脇役のオッサンが異世界無双

伊藤柳星張

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一章

こうして彼は彼女となった パート2

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 右手の痛みがひき、体調が落ち着いてきた頃、
またソウザの頭も冷静さを取り戻していた。

この体での生活のことをおぼろげながら思い出したからだ。
ソウザ=ネイム
それがこの体の名前。
そして認めたくはないがこのお人形のような体は今の自分自身だということ。

どうしてこんなことになってるのか。
ソウザが最初に疑ったのは敵からの攻撃だった。
以前、雲外鏡うんがいきょうという妖怪との戦いの時、過去に意識を持っていかれトラウマを掘り返された時がある。
あの時はたいそう難儀したが、幻覚の仕組みというものも身にしみて実感した。

つまりは妖怪が見せる幻覚というもには基本相手の心を暴き、相手の体験上の経験をもとに作ることしかできないのだ。

こんな荒唐無稽な中世まがいな幻覚を見せれる妖怪なぞ聞いたこともない。

幻覚という線を消し、さらにソウザは考える。
幻覚でないのなら、ここは地獄かなにかか。
一般的な地獄のイメージとは違うが、女性に体を変えられたという事が罰だというのなら、
それはそれで納得できる。
いやしかしだな。
いくら考えても答えは出るはずもなく時間だけが過ぎていった。

「ソウザ……? あなた本当に大丈夫なの?」
ひどい嘔吐を繰り返したあと、横にもならずただただ黙っているソウザに、
ヴィクトリアは心配そうに語りかけた。

「…………」

ソウザはこの二人にどう声をかけていいか迷った。
便宜上は自身の父と母だ。
愛情を持って育てられていたことも覚えている。

だがしかし、自身は鬼會衆の鉄廻のソウザだ。
彼らの子供ではないのだ。
急に自分の子供の中にこんながいるなんて言えるはずもない。

彼らに俺がどんな言葉をかける事ができるだろう。
ソウザが黙っている間も両親は沈痛な面持ちでこちらを見つめてくる。
恐らくなにかを喋らなければずっと横で付き添うつもりだろう。

これ以上黙っているわけにもいかない。
ソウザは言葉を選び、
「……ああ」
と短くそれだけ伝えた。

瞬間、大きな衝撃。

咄嗟のことで何が起きたかわからないソウザだったが、
自身にかかる体重と体温でウェイブが自分に抱きついてきた事を察した。
すぐに振りほどこうとしたが、彼の体が小刻みに震えていることに気づいたソウザは抵抗する事をやめた。
「ああ……!!ソウザ、ソウザ!! 本当に良かった……!!
お前に何かあったら、僕は……!!」
泣きじゃくるウェイブ。
「旦那様!! 病人に何をやっているのです!! 離れなさい!!」
セルベスの怒号が飛び、使用人三人がかりで引き剥がされる。

しかし引き剥がされてもなお、こちらに向かう事をやめないウェイブ。
その様を見てさらに苛烈さをますセルベス。
二人を止めようとする使用人達。
あらあらどうしましょうとオロオロしはじめるヴィクトリア。
朝から起こされて眠いためこんな喧騒の中でもウトウトし始めたケンペ医師。

全く自分のことじゃないのに騒ぎ始める彼らをみて、
なんだか今悩んでいる事が大したことのないように思えてきたソウザは、
「はっ……」
と小さく笑った。

その笑い声にを聞いたその場の全員がソウザに目をやった。
そうしてお互いの顔を除いたあと、先ほどの喧騒が嘘のように大人しくなった。

「すまないソウザ、お前が大変な時に無駄に騒いでしまって」
ウェイブがバツ悪そうにソウザに話しかける。
「お嬢様、わたくしも心からお詫びさせていただきます。
このセルベス、一生の恥として今日のことは心にとどめておきます」
セルベスは病人の横で大声で騒ぎ立てたことを酷く悔やんでいるようだった。
ごめんなさいお嬢様とあやまる使用人達。
「本当にごめんなさいソウザ、もう本当に体は大丈夫なの?」
申し訳なさと慰りいたわりを見せるヴィクトリア。
そして完全に寝入ったケンペ医師。

そんな彼らを見て、ソウザは一旦考えるのをやめた。
仕方ない。
今この瞬間だけは鉄廻のソウザではなく、ソウザ=ネイムとして彼らに接しよう。
それが今まで育ててもらい、
そして善良な彼らに報いる自分なりの恩返しであるのだから。


ソウザは顔をあげ、彼らの顔を視界に入れながら、
「オレは大丈夫だ、心配かけてすまねぇなお前ら」
と頭を下げた。

これでいいんだ、この場はこれで丸く収まり、
ソウザ今日は疲れたろうゆっくりお休みと、みんながそう告げながらこの部屋から去っていく。
俺はベッドで横になりながら、これからのことを考える。
完璧な未来図を頭に描き、ソウザは頭を下げながら声がかかるのを待っていた。

しかしいくら待とうが両親からも、誰からも声はかからない。
ソウザは若干訝しみながら顔をあげ、彼らの顔を再度視界に入れた際、
初めて重大な過ちに気づいた。

「ソウザ……君、そんな口汚かったかい?」

ウェイブの震える声を聞きながら、
ソウザは冷や汗を止める事ができなかった。
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