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できてしまったシミ
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シャリアータの神殿前広場は大いに沸いていた。
戦争の勝利、自分達の郷土シャリアータの独立、神は紛れもなく傍で自分達を守ってくれており、その神々が自分達の目の前で結ばれたという慶事。
彼らは、苦難を乗り越えた先の、歓喜に酔っていた。
この時代に生き、歴史的に重要な場面に立ち会えた僥倖を噛みしめていた。
民衆は、新たな道への不安よりも、希望とやる気に満ちている。
神々と王の元に、自分達もこの新たな国を守り盛り上げていくのだ、と誰もが決意を抱いて、新たな王と神々を見上げていた。
その民衆の喜びと期待をルイドートは受け止め、次の演目に移るために声を上げた。
「それでは、今回の戦争を仕掛けた張本人、戦争犯罪者達の処遇を発表する!」
民衆は、狂気の如く歓声を上げた。
封建主義の時代、民衆が最も盛り上がったイベントの一つ。
『断罪と処刑』が始まろうとしていた。
「トールノア王国王太子フッツメーンと近衛騎士達をこれへ!」
神殿の中から、オーガニックとハビット公国の騎士達でも高位の者達が、ボロボロの若者を先頭に、男達を連れてくる。
元は艶やかに整えられていたであろう艶やかな若者の黒髪は、土まみれでボサボサになり、豪奢な甲冑は取り払われ、下着すらも身につけさせてもらえず、全裸で鎖に繋がれている。
それが、王太子フッツメーンの今の姿であった。
近衛騎士である他の男達も、似たような有り様だ。
民衆は、フッツメーンの姿を見て憤ったが、ふと目線を下に向けるた瞬間、驚愕に目を見開き、並んでいる他の全裸男達と見比べた。
ざわ……ざわざわ……
ざわわ……ざわわ……ざわわ…………ちっさ……
ざわざわ……
ええ……ざわわ……
民衆の目は変わらず怒気を孕んでいたが、何か哀れみのような嘲りのような、違う感情も追加されたようだ。
フッツメーンとて、恐らくこれまでも、その小さな問題にはコンプレックスに感じていたのだろう。
民衆に向かって、己れを正当化し始めた。
「こ、これこそが、勇者の末裔の証だぞ!!我が祖先である勇者の身体的特徴は、黒髪という他に、まわりに比べると全てが小さかったそうだ!私が勇者の末裔であり、その血を濃く受け継いだ証である!くそぅっ、そんな目で見るのは、やめろ!!」
本当にやめて差し上げろ。
大事なのは膨張率であり、ドバイでヘリコプターを飛ばす有名な某美容整形外科医師も、「早くて小さい方が動物としては優秀」と仰っているのだ。
体のでかい外国人と比べ、ついコンプレックスを持ってしまいがちな日本人の男性諸君は、もっと自信を持ってもいいのである。(応援)
さて、はからずもフッツメーンのコンプレックスを刺激してしまうことになったルイドートは、片手を上げて民衆の目をフッツメーンの下半身から自分の方へ移行させた。
そして、宣う。
「私は、先祖である勇者の血が薄い!!」
何の宣言か。
ルイドートは続けた。
「それでは、この者達への断罪を行う!」
うおおおおおお!!!
盛り上がる民衆を、ルイドートは片手を上げて黙らせる。
「この者達は、我が領地に不当に侵攻した。そうして、我々の命を危険にさらし、土地と財産を略奪しようとした!そうして、実際にその被害に合い、犠牲者も出ている。まさに、非道な強盗殺人の諸行である!その罪で、彼らは裁かれなければならない!」
うおおおおおお!!!
殺せ!処刑!殺せ!処刑!
民衆が殺気立つ。
その明確な殺意のうねりは、フッツメーン達を青ざめさせる。
ルイドートは、民衆に語りかけた。
「盗賊は死刑が定法。だが、彼らの罪は明白とはいえ、今の状態は戦争捕虜である。それに加え、我々の国はまだ興ったばかり。彼らを処刑したいのは山々であるが、まずは王国への交渉材料として生かしておく」
民衆の目線がルイドートに向く。
フッツメーン達に向けていた怒りが、今度は新たな王への不満となりかねぬ雰囲気だ。
集団心理に今の民は踊らされている、とルイドートは冷静に判断していた。
民の感情のコントロールに失敗すれば、民は自分を王と認めず、国内が荒れかねない。
そのためには、最初が肝心なのだ。まずは、民を御す。王の言葉は絶対であるが、民の感情をないがしろにしてはならない。王として、民と新たに関係をスタートさせる大事なタイミングが今なのだ。
ルイドートは王の専制と共に、公国民への仁恕を示すことにした。
「だが、私は王として、この地で彼らを安穏と過ごさせはしない。王国との交渉が済むまでの間、彼らには罰を受け続けてもらう」
民衆は、ルイドートがフッツメーン達に何をさせる気なのかと、次の言葉を待った。
「犯罪奴隷として隷紋を入れ、ギルドに貸し与える。危害を加えられぬよう、防御と通報の術を組み込む。もし彼らに危害を加えれば、罰を受けることになろうが、ギルドに依頼を出せば無償で思う存分こき使えるぞ」
つまりは、危害を加えぬなら、意趣返しも可能ということだ。
ギルドに『話し相手』を募集して、言いたいことを直接ぶつけることも。
民衆は、ルイドートの意図を理解した。
憎い侵略者をむざむざ帰さねばならないのかと落胆していた多くの民は、新たな王ルイドートの配慮に、信頼を厚くした。
そんな民に、ルイドートは言い放つ。
「ああ、できるなら、無意味な依頼よりも、シャリアータに貢献するような依頼を頼むぞ!」
このあたりが、ルイドートである。彼は基本的に、無駄が嫌いな文官肌である。
しかし、これに異を唱えたのは、もちろん罰を受けるフッツメーンら王国軍の者達だ。
「この私に、奴隷になれというのか!?」
「我らは捕虜だぞ!それも、そこらの木っ端騎士とは違う。貴族位の騎士だ!丁重に扱われこそすれ、このような屈辱を受ける謂れはない!」
「平民の奴隷になるくらいなら、死んだ方がマシだ!」
口々に不服を申し立てる。
ルイドートは憎々しげに吐き捨てた。
「お前ら捕虜がどれだけいると思っているんだ!後方にいた騎士や兵士達は逃げたが、それでもお前達だけで五百はいるんだ!牢は満杯、新しく収容所を造らねばならん、食い物もいる!せめて自分達の食い扶持くらい、自分達で稼がせるぞ、私は!平民上がりの者達なら必要とあれば、土木作業も畑仕事も自分達の食事の用意もできるだろうが、お前達のような貴族位の者達は奴隷にでもせねば、働かんだろうが!まだ、防御の術をかけてやるだけ、ありがたいと思え!」
先ほど、フッツメーン達の処遇を『公国民への仁恕』などと言ったが、訂正しよう。
半分は、こちらが本音であった。
王国軍の補給物資はあらかた押収したが、それでもいつ交渉が終わるかわからない。
捕虜のために、シャリアータが負担せねばならない部分は、できるだけ切り詰めていきたいのだ。
そこへ、騎士達とは違い、色々ボディに自信のないフッツメーンは、ルイドートに食ってかかった。
「防御の術といっても、耐久限界があるだろう!隷紋で反撃を封じられたまま、破られぬほどの攻撃を受けたらどうするのだ!」
「一応、仕事の指導を兼ねて監視をつける。不本意でも、その者が守ってくれようよ」
「相手が複数なら、守りきれんではないか!」
こいつ、すごく……、面倒くさいです……。
そんな思いでルイドートはフッツメーンを見た。
いくら元は身内とはいえ、いっそ殺した方が、すっきりするだろう。
だが、駒として使えるうちは、生かしておかなければ後で後悔するかもしれない。
だったら何もさせなければよいのかもしれないが、皆が働いている間に、一番の元凶であるこのフッツメーンが、ニートしているのが許せない。
そういうわけで、ルイドートの中で、フッツメーンの奴隷化は決定事項で揺るがない。
この問題に、助け船を出したのは、ドロンズである。
信者ルイドートが困っているので、少々手助けしてやろうと、仏心ならぬ神心を出したのだ。
「護衛がいるなら、わしが出してやるぞ?」
フッツメーンは、怪訝な顔でドロンズを見やる。
「邪神め!私を篭絡しようというのか。私はお前を信奉なぞせんぞ!」
ドロンズは、言い返した。
「誰が邪神じゃ!だいいち、ルイドートが困っているようだったから手助けしてやろうとしただけじゃ。わしを邪神呼ばわりする信者なぞ、こちらから願い下げよ!」
「お前が邪神でなければ、なんだというのだ!あの大量の悪しき魔物を産んだのは、お前ではないか!」
「正確には、わしが産んだんじゃないわ!産んだのは、うちの眷属のダンジョンコアじゃし、そのダンジョンコアから産まれた魔物は、わしの言うことをよく聞く、良い魔物じゃ!うちの子を悪し様に言うな!」
「「「「「あれが、良い魔物であるかあっ!!!」」」」」
同じホオークの惨劇を経験した公国と王国、両国の騎士の心は一つになった。
ここで、フッツメーンは思いついた。
(この邪神が魔物を産んだ事実は、シャリアータ側も認識している。このことをうまく使えば……)
フッツメーンとて、幼い頃から為政者の子として、民の前に立ってきた。
平民など彼にとってとるに足らぬ存在であったが、民の心は打ち出す言葉の印象一つで変わると知っていた。
(民は愚かだ。今は勢いでルイドートについているが、少し小石を投げてやれば、すぐに揺らぎ出す。民がルイドートに不信感を持てば、まだ巻き返せるかもしれぬ)
フッツメーンは、民衆に向かって語りかけた。
「シャリアータの民よ!勇敢にも、我が王国軍に真正面から対峙した強き民よ!お前達に問いたい。ここにいる神が多くの魔物を産んだが、それをどう思っているのか」
民衆は戸惑う。
神は自分達のために、大量の魔物を産んで王国軍を撃退した。
そう、大量の魔物を産んで。
それは確かに、事実なのだ。
「賢きシャリアータの民よ!魔物を産み出す魔物の神。我々はこれまでそれを、何と呼んできた?どう思ってきた?」
魔物を産み出す魔物の守護神、魔素の混沌から生まれし神、それをこの世界の人々は、『邪神』と呼んで、忌み嫌ってきた。
邪神は人間を滅ぼす神である。
これまで、シャリアータの人々はドロンズやクリソックスと接してきて、彼らに『邪神』を思わせるものが何もなかったがために、オーガニックを連れて帰った時も、ダンジョンコアを眷属にした時も、ダンジョンコアの産み出す魔物を操っていた時も、盲目的に彼らを信じていた。
しかし、よく考えてみれば、事実として、魔物と心を通わせ過ぎている。
フッツメーンは人々の心に、一滴、疑念の色を落とした。
人々の信仰が、ぼんやりと揺らぐ。
ドロンズとクリソックスの顔に、目立たぬ程度のシミがぽつんと生まれる。
それは人々の心に落とされた疑念の色に似て、薄黒く主張していた。
戦争の勝利、自分達の郷土シャリアータの独立、神は紛れもなく傍で自分達を守ってくれており、その神々が自分達の目の前で結ばれたという慶事。
彼らは、苦難を乗り越えた先の、歓喜に酔っていた。
この時代に生き、歴史的に重要な場面に立ち会えた僥倖を噛みしめていた。
民衆は、新たな道への不安よりも、希望とやる気に満ちている。
神々と王の元に、自分達もこの新たな国を守り盛り上げていくのだ、と誰もが決意を抱いて、新たな王と神々を見上げていた。
その民衆の喜びと期待をルイドートは受け止め、次の演目に移るために声を上げた。
「それでは、今回の戦争を仕掛けた張本人、戦争犯罪者達の処遇を発表する!」
民衆は、狂気の如く歓声を上げた。
封建主義の時代、民衆が最も盛り上がったイベントの一つ。
『断罪と処刑』が始まろうとしていた。
「トールノア王国王太子フッツメーンと近衛騎士達をこれへ!」
神殿の中から、オーガニックとハビット公国の騎士達でも高位の者達が、ボロボロの若者を先頭に、男達を連れてくる。
元は艶やかに整えられていたであろう艶やかな若者の黒髪は、土まみれでボサボサになり、豪奢な甲冑は取り払われ、下着すらも身につけさせてもらえず、全裸で鎖に繋がれている。
それが、王太子フッツメーンの今の姿であった。
近衛騎士である他の男達も、似たような有り様だ。
民衆は、フッツメーンの姿を見て憤ったが、ふと目線を下に向けるた瞬間、驚愕に目を見開き、並んでいる他の全裸男達と見比べた。
ざわ……ざわざわ……
ざわわ……ざわわ……ざわわ…………ちっさ……
ざわざわ……
ええ……ざわわ……
民衆の目は変わらず怒気を孕んでいたが、何か哀れみのような嘲りのような、違う感情も追加されたようだ。
フッツメーンとて、恐らくこれまでも、その小さな問題にはコンプレックスに感じていたのだろう。
民衆に向かって、己れを正当化し始めた。
「こ、これこそが、勇者の末裔の証だぞ!!我が祖先である勇者の身体的特徴は、黒髪という他に、まわりに比べると全てが小さかったそうだ!私が勇者の末裔であり、その血を濃く受け継いだ証である!くそぅっ、そんな目で見るのは、やめろ!!」
本当にやめて差し上げろ。
大事なのは膨張率であり、ドバイでヘリコプターを飛ばす有名な某美容整形外科医師も、「早くて小さい方が動物としては優秀」と仰っているのだ。
体のでかい外国人と比べ、ついコンプレックスを持ってしまいがちな日本人の男性諸君は、もっと自信を持ってもいいのである。(応援)
さて、はからずもフッツメーンのコンプレックスを刺激してしまうことになったルイドートは、片手を上げて民衆の目をフッツメーンの下半身から自分の方へ移行させた。
そして、宣う。
「私は、先祖である勇者の血が薄い!!」
何の宣言か。
ルイドートは続けた。
「それでは、この者達への断罪を行う!」
うおおおおおお!!!
盛り上がる民衆を、ルイドートは片手を上げて黙らせる。
「この者達は、我が領地に不当に侵攻した。そうして、我々の命を危険にさらし、土地と財産を略奪しようとした!そうして、実際にその被害に合い、犠牲者も出ている。まさに、非道な強盗殺人の諸行である!その罪で、彼らは裁かれなければならない!」
うおおおおおお!!!
殺せ!処刑!殺せ!処刑!
民衆が殺気立つ。
その明確な殺意のうねりは、フッツメーン達を青ざめさせる。
ルイドートは、民衆に語りかけた。
「盗賊は死刑が定法。だが、彼らの罪は明白とはいえ、今の状態は戦争捕虜である。それに加え、我々の国はまだ興ったばかり。彼らを処刑したいのは山々であるが、まずは王国への交渉材料として生かしておく」
民衆の目線がルイドートに向く。
フッツメーン達に向けていた怒りが、今度は新たな王への不満となりかねぬ雰囲気だ。
集団心理に今の民は踊らされている、とルイドートは冷静に判断していた。
民の感情のコントロールに失敗すれば、民は自分を王と認めず、国内が荒れかねない。
そのためには、最初が肝心なのだ。まずは、民を御す。王の言葉は絶対であるが、民の感情をないがしろにしてはならない。王として、民と新たに関係をスタートさせる大事なタイミングが今なのだ。
ルイドートは王の専制と共に、公国民への仁恕を示すことにした。
「だが、私は王として、この地で彼らを安穏と過ごさせはしない。王国との交渉が済むまでの間、彼らには罰を受け続けてもらう」
民衆は、ルイドートがフッツメーン達に何をさせる気なのかと、次の言葉を待った。
「犯罪奴隷として隷紋を入れ、ギルドに貸し与える。危害を加えられぬよう、防御と通報の術を組み込む。もし彼らに危害を加えれば、罰を受けることになろうが、ギルドに依頼を出せば無償で思う存分こき使えるぞ」
つまりは、危害を加えぬなら、意趣返しも可能ということだ。
ギルドに『話し相手』を募集して、言いたいことを直接ぶつけることも。
民衆は、ルイドートの意図を理解した。
憎い侵略者をむざむざ帰さねばならないのかと落胆していた多くの民は、新たな王ルイドートの配慮に、信頼を厚くした。
そんな民に、ルイドートは言い放つ。
「ああ、できるなら、無意味な依頼よりも、シャリアータに貢献するような依頼を頼むぞ!」
このあたりが、ルイドートである。彼は基本的に、無駄が嫌いな文官肌である。
しかし、これに異を唱えたのは、もちろん罰を受けるフッツメーンら王国軍の者達だ。
「この私に、奴隷になれというのか!?」
「我らは捕虜だぞ!それも、そこらの木っ端騎士とは違う。貴族位の騎士だ!丁重に扱われこそすれ、このような屈辱を受ける謂れはない!」
「平民の奴隷になるくらいなら、死んだ方がマシだ!」
口々に不服を申し立てる。
ルイドートは憎々しげに吐き捨てた。
「お前ら捕虜がどれだけいると思っているんだ!後方にいた騎士や兵士達は逃げたが、それでもお前達だけで五百はいるんだ!牢は満杯、新しく収容所を造らねばならん、食い物もいる!せめて自分達の食い扶持くらい、自分達で稼がせるぞ、私は!平民上がりの者達なら必要とあれば、土木作業も畑仕事も自分達の食事の用意もできるだろうが、お前達のような貴族位の者達は奴隷にでもせねば、働かんだろうが!まだ、防御の術をかけてやるだけ、ありがたいと思え!」
先ほど、フッツメーン達の処遇を『公国民への仁恕』などと言ったが、訂正しよう。
半分は、こちらが本音であった。
王国軍の補給物資はあらかた押収したが、それでもいつ交渉が終わるかわからない。
捕虜のために、シャリアータが負担せねばならない部分は、できるだけ切り詰めていきたいのだ。
そこへ、騎士達とは違い、色々ボディに自信のないフッツメーンは、ルイドートに食ってかかった。
「防御の術といっても、耐久限界があるだろう!隷紋で反撃を封じられたまま、破られぬほどの攻撃を受けたらどうするのだ!」
「一応、仕事の指導を兼ねて監視をつける。不本意でも、その者が守ってくれようよ」
「相手が複数なら、守りきれんではないか!」
こいつ、すごく……、面倒くさいです……。
そんな思いでルイドートはフッツメーンを見た。
いくら元は身内とはいえ、いっそ殺した方が、すっきりするだろう。
だが、駒として使えるうちは、生かしておかなければ後で後悔するかもしれない。
だったら何もさせなければよいのかもしれないが、皆が働いている間に、一番の元凶であるこのフッツメーンが、ニートしているのが許せない。
そういうわけで、ルイドートの中で、フッツメーンの奴隷化は決定事項で揺るがない。
この問題に、助け船を出したのは、ドロンズである。
信者ルイドートが困っているので、少々手助けしてやろうと、仏心ならぬ神心を出したのだ。
「護衛がいるなら、わしが出してやるぞ?」
フッツメーンは、怪訝な顔でドロンズを見やる。
「邪神め!私を篭絡しようというのか。私はお前を信奉なぞせんぞ!」
ドロンズは、言い返した。
「誰が邪神じゃ!だいいち、ルイドートが困っているようだったから手助けしてやろうとしただけじゃ。わしを邪神呼ばわりする信者なぞ、こちらから願い下げよ!」
「お前が邪神でなければ、なんだというのだ!あの大量の悪しき魔物を産んだのは、お前ではないか!」
「正確には、わしが産んだんじゃないわ!産んだのは、うちの眷属のダンジョンコアじゃし、そのダンジョンコアから産まれた魔物は、わしの言うことをよく聞く、良い魔物じゃ!うちの子を悪し様に言うな!」
「「「「「あれが、良い魔物であるかあっ!!!」」」」」
同じホオークの惨劇を経験した公国と王国、両国の騎士の心は一つになった。
ここで、フッツメーンは思いついた。
(この邪神が魔物を産んだ事実は、シャリアータ側も認識している。このことをうまく使えば……)
フッツメーンとて、幼い頃から為政者の子として、民の前に立ってきた。
平民など彼にとってとるに足らぬ存在であったが、民の心は打ち出す言葉の印象一つで変わると知っていた。
(民は愚かだ。今は勢いでルイドートについているが、少し小石を投げてやれば、すぐに揺らぎ出す。民がルイドートに不信感を持てば、まだ巻き返せるかもしれぬ)
フッツメーンは、民衆に向かって語りかけた。
「シャリアータの民よ!勇敢にも、我が王国軍に真正面から対峙した強き民よ!お前達に問いたい。ここにいる神が多くの魔物を産んだが、それをどう思っているのか」
民衆は戸惑う。
神は自分達のために、大量の魔物を産んで王国軍を撃退した。
そう、大量の魔物を産んで。
それは確かに、事実なのだ。
「賢きシャリアータの民よ!魔物を産み出す魔物の神。我々はこれまでそれを、何と呼んできた?どう思ってきた?」
魔物を産み出す魔物の守護神、魔素の混沌から生まれし神、それをこの世界の人々は、『邪神』と呼んで、忌み嫌ってきた。
邪神は人間を滅ぼす神である。
これまで、シャリアータの人々はドロンズやクリソックスと接してきて、彼らに『邪神』を思わせるものが何もなかったがために、オーガニックを連れて帰った時も、ダンジョンコアを眷属にした時も、ダンジョンコアの産み出す魔物を操っていた時も、盲目的に彼らを信じていた。
しかし、よく考えてみれば、事実として、魔物と心を通わせ過ぎている。
フッツメーンは人々の心に、一滴、疑念の色を落とした。
人々の信仰が、ぼんやりと揺らぐ。
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ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
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