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一章
【悲報】ヤッてるシーンはありません【朗報】次の話にはあります(仮タイトル カシラ復帰)
目を開けると、やっぱり夢じゃなかった。俺はヤクザの事務所に監禁されているのだ。
しかし、今日は昨日と違い、体の痛みが引いていた。
逃げなきゃ。
そう思い、俺は夢中で立ち上がり、本棚をどかして、組長室のドアをそっと開けた。そして一目散に入口の方へ走って行ったのだが、角を曲がる際に、入口にある、ソファーに座っていたヤクザと目が合った。
終わった。そう思っていると、ヤクザが隣をぽんぽんと叩く。隣に座れってことか。しぶしぶ俺が近づいていくと、ヤクザが話していた人と目が合う。
俺はその人を知っていた。市長だった。名前は確か、大宮海。かっこよくは無いが、まだ若いのに年期があり、(老け顔のせいもある。)面白くて、市民に親しまれている市長だった。なんでそんな人が、ヤクザなんかと?!
と思っていると、あっちも俺の方をみて、
「君は、行方不明の、とうまくんじゃないか?!」
と言った。
ああそうか、俺は家に帰ってないから、行方不明ってことになってるのか。部活の後輩や、家族に心配をかけてるんだろうな、と思う。早く帰りたい。
俺は組長の隣に座ったときに、えんさんが3人分のお茶とお菓子(恐らく手作り)を持ってきた。
そして俺の方をみて、あれ、起きたん?みたいな表情をした。えんさん、めちゃくちゃ顔に感情がでやすいよな。そんなんでヤクザやっていけるんだろうか、と心配になる。その一方、俺の隣のヤクザは、いつものように、笑ってはいるが、目は笑っていない。何を考えているんだろうか。
そして、俺の前には2人の男と座っていた。1人は、顔色の悪く、落ち着きのない、この市の市長。2人目は、こちらは見たことがないが、長髪でメガネをかけた、長身の男だ。ヤクザと同じでニコニコしてるのがデフォルトのようだ。
誰だろうと思っていると、俺の分のお茶とお菓子を持って来てくれたえんさんが、『カシラ』と口パクで教えてくれた。
ああ、ホストにの男に刺された人か。ホストのことを思い出し、顔をしかめる。知らない人だったとはいえ、人が殺されたところを思い出すと、気分が悪かった。
「それで、大宮さん。お話の続きを伺ってもよろしいですか?」
「……はい。」
ヤクザが言うと、市長が口を開いた。要約するとこうだ。
まず、市長には学生時代から知り合いの、麻雀屋の店主が居たらしい。そして、市長は暇さえあれば、その麻雀屋に顔を出して居たらしい。
が、市長は昨日、その麻雀屋の店主の秘密を知ってしまった。彼は、未成年の女の子たちにクスリを売り、さらにクスリを求めてきた女の子たちに売春を強要し、女の子たちが使い物にならなくなったら、臓器を売って、死体をマニアに売っていたらしい。
俺は、思わず顔をしかめる。が、ほかの3人は、顔を変えずに話を聞いていた。
「しかも、それを私が彼に問い詰めると、『無駄がなくて、今の時代にピッタリの商売だろ。お前、市長なんだから人脈もあるだろう。女が1人居なくなったくらいで、誰も気づかないさ。一緒に儲けようぜ。』と、笑顔で言ってきたんです。私はアイツが許せませんでした。だからつい、頭に血が上って……」
市長はそれきり、黙って下を向いてしまった。
黙ってしまった市長の代わりに、カシラが言う。
「ゴルフのクラブで殴って殺しちゃったんだって。海は妻も子供も居るし、捕まれないじゃん?だからトランクに死体とクラブを入れて、俺に電話をかけてきたの。」
ね?と市長に尋ねる。こくっと頷く市長。
「そんで、そのトランクがそれ。」
カシラが机の上の黒いトランクを指さしていう。
と、タイミングを見計らったように、入口から女の人が入ってきた。
「おはようございます…」
気だるそうに女の人が言う。えんさんのほうを見ると、『死体処理の人』と言っていた。
「これを回収すればいいの?」
「ああ、あい。よろしく頼む。」
ヤクザが言う。と、女の人…あいさんが、トランクを持ち上げた。が、直ぐに下ろした。
「重い。」
そう言って、「えん、持って」と吐き捨てて、入口に向かって歩いていった。
「ちょ、待てよ。」
えんさんがトランクを持ってあいさんを追いかけて行った。「ははっ」カシラが笑って、市長が苦笑いをした。
コホン、とヤクザが咳をした。市長が組長の方を向く。
「これで、あなたが例え疑われても、捕まる可能性は九分九厘ありません。」
市長がホッとして、胸を投げ下ろす。「よかったね、海。」とカシラが市長に言った。「が、」ヤクザが続ける。
「あなたがやったことは消える訳ではありません。むしろ、私たちのようなものに借りをつくってしまった。」
一拍置いて、ヤクザが続けた。
「その意味を、しっかり考えてください。」
ヤクザが、目を細める。ゴクリと市長が唾を飲み込んだ。
組長、怖ー。市長可哀想だな。てか、普通に警察に言って事情話したら、世間は許してくれると思うんだけど。まぁ、その後政治の世界で生きていくことは難しいだろうけど。難しいな~。
さっき下で死体を見て来たけど、なんか悪そうな顔してたし。大体、女の子を殺したり、酷い目に遭わせている時点で、殺されても文句は言えないだろう。
俺が市長だったら、市長と同じで、そいつを殺してただろう。そして、なんの罪悪感も感じずにあいちゃんに連絡していただろう。
人にやるやつは、やられても文句は言えない。それはもちろん、組長やカシラ、俺にも言えることだが。
そんなことをボーッと考えていると、組長ととうまにカシラがウザ絡みしていた。
「え~、組長、また違う男と居るし!!ありえないわ~。ねぇ、海。」
「お前には言われたくないな。」
「はぁ。」
「……。」
「てか、やっぱえんの料理がいちばん美味いわ。」
「それは、本当に美味しいです。」
是非、妻にも持ち帰ってあげたいな。そんなことを言っている市長をみて、ますます可哀想だなと思う。優しい人ほど、人を殺したことに耐えきれなくなりやすいからな、と思った。
「この愛妻家野郎が。妬けるな~。」
カシラがそう言って、幸せそうに市長が笑う。たぶん、ここに来る前に、2人はバーにでも行って話してきたんだろう。
この人が話し相手になってるなら、市長は大丈夫だろう。そんな気がした。
「久しぶり、きょうや。寂しかったよ。」
「昨日ぶりだな、あきら。暑苦しいから離れてくれ。」
ちぇっ、と言いながら、カシラが組長から離れる。
「傷はもう大丈夫なのか?」
「いーや。ゆうと(闇医者)はまだ病院にいろって言ってたけど、もう治ってるから。」
「本調子では無いのに、私のためにありがとうございます。」
市長が礼をすると、カシラが「そうゆうの、いいから~」と市長に言う。
「では、私は失礼します。本当にありがとうございました。」
市長が帰ろうとすると、「見送るよ~。」とカシラが市長に着いて行った。ちゃっかり腰に手をあてている。
やっぱ狙ってたのか。カシラは優しいが、性欲が強く、しかも、狙った獲物は絶対に逃がさない。
あの市長の性格を考えれば、カシラに言い寄られたら断れないだろう。つくづく可哀想な人だ。
と、こっちにも可哀想な人が居た。
「今日はいける?」
「いえ、きょうやさん。俺、まだ腰が痛くて。」
「さっき走ってたのに?」
「……。」
こちらも、狙った獲物は逃がさない、というか、獲物には逃げるという選択肢がない。
可哀想に、きょうやも逃げようとしたところを壁に追い詰められ、こちらに助けを求めている。
気付かないふりをして、俺は考える。俺も人並みに性欲は強いが、上司2人は、めちゃくちゃ強い。
誰かが強さと性欲は比例するとか言ってたが、確かにその通りだ。
「えん、組長室に組織名かいてある資料があるからさ、その組織の情報探ってきてよ。」
組長に言われ、「分かりました。」と答える。組長の前に、しゃがみこんで何かしているきょうやが見えたが、見えないフリをした。
はぁ。
今日も一日が始まった。
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