こんなスパダリが義弟のワケない

筒井

文字の大きさ
13 / 33

13.正夢

しおりを挟む
 待ち合わせ場所に行くと、昨日と同じように女性たちに囲まれる高城秀一の姿があった。昨日は、なんだか大変そうだな、なんて思ったけれど今日はそうはいかない。あの笑顔の下で、あいつが何を隠しているかわからないのだ。

「あ、お兄さん。……っ!」

 こちらに駆け寄ってきた高城秀一は、俺が手にしている傘を見るなり、ギクリと表情を変えた。

「……おまたせ」

「……いえ……」

「この傘について話すのは後にしておく。まずは内見に行こうぜ」

「はい……」

 すっかり消沈した面持ちの高城を連れて、俺たちは賃貸会社の用意した車に乗って二件の物件を見に行った。

 一件目は別の人が内見を希望しているというほうだ。

「3DKで収納もバッチリですし、コンロはIHなんですよ」

「あー、それじゃ人気あるはずですね」

 物件会社の人が勧める言葉を連ねる中、高城秀一は昨日と同じように室内の写真をスマホに収めていた。気まずいことがあってもやるべきことはやるのだから、全くソツのない奴だ。

 二件目は一件目に比べて難があった。2LDKということで、夫婦の部屋と兄弟の部屋しか取れないのだ。

(それ以外の設備は理想的なんだけど、こいつと同室っていうのはな……)

 昨日までの俺ならそれくらい気にしないと言えただろうが、今は疑心のほうが強い。

「それじゃあ、いいお返事を待ってます。特に一件目に関しては早めにご連絡くださいね!」

 賃貸会社の車で最寄り駅まで送ってもらった俺たちは、しばらく無言だった。

(俺からなんか言ったほうがいいのか? でもここはコイツが弁明するターンだろ)

 押し黙っていると、高城秀一は明大前までの道を指差した。

「これ以上遅くなるとお父さんにも母にも心配かけますから、とりあえず帰りながら話しましょう」

「……おう」

 雨上がりの道を二人、並んで歩く。ほどほどに暗くなった街路では、高城秀一が女性に囲まれることも無かった。

「で、どういうことだよ。返答次第ではこの傘へし折るぞ」

「ちょっ……それはやめて下さい。母からのプレゼントなんです」

 道理で高校生のものにしては立派な傘だ、と思いながら、無造作にそれを高城に返した。

「ありがとうございます」

「いいから答えろよ。わざわざ船越さんに頼んでまで、遠巻きに俺に接触したのはなんでなんだよ」

「…………」

 しばらくの沈黙のあと、ぽつりと高城秀一はある提案をした。

「じゃあ、僕からも質問してもいいですか」

「あ?」

「それに答えてくれたら、全部、正直に話しますから」

「……別に、いいけど」

 逆に質問されるとは思っていなかったので不思議に思いながら、何を聞かれるのかと身構えていると、高城秀一は触れられたくないことをずばり訊いた。

「お兄さん、ゲイ……ですよね」

「……っ!」

 あまりに驚いたものだから、思わず俺はつまずいていた。

「危な……っ!」

 とっさに高城秀一に支えられて、二人の身体が一気に近づく。

(なんでなんでなんでなんで。今まで誰にもバレなかったのに)

 ぐるぐると考え込む俺に、高城秀一は顔を近付けて追い討ちをかける。

「答えてください、お兄さん。……お兄さん、ゲイでしょう? 俺そういうの、わかるんですよね」

「……!」

 この間見た夢と全く同じ言葉に、俺は驚いて後ずさった。

「おっと。濡れますよ」

 しかし抱きかかえられた身体はいっそう距離が近づいただけだった。

(うわ、やば……。クソイケメンがこんな近くに……)

 今の状況も忘れて、つい高城秀一をまじまじと観察してしまう。高い身長に鍛えられた身体は、俺一人支えてもびくともしない。しかも甘い顔立ちが間近にある。

(さっきゲイだろって追求した男に、ここまで近づいてコイツは何がしたんだよ)

 あれこれと考えて何もできないでいると、不意に高城は瞼を閉じた。

(あ、これは)

――そして、俺たちの距離は徐々に近づき……。

「……っ!」
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

いい加減観念して結婚してください

彩根梨愛
BL
平凡なオメガが成り行きで決まった婚約解消予定のアルファに結婚を迫られる話 元々ショートショートでしたが、続編を書きましたので短編になりました。 2025/05/05時点でBL18位ありがとうございます。 作者自身驚いていますが、お楽しみ頂き光栄です。

弟と妹より劣る僕が自信家を演じてたら、部下にバレた件

ゆきりんご
BL
【重い感情を隠している年下敬語攻め×自己肯定感低い年上受け】 イリアスは職場で「優秀で顔もそこそこ良くて頼りになる上司」を演じているが、本当は自信がない。付き合っていた相手に振られることが続いてさらに自信をなくした。自棄になろうとしていたところを、気になっていた部下に止められて、成り行きで体の関係を持つことになり……?

【書籍化決定/完結】カメラ越しのシリウス イケメン俳優と俺が運命なんてありえない!

野原 耳子
BL
★執着溺愛系イケメン俳優α×平凡なカメラマンΩ 平凡なオメガである保(たもつ)は、ある日テレビで見たイケメン俳優が自分の『運命』だと気付くが、 どうせ結ばれない恋だと思って、速攻で諦めることにする。 数年後、テレビカメラマンとなった保は、生放送番組で運命である藍人(あいと)と初めて出会う。 きっと自分の存在に気付くことはないだろうと思っていたのに、 生放送中、藍人はカメラ越しに保を見据えて、こう言い放つ。 「やっと見つけた。もう絶対に逃がさない」 それから藍人は、混乱する保を囲い込もうと色々と動き始めて―― ★リブレ様にて紙書籍・電子書籍化が決定しました! 応援してくださった皆様のおかげです! 本当にありがとうございます! 発売日などの詳細は、決まり次第、作者のXや近況ボードなどでご報告させていただきますのでお待ちいただければ幸いです。

劣等アルファは最強王子から逃げられない

BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。 ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

帝に囲われていることなど知らない俺は今日も一人草を刈る。

志子
BL
ノリと勢いで書いたBL転生中華ファンタジー。 美形×平凡。 乱文失礼します。誤字脱字あったらすみません。 崖から落ちて顔に大傷を負い高熱で三日三晩魘された俺は前世を思い出した。どうやら農村の子どもに転生したようだ。 転生小説のようにチート能力で無双したり、前世の知識を使ってバンバン改革を起こしたり……なんてことはない。 そんな平々凡々の俺は今、帝の花園と呼ばれる後宮で下っ端として働いてる。 え? 男の俺が後宮に? って思ったろ? 実はこの後宮、ちょーーと変わっていて…‥。

幼馴染みのハイスペックαから離れようとしたら、Ωに転化するほどの愛を示されたβの話。

叶崎みお
BL
平凡なβに生まれた千秋には、顔も頭も運動神経もいいハイスペックなαの幼馴染みがいる。 幼馴染みというだけでその隣にいるのがいたたまれなくなり、距離をとろうとするのだが、完璧なαとして周りから期待を集める幼馴染みαは「失敗できないから練習に付き合って」と千秋を頼ってきた。 大事な幼馴染みの願いならと了承すれば、「まずキスの練習がしたい」と言い出して──。 幼馴染みαの執着により、βから転化し後天性Ωになる話です。両片想いのハピエンです。 他サイト様にも投稿しております。

処理中です...