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大学祭デート
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コンテストの授与式後、俺は控室に戻った。手には『ミス・瀬田大』の表彰状。頭にはお姫様が被るようなティアラを乗せて。
「やったじゃない、祥ちゃん! 流石私が見込んだ逸材よぉ!」
「へへ……、何だが恥ずかしいけれど。」
「しかも二位との差が倍以上あったらしいじゃない! 女の子になる才能あるわね!」
「うーん……? それ嬉しいかな……?」
そうやり取りをしていると、ノックがされる。
「啓です。入ってもいいですか?」
「兄ちゃん! いいよ!」
入って来たのは当然兄ちゃんだ。その手に幾つかお茶を持っている。
「お疲れ。喉乾いてるかと思って、屋台でハーブティー買って来た。ディレクターやスタッフさんもどうぞ。」
「ありがと!」
「あらぁ、気が利くわね!」
「ありがとうございます、啓くん。」
兄ちゃんからお茶を受け取り、一息つく。緊張がほぐれていくのが分かる。一息ついたところで、ディレクターがこんなことを言い出した。
「啓くん、祥ちゃん。このまま待って貰ってもいいかしら?」
「いいですけど、どうしてなんですか?」
「それはね、このままメイクアップした祥ちゃんと啓くんで撮影するためよ!」
「「……はい?」」
俺達の声が重なる。
第31話 大学祭デート
程なくして兄ちゃんの着替えとメイクが始まった。ディレクター曰く、コンセプトは『お祭りデート』。今の状況を利用して、俺達に疑似カップルをさせる魂胆だ。まぁ、実際仮で本当に付き合ってるんだけど。
兄ちゃんのメイクが終わる頃、撮影スタッフも到着した。ディレクターの指示が入る。
「二人とも! 今回はカップルになってもらうわ! 大学祭で思い切りデートして頂戴!」
「あの、大学に撮影許可とか取ってるんですか?」
「もっちろん! だから今回のメイクに協力したんだから!」
「はぁ……。わかりました。」
「とりあえず了解です!」
「じゃあ早速撮影行くわよ!」
俺達は控室を出て大学の敷地を歩く。普段よりたくさんの目線が俺達に向けられる。あちこちで屋台が並んでいるので、さっきは見なかった屋台やアトラクションを覗くことにした。
「兄ちゃん、ストラックアウトあるよ! やってみない?」
「まぁ、やってみるか。」
兄ちゃんが受付でボールを借り、的にボールを投げつける。
「兄ちゃん、頑張れー!」
「よっ……と、外れたか。」
「次行こ! 次!」
「それ……っ、今度は当たったか。」
「兄ちゃんナイスー!」
結果、10球中4球が命中したものの、景品獲得までは至らなかった。参加賞でシャボン玉セットを貰う。
「こんなの小学生以来に持ったぞ。」
「だよね。懐かしいなぁ……。」
そんな話をしている間にもカメラのフラッシュと指示が入る。
「二人とも、もう少しくっ付いて!」
「こうですか?」
「うん、オッケーよ!」
兄ちゃんに腰を引かれ、体を密着させられる。思わずドキドキしてしまう。
「祥……? お前また顔が赤いぞ? どうした?」
「え? わ、わかんない……。でも体調は平気だよ!」
「それならいいが……。」
そう言いながらも撮影は進んでいく。次は屋台巡りだ。さっき食べていないアメリカンドックを買い、二人で食べる。
「兄ちゃん、あーん!」
「別に食べさせなくてもいいんだぞ。」
「せっかくなんだから、いいじゃん! 今の俺達はカップルなんだよ?」
「……あー。」
観念して兄ちゃんが口を開ける。その口にアメリカンドックを入れる。兄ちゃんはそれに齧りついてもぐもぐさせている。
「どう? 美味しい?」
「……なかなかだな。」
「よかったぁ! じゃあ俺も食べる!」
「二人ともいいわよ! そのままデート続けて!」
俺達はディレクターの指示のもと、大学祭を回っていった。特設ステージでライブを観たり、サークルでの活動実績の一覧を見たり。二人で手を繋いで堂々とデートをした。周りからは『ミスコンおめでとう!』とか声をかけられたり、『サイン下さい!』とかファンサービスをねだられたりした。ファンサービスもそこそこに、俺達は撮影のため、というよりは二人でのデートを楽しむために歩き回った。
______
撮影と大学祭一日目が終わった。服は『そのまま貰っていって』とディレクターから貰ってしまった。どうすればいいのコレ。特に下着。兄ちゃんと二人で帰路に着き、自宅へ戻った。
「祥、お疲れ。」
「兄ちゃんもお疲れ! 急遽撮影とか、驚いたよね。」
「全くだ。」
俺はワンピースから着替えようとした。だけれども後ろのファスナーに手が届かない。
「兄ちゃん、ファスナー降ろすの手伝って!」
「……。」
「……兄ちゃん?」
兄ちゃんは顎に手を当て俺を見つめてる。手伝ってくれない兄ちゃんに、俺は首を傾げる。
「兄ちゃん、どうしたの?」
「なぁ、祥。」
その言葉と同時に、俺は兄ちゃんに押し倒された。
「今日はその恰好のままシないか?」
「……へ?」
「やったじゃない、祥ちゃん! 流石私が見込んだ逸材よぉ!」
「へへ……、何だが恥ずかしいけれど。」
「しかも二位との差が倍以上あったらしいじゃない! 女の子になる才能あるわね!」
「うーん……? それ嬉しいかな……?」
そうやり取りをしていると、ノックがされる。
「啓です。入ってもいいですか?」
「兄ちゃん! いいよ!」
入って来たのは当然兄ちゃんだ。その手に幾つかお茶を持っている。
「お疲れ。喉乾いてるかと思って、屋台でハーブティー買って来た。ディレクターやスタッフさんもどうぞ。」
「ありがと!」
「あらぁ、気が利くわね!」
「ありがとうございます、啓くん。」
兄ちゃんからお茶を受け取り、一息つく。緊張がほぐれていくのが分かる。一息ついたところで、ディレクターがこんなことを言い出した。
「啓くん、祥ちゃん。このまま待って貰ってもいいかしら?」
「いいですけど、どうしてなんですか?」
「それはね、このままメイクアップした祥ちゃんと啓くんで撮影するためよ!」
「「……はい?」」
俺達の声が重なる。
第31話 大学祭デート
程なくして兄ちゃんの着替えとメイクが始まった。ディレクター曰く、コンセプトは『お祭りデート』。今の状況を利用して、俺達に疑似カップルをさせる魂胆だ。まぁ、実際仮で本当に付き合ってるんだけど。
兄ちゃんのメイクが終わる頃、撮影スタッフも到着した。ディレクターの指示が入る。
「二人とも! 今回はカップルになってもらうわ! 大学祭で思い切りデートして頂戴!」
「あの、大学に撮影許可とか取ってるんですか?」
「もっちろん! だから今回のメイクに協力したんだから!」
「はぁ……。わかりました。」
「とりあえず了解です!」
「じゃあ早速撮影行くわよ!」
俺達は控室を出て大学の敷地を歩く。普段よりたくさんの目線が俺達に向けられる。あちこちで屋台が並んでいるので、さっきは見なかった屋台やアトラクションを覗くことにした。
「兄ちゃん、ストラックアウトあるよ! やってみない?」
「まぁ、やってみるか。」
兄ちゃんが受付でボールを借り、的にボールを投げつける。
「兄ちゃん、頑張れー!」
「よっ……と、外れたか。」
「次行こ! 次!」
「それ……っ、今度は当たったか。」
「兄ちゃんナイスー!」
結果、10球中4球が命中したものの、景品獲得までは至らなかった。参加賞でシャボン玉セットを貰う。
「こんなの小学生以来に持ったぞ。」
「だよね。懐かしいなぁ……。」
そんな話をしている間にもカメラのフラッシュと指示が入る。
「二人とも、もう少しくっ付いて!」
「こうですか?」
「うん、オッケーよ!」
兄ちゃんに腰を引かれ、体を密着させられる。思わずドキドキしてしまう。
「祥……? お前また顔が赤いぞ? どうした?」
「え? わ、わかんない……。でも体調は平気だよ!」
「それならいいが……。」
そう言いながらも撮影は進んでいく。次は屋台巡りだ。さっき食べていないアメリカンドックを買い、二人で食べる。
「兄ちゃん、あーん!」
「別に食べさせなくてもいいんだぞ。」
「せっかくなんだから、いいじゃん! 今の俺達はカップルなんだよ?」
「……あー。」
観念して兄ちゃんが口を開ける。その口にアメリカンドックを入れる。兄ちゃんはそれに齧りついてもぐもぐさせている。
「どう? 美味しい?」
「……なかなかだな。」
「よかったぁ! じゃあ俺も食べる!」
「二人ともいいわよ! そのままデート続けて!」
俺達はディレクターの指示のもと、大学祭を回っていった。特設ステージでライブを観たり、サークルでの活動実績の一覧を見たり。二人で手を繋いで堂々とデートをした。周りからは『ミスコンおめでとう!』とか声をかけられたり、『サイン下さい!』とかファンサービスをねだられたりした。ファンサービスもそこそこに、俺達は撮影のため、というよりは二人でのデートを楽しむために歩き回った。
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「兄ちゃんもお疲れ! 急遽撮影とか、驚いたよね。」
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「兄ちゃん、ファスナー降ろすの手伝って!」
「……。」
「……兄ちゃん?」
兄ちゃんは顎に手を当て俺を見つめてる。手伝ってくれない兄ちゃんに、俺は首を傾げる。
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