通りには屋台が並び、主に野菜やその場で食べられるような食品が並んでいる。
屋台のおばさんから焼き鳥を買い、二人でかぶりつく。香ばしい炭火の匂いと甘いタレの風味がたまらない。肉も良い肉を使っているのか、旨味がある。二人は思わず早食いをする。
「最近、屋台の肉が旨くなったよな。良い事だ。」
「一般人用の鶏の飼育業者に、安価で良い餌を卸せるように出来たからな。」
「自国で餌の開発に着手して正解だったな、クリスタル。」
ルーグが旨味に思わず顔を綻ばす。そして焼き鳥を食べつつ横目でクリスタルを見やる。隣にいるクリスタルは串だけ持っている状態だった。暇つぶしなのか、その串で軽く魔方陣を描いている。
「食べるの早いって! ちゃんとしっかり噛んで食べろ!」
「俺肉好きだし? あんなんじゃ俺の腹は満たされないぜ!」
「だからと言って早く食う必要はないだろ!」
「旨いんだもん! それに他のも食べたいし、仕方ないだろ?」
城のお膝元である城下町の大通りで交わされる、国の2トップのどうでもいい口論を見る住民達。その目は非常に温かいものである。小さな子供からも「こくおうさまだー!」と指をさして声をかけられている。それに答えつつも、結局二人は口論を続ける。そしてその最中、クリスタルの目にある店が飛び込む。
「___でもな、あ、あのコロッケ旨そうじゃん! 買おうぜ!」
「あのな、お前……。まぁ、コロッケ買うのはいいけど。店員さん、クリームコロッケ2つ下さい。」
店員は「あいよ!」と愛想よく返事をし、クリームコロッケを二人に手渡す。揚げたてのコロッケは紙越しでも熱いくらいだ。油の独特の香りに紛れて、クリームの良い匂いも混ざって食欲が増す。
「あっつ!! だがそれがいい!」
「熱いのはコロッケだから仕方ないだろ! 頂きまーす。」
二人がコロッケにかぶりつく。
しかし、二人は固まる。
「…………クリスタル。コロッケのクリーム部分、なんか味変な感じがしないか?」
「だよな。意図的な味付けではない、変な味だ。」
二人は顔を見合わせて、ルーグが店主に話しかける。
「店長さん、最近変わったことは無いか?」
「そういえ小麦農家が『農薬が変わった』と申しておりました。」
その発言に、クリスタルがルーグに話しかける。
「小麦農家がよく使う農薬、最近取引先の国が薬品変えたはずだ。覚えてるか?」
「クリスタルに代わって俺が取引したからな。あの時、相手に質問したんだよ。『なんで農薬の成分変えたのか』って。」
「で、答えは『安価な新薬開発に成功したから』だったか? 報告書ではそう書いてたよな、お前。」
「そうそう。その農薬のせいだと思う。」
「「また仕事が増えた。」」
クリスタルが「面倒な事を。」と言う傍で、ルーグも頭を悩ませつつ『やる事リスト』に『小麦農薬の開発or新しい取引先の開拓』とメモする。店主は戸惑いながら話しかける。
「陛下に閣下、自分は何か悪いことでもしたのでしょうか…?」
「いや、正直に言ってくれて助かるくらいだ。」
「国民が一番飯食うのに、これじゃあ国をまとめる者として失策だな。」
「そうなのですか? でも毎度思うのですが、貴族であられるお二方がどうして屋台の食事状況を把握しているのですか?」
「国をまとめる俺達だからこそ、国民と同じものを食うんだ。俺達が良いものばっかり食って、どうして国民は良いものが食えないんだ? おかしくないか?」
クリスタルが串で店主を指す。店主は「はぁ……。」とイマイチ納得していない。
ルーグがクリスタルに同意する。
「俺達は他の貴族にも、国民にも、俺達と同じだけ良い物食べて欲しいだけだ。屋台の食べ物でも安心して食べられるだけ、俺達が衛生面も視野に整備したし。今回は店長さんのおかけで『小麦農薬の改善』っていう課題が見えたから、今後はこれに取り組まないとな。」
「国民の立場から申させて頂きますと、お二人にこそ良い物を召し上がって頂きたいですがね。」
「気持ちは受け取ろう。」
「さて、クリスタル。小麦農薬の問題はまずいが、先に視察終わらせよう。その後どうするか考えよう。」
「だな。さて、次の区域に行くか。」
残りのコロッケを平らげ、クリスタルとルーグは店主に別れを告げる。
二人は街の中央に設備されている『レンガの柱の建物』に向かう。其処には外壁は少ないが内壁は10か所程設置されており、その中には『都市間ワープ装置』と呼ばれる魔方陣が配備されている。二人が乗ろうとしている魔方陣は、薄く青白く光っている。『オーガ区域行』と書かれた魔方陣に乗れば、二人は瞬く間に光の粒子の様に消えていった。
___________
次の視察場所は「オーガ」と称される事の多い種族が住む区域だ。街並みは石を基調とした作りをしており、何処か湿気を感じる。電気の明かりがあるものの、地区が森の中にあるせいで薄暗い印象を受ける。
ここの住民はある世界では「ゴブリン」、別の世界では「鬼」と言われる種である。クリスタルの国では、頭に角の生えた彼らを「オーガ」とまとめて称されている。そしてその凶暴性の高さから、国民の中でも恐れられている事の多い種族である。
クリスタルとルーグが街並みを見渡しつつ、おかしな事が無いかを見て回る。賑わいはいつも通りで異常はない。しかし小さな通りを歩いている途中、ルーグが「あ。」と呟く。クリスタルがルーグの見る方向を見れば、昼が過ぎても賑わうレストランがある。
「何? お前も腹減ってんの?」
「そうだけれども、俺が見てるのは店の張り紙だ。これ、『差別対象になる』。」
国王であるクリスタルは政治の最終決定権があり、側近のルーグはクリスタルの補佐をしつつも代理を務めることがある。この国、『レイレード王国』は、この二人で国を動かしているというのが実情だ。それ故に、二人は「住民の生活に合わせた政治をする事」「住民の感覚を忘れない事」に気を付けている。そのための視察である。
二人は市民に混じり旅人の様な服を着ており、普通の国王では着ないような、少しばかり汚れたマントも羽織っている。衣服は綺麗だが、決して目立たない色合いだ。この様な恰好をするのは、今回は『一般人としての視察』だからである。ルーグの腰には短剣が装備されているが、国王の視察に無防備で同行する訳にはいかない為、あくまでも護身用としての短剣である。
城のお膝元とも言える城下町は、木材を柱としたレンガ造りの民家が並ぶ。路地裏には小さな個人店や民家の玄関が少し見える。ここでは貴族の屋敷といった豪華な建物は見当たらず、見えるのは一般民家ばかりだ。大きな通りには屋台が並び、主に野菜やその場で食べられるような食品が並んでいる。
屋台のおばさんから焼き鳥を買い、二人でかぶりつく。香ばしい炭火の匂いと甘いタレの風味がたまらない。肉も良い肉を使っているのか、旨味がある。二人は思わず早食いをする。
「最近、屋台の肉が旨くなったよな。良い事だ。」
「一般人用の鶏の飼育業者に、安価で良い餌を卸せるように出来たからな。」
「自国で餌の開発に着手して正解だったな、クリスタル。」
ルーグが旨味に思わず顔を綻ばす。そして焼き鳥を食べつつ横目でクリスタルを見やる。隣にいるクリスタルは串だけ持っている状態だった。暇つぶしなのか、その串で軽く魔方陣を描いている。
「食べるの早いって! ちゃんとしっかり噛んで食べろ!」
「俺肉好きだし? あんなんじゃ俺の腹は満たされないぜ!」
「だからと言って早く食う必要はないだろ!」
「旨いんだもん! それに他のも食べたいし、仕方ないだろ?」
城のお膝元である城下町の大通りで交わされる、国の2トップのどうでもいい口論を見る住民達。その目は非常に温かいものである。小さな子供からも「こくおうさまだー!」と指をさして声をかけられている。それに答えつつも、結局二人は口論を続ける。そしてその最中、クリスタルの目にある店が飛び込む。
「___でもな、あ、あのコロッケ旨そうじゃん! 買おうぜ!」
「あのな、お前……。まぁ、コロッケ買うのはいいけど。店員さん、クリームコロッケ2つ下さい。」
店員は「あいよ!」と愛想よく返事をし、クリームコロッケを二人に手渡す。揚げたてのコロッケは紙越しでも熱いくらいだ。油の独特の香りに紛れて、クリームの良い匂いも混ざって食欲が増す。
「あっつ!! だがそれがいい!」
「熱いのはコロッケだから仕方ないだろ! 頂きまーす。」
二人がコロッケにかぶりつく。
しかし、二人は固まる。
「…………クリスタル。コロッケのクリーム部分、なんか味変な感じがしないか?」
「だよな。意図的な味付けではない、変な味だ。」
二人は顔を見合わせて、ルーグが店主に話しかける。
「店長さん、最近変わったことは無いか?」
「そういえ小麦農家が『農薬が変わった』と申しておりました。」
その発言に、クリスタルがルーグに話しかける。
「小麦農家がよく使う農薬、最近取引先の国が薬品変えたはずだ。覚えてるか?」
「クリスタルに代わって俺が取引したからな。あの時、相手に質問したんだよ。『なんで農薬の成分変えたのか』って。」
「で、答えは『安価な新薬開発に成功したから』だったか? 報告書ではそう書いてたよな、お前。」
「そうそう。その農薬のせいだと思う。」
「「また仕事が増えた。」」
クリスタルが「面倒な事を。」と言う傍で、ルーグも頭を悩ませつつ『やる事リスト』に『小麦農薬の開発or新しい取引先の開拓』とメモする。店主は戸惑いながら話しかける。
「陛下に閣下、自分は何か悪いことでもしたのでしょうか…?」
「いや、正直に言ってくれて助かるくらいだ。」
「国民が一番飯食うのに、これじゃあ国をまとめる者として失策だな。」
「そうなのですか? でも毎度思うのですが、貴族であられるお二方がどうして屋台の食事状況を把握しているのですか?」
「国をまとめる俺達だからこそ、国民と同じものを食うんだ。俺達が良いものばっかり食って、どうして国民は良いものが食えないんだ? おかしくないか?」
クリスタルが串で店主を指す。店主は「はぁ……。」とイマイチ納得していない。
ルーグがクリスタルに同意する。
「俺達は他の貴族にも、国民にも、俺達と同じだけ良い物食べて欲しいだけだ。屋台の食べ物でも安心して食べられるだけ、俺達が衛生面も視野に整備したし。今回は店長さんのおかけで『小麦農薬の改善』っていう課題が見えたから、今後はこれに取り組まないとな。」
「国民の立場から申させて頂きますと、お二人にこそ良い物を召し上がって頂きたいですがね。」
「気持ちは受け取ろう。」
「さて、クリスタル。小麦農薬の問題はまずいが、先に視察終わらせよう。その後どうするか考えよう。」
「だな。さて、次の区域に行くか。」
残りのコロッケを平らげ、クリスタルとルーグは店主に別れを告げる。
二人は街の中央に設備されている『レンガの柱の建物』に向かう。其処には外壁は少ないが内壁は10か所程設置されており、その中には『都市間ワープ装置』と呼ばれる魔方陣が配備されている。二人が乗ろうとしている魔方陣は、薄く青白く光っている。『オーガ区域行』と書かれた魔方陣に乗れば、二人は瞬く間に光の粒子の様に消えていった。
___________
次の視察場所は「オーガ」と称される事の多い種族が住む区域だ。街並みは石を基調とした作りをしており、何処か湿気を感じる。電気の明かりがあるものの、地区が森の中にあるせいで薄暗い印象を受ける。
ここの住民はある世界では「ゴブリン」、別の世界では「鬼」と言われる種である。クリスタルの国では、頭に角の生えた彼らを「オーガ」とまとめて称されている。そしてその凶暴性の高さから、国民の中でも恐れられている事の多い種族である。
クリスタルとルーグが街並みを見渡しつつ、おかしな事が無いかを見て回る。賑わいはいつも通りで異常はない。しかし小さな通りを歩いている途中、ルーグが「あ。」と呟く。クリスタルがルーグの見る方向を見れば、昼が過ぎても賑わうレストランがある。
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