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ハビット公国樹立のめでたい日に
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※すみません、今さら気付いたんですが、タイトルが間違ってました。
シャリアータ公国→ハビット公国に修正しています。
ハビット公国樹立宣言の日。
この日、『オーベラス』の長い歴史の中で、初めて異界の神の宗教が国教となった日でもある。
つまりその日は、ハビット領にとって、トールノア王国からの独立記念日でもあり、この世界の神よりも異界の神を選択するという、宗教的にも新たな一歩を踏み出した日でもあった。
その神が、『泥団子』の神と『クリスマスプレゼント』の神という意味不明なものを司る神であったため、後世の歴史家達は、当時のシャリアータの民達の心境について、まともではなかったと考える者は多い。
それについては、全くその通りである。
シャリアータにある泥ソックス神殿。
その入り口、階段状になった基壇の最上段に、ルイドート・ハビットは立っていた。
トールノア王国軍の侵攻を食い止め、勝利を手にしたハビット公爵軍は、王国軍の生き残りを捕縛した後、その勝利とシャリアータの今後について周知するために、領民達を集められるだけ集めたのである。
そのため、神殿の前の大きな広場は民衆で埋め尽くされ、異様な熱気を放っていた。
神殿の最上段には、ルイドートの他に、ルイドートの妻ノーラと嫡男のミシャ、騎士団団長のタローウや護衛の騎士達、そしてもちろん、神殿の主であるドロンズとクリソックスの姿もあった。
ルイドートは身体強化で声帯と腹筋を強化し、民に呼びかけた。
「我が領の民達よ!我々は、王国軍に勝利した!!」
ワアアアア……
民衆は、大歓声でルイドートに答えた。
ルイドートが軽く手を上げて、民の声のボリュームを抑える。
そして、演説を始めた。
「我々はこれまで、トールノア王国のために尽くしてきた!我々が働き、稼いだ血と汗の結晶である富の一部を、王国に正しく納めてきた。中央の政治がうまく働かぬ時も、首都トールノアール近郊が災害で打撃を受けた時も、我々は支援を惜しまなかった!」
民衆は、ルイドートの言葉に耳を傾けている。
「だが、その結果はどうだ!!何の非もない我々は、急に王国軍に攻められ、町を、そしてこの地に住まう者全ての命は蹂躙されようとした。我々が支援してきた王国軍の手によって!」
ルイドートは息を吸った。
「こんな横暴が許されてよいのか!!」
民衆はいきり立った。
「否!!」
「否だ!」
「「「「「否!!!」」」」」
ルイドートは、さらに声を発した。
「王族は、この地を手にいれようと、我々から全てを奪おうとした!こんな横暴が許されてよいのか!!」
「「「「「否!!!」」」」」
「我々は、これからも王族に従わねばならんのか!!」
「「「「「否だあっっ!!!」」」」」
「私も皆と同じ気持ちである!そこで、私はこの日をもって、ハビット領をトールノア王国から独立させることとする!」
民衆が、大きくどよめいた。
だが、その目は歓喜の興奮に満ちている。
ルイドートは、声高に宣言した。
「今、これより、ハビット領を『ハビット公国』とし、国の樹立を宣言する!!!」
ウワアアアアアア!!!!
民衆が、辺り一帯を震わすほどの熱狂的な歓声を上げている。
「「「「「ルイドート王!ルイドート王!ルイドート王!」」」」」
民衆は、ルイドートを王として認めた。
領民達は、これまで領内を円滑に治め、発展させてきたルイドートの手腕を知っている。
だからこそ、ルイドートが自分達の王となる事を望んでいるのだ。
それに彼は、スタンピードや今回の戦争など、何度もシャリアータを守り、救ってくれたあの神達を信奉している。
何もしてくれぬ既存の神よりも、近くで民と共に汗を流し自分達を守ってくれた異界の神を、シャリアータの誰もが愛しているのだ。
たとえ、その神が尻を愛していたとしても━━━。
ルイドートは、満を持して、その神達の名を呼ぶ。
「ハビット公国樹立は、二柱の神のご加護無くしてはあり得なかった。先だっての戦争でも、スタンピードにおいても、この神々が我らを守って下さった!その偉大な神こそ、ドロンズ様と、クリソックス様だあ!!」
ウワアアアアアア!!!!
民衆の信仰度がうなぎ登りだ。
ドロンズとクリソックスの肌は、全ての肌トラブルが消え去り、肌の内側から光り輝くような透明感が噴出、もうリアルに全身発光している。
「ド、ドロンズ!私、こんなにアンチエイジングしたの、生まれて初めてだよ……!」
「わ、わしもじゃ、クリソックスよ。かつてないほどのプル艶肌じゃ!人の子らの信仰心が、わしの肌本来の美しさを呼び覚ましたとでもいうのか……!」
二柱は感動にうち震えている。
そんな神々にルイドートは呼びかけた。
「ドロンズ様、クリソックス様、どうぞ、こちらへ!」
二柱は、ルイドートの前に立った。
ルイドートは、大きく両腕を広げて言った。
「私はこのハビット公国の王となり、『泥団子』の神ドロンズ様と、『クリスマスプレゼント』の神クリソックス様を国教の神として信奉する!!神々は、我らと共にあるぞ!!!」
ウオオオオオオオオオオオ!!!!
地鳴りのような歓喜の声だ。
ドロンズとクリソックスは、感に耐えぬような面持ちで、守るべき信者達を見渡している。
「……り!」
「……ーり!」
どこからともなく、声が上がった。
二柱は、信者達の声に耳を傾けた。
「しーり!しーり!」
「「「しーり!しーり!しーり!」」」
「「「「「しーり!!しーり!!しーり!!」」」」」
二柱は、真顔になった。
「……ドロンズよ、我らは尻を司ったことがあったかい?」
「断じて、否、じゃ。クリソックスよ」
民衆の信仰が、ダイレクトに二柱の存在そのものに伝わってくる。
クリソックスの尻はきゅっと引き締まり、フォトジェニックな美尻へと変貌を遂げる。
あと二千万人の信仰ポイントを貯めれば、クリソックスの尻はオルハリコン化するということが、なんとなくクリソックスに伝わった。
このままいけば、クリソックスの神性に『尻の守り神』という属性が加わりそうだ。
一方ドロンズの尻はあと少しでPC筋ができそうであった。
PC筋とは、肛門に繋がっている筋肉で、肛門の開け閉めと、男のスタンダップに、密接な関わりを持つ。
つまり、ドロンズにとうとう肛門が……!
ドロンズの尻はむずむずした。
後三百人の信仰ポイントでPC筋が、そこから千人の信仰ポイントで、肛門の穴が生まれることが、ふんわりとドロンズに伝わった。
大変だ。
ドロンズの神性が『尻※の神』として定着してしまう!
ドロンズは、悲愴な表情を浮かべた。
「もはや、背に腹はかえられぬ」
「どうしたの、ドロンズ?」
「ちょうどよい。お前と尻で愛し合っているという噂も、これで消えるだろう」
「……何を、する気?」
クリソックスが訝しげにドロンズを見やる。
ドロンズは、盛り上がる民衆を臨むと、彼らに呼びかけた。
「人の子らよ!お前達は心得違いをしておる!!」
民衆がざわつく。
ドロンズは言葉を重ねた。
「お前達はわしらを『尻の神』と言うが、それは有り得ぬ!」
どよめく民衆にドロンズは告げる。
「わしらには、そもそも尻はない。わしらの姿はイメージであって、生身とは違うからだ!イメージで、尻を作ることはできるが、ほれ、この通り!!」
ドロンズは後ろを向いて前屈みになり、手で広げた生尻(イメージ)を、民衆に見せつけた!
「わしの尻に穴はない!何故なら、生物として、ものを食べる必要も、排泄する必要もないからじゃあ!!」
「ない」
「本当だ。※がない……」
「おい、遠くて見えん!誰か、視力強化かけてくれ!」
「ほらよっ」
「マジで、※がねえええええ!!!」
「「「「「ドロンズ様に、※がねえぞおお!!!」」」」」
現場は大混乱している。
ドロンズは構わず話を続けた。
「ちなみに、クリソックスにも※はない!そもそも、わしらは男に見えるが、実は性別もない。おい、お主もやれ!!」
「え、いいけど」
クリソックスも、生尻(イメージ)を民衆に見せつけた。
「「「「「クリソックス様にも※がねえええ!!!」」」」」
「つまり、わしらが尻で愛し合っているというのは、有り得ぬ。な、クリソックス!」
「そうだね、ドロンズ!」
二柱は、信者達に尻を突きだしたまま、肩を組む。
そんな仲の良い二柱を見て、ノーラがドロンズに言った。
「ですが、クリソックス様がお刺しになった刺繍入り守りを、受け取られましたよね?」
「受け取ったぞ。ほれ、これじゃろ?」
ドロンズが体内から、刺繍入り靴下を取り出した。
「「「「「……」」」」」
ドロンズ達は知らない。
あの刺繍入りお守りは、女が、戦争に向かう夫や恋人に刺して渡すものである。
特に、未婚の女が恋人に渡す場合、『帰ったら結婚してね』という意思表示であり、それを受け取るということは、『無事に戻ったら結婚しよう』という婚約成立の儀式でもあるのだ。
トールノア王国では、誰もが知るラブラブの儀式である。
つまり、二柱は婚約してしまったわけで……。
戦争が終わって無事に戻ったので、後は結婚秒読み状態なわけで……。
そんなラブラブな二柱は、現在下半身丸出しで仲良く肩を組んでいるわけで…………!!
民衆は思った。
(((((なるほど、プラトニックの愛で結ばれているのか!)))))
高尚な神の恋愛事情に、民衆は信仰を新たにした。
「?なんだろう。ドロンズが、いつもの三割増しくらい毛量が増えて見えるよ……」
「お主こそ、いつもの三割増しくらい彫りが深いぞ?」
二柱は、互いにじっと見つめ合っている。
ちょっと相手がイケメンに見えてきているようだ。
民衆は、微笑ましそうに、愛し合う(ように見える)二柱を見守っている。
その背後から、民衆に向けてルイドートは言い放った。
「今日この日は、大変めでたい日である!ハビット公国の誕生に加え、公国の国神であるドロンズ様とクリソックス様の二本の道が今一本の道となろうとしている!皆はこれを認めるか!?」
「「「「「認めるぅ!!」」」」」
「では、古来よりのしきたりに則って、クリソックス様の刺繍守りを証とし、公国の民を証人として、ドロンズ様とクリソックス様の道は、永遠に結ばれた!!」
「「「「「うわああああああああ!!!!」」」」」
急にわき起こったかつてない大歓声に、ドロンズとクリソックスは、ハッとして辺りを見回す。
二柱は知らない。
知らぬうちに婚約状態だった二柱が、トールノア王国に伝わる『刺繍守り』を使った婚儀がいつの間にやら執り行われてしまったことに。
まさか、自分達が夫夫(ふうふ)となってしまったとは、全く気がついていない。
「何かわからないけど、信者達が喜んでいるよ、ドロンズ」
「ふむ。我々が愛し合っている、などという誤解も解けたろうし、いや、めでたいことよ」
「ドロンズ様ー!おめでとうございまーす!」
「クリソックス様ー!おめでとうございます!!」
「おお、信者達も、祝ってくれておるな」
「ありがとうー、人の子らよおーー!」
二柱は、上機嫌で民衆に手を振る。
まさに、知らぬが神、であった。
シャリアータ公国→ハビット公国に修正しています。
ハビット公国樹立宣言の日。
この日、『オーベラス』の長い歴史の中で、初めて異界の神の宗教が国教となった日でもある。
つまりその日は、ハビット領にとって、トールノア王国からの独立記念日でもあり、この世界の神よりも異界の神を選択するという、宗教的にも新たな一歩を踏み出した日でもあった。
その神が、『泥団子』の神と『クリスマスプレゼント』の神という意味不明なものを司る神であったため、後世の歴史家達は、当時のシャリアータの民達の心境について、まともではなかったと考える者は多い。
それについては、全くその通りである。
シャリアータにある泥ソックス神殿。
その入り口、階段状になった基壇の最上段に、ルイドート・ハビットは立っていた。
トールノア王国軍の侵攻を食い止め、勝利を手にしたハビット公爵軍は、王国軍の生き残りを捕縛した後、その勝利とシャリアータの今後について周知するために、領民達を集められるだけ集めたのである。
そのため、神殿の前の大きな広場は民衆で埋め尽くされ、異様な熱気を放っていた。
神殿の最上段には、ルイドートの他に、ルイドートの妻ノーラと嫡男のミシャ、騎士団団長のタローウや護衛の騎士達、そしてもちろん、神殿の主であるドロンズとクリソックスの姿もあった。
ルイドートは身体強化で声帯と腹筋を強化し、民に呼びかけた。
「我が領の民達よ!我々は、王国軍に勝利した!!」
ワアアアア……
民衆は、大歓声でルイドートに答えた。
ルイドートが軽く手を上げて、民の声のボリュームを抑える。
そして、演説を始めた。
「我々はこれまで、トールノア王国のために尽くしてきた!我々が働き、稼いだ血と汗の結晶である富の一部を、王国に正しく納めてきた。中央の政治がうまく働かぬ時も、首都トールノアール近郊が災害で打撃を受けた時も、我々は支援を惜しまなかった!」
民衆は、ルイドートの言葉に耳を傾けている。
「だが、その結果はどうだ!!何の非もない我々は、急に王国軍に攻められ、町を、そしてこの地に住まう者全ての命は蹂躙されようとした。我々が支援してきた王国軍の手によって!」
ルイドートは息を吸った。
「こんな横暴が許されてよいのか!!」
民衆はいきり立った。
「否!!」
「否だ!」
「「「「「否!!!」」」」」
ルイドートは、さらに声を発した。
「王族は、この地を手にいれようと、我々から全てを奪おうとした!こんな横暴が許されてよいのか!!」
「「「「「否!!!」」」」」
「我々は、これからも王族に従わねばならんのか!!」
「「「「「否だあっっ!!!」」」」」
「私も皆と同じ気持ちである!そこで、私はこの日をもって、ハビット領をトールノア王国から独立させることとする!」
民衆が、大きくどよめいた。
だが、その目は歓喜の興奮に満ちている。
ルイドートは、声高に宣言した。
「今、これより、ハビット領を『ハビット公国』とし、国の樹立を宣言する!!!」
ウワアアアアアア!!!!
民衆が、辺り一帯を震わすほどの熱狂的な歓声を上げている。
「「「「「ルイドート王!ルイドート王!ルイドート王!」」」」」
民衆は、ルイドートを王として認めた。
領民達は、これまで領内を円滑に治め、発展させてきたルイドートの手腕を知っている。
だからこそ、ルイドートが自分達の王となる事を望んでいるのだ。
それに彼は、スタンピードや今回の戦争など、何度もシャリアータを守り、救ってくれたあの神達を信奉している。
何もしてくれぬ既存の神よりも、近くで民と共に汗を流し自分達を守ってくれた異界の神を、シャリアータの誰もが愛しているのだ。
たとえ、その神が尻を愛していたとしても━━━。
ルイドートは、満を持して、その神達の名を呼ぶ。
「ハビット公国樹立は、二柱の神のご加護無くしてはあり得なかった。先だっての戦争でも、スタンピードにおいても、この神々が我らを守って下さった!その偉大な神こそ、ドロンズ様と、クリソックス様だあ!!」
ウワアアアアアア!!!!
民衆の信仰度がうなぎ登りだ。
ドロンズとクリソックスの肌は、全ての肌トラブルが消え去り、肌の内側から光り輝くような透明感が噴出、もうリアルに全身発光している。
「ド、ドロンズ!私、こんなにアンチエイジングしたの、生まれて初めてだよ……!」
「わ、わしもじゃ、クリソックスよ。かつてないほどのプル艶肌じゃ!人の子らの信仰心が、わしの肌本来の美しさを呼び覚ましたとでもいうのか……!」
二柱は感動にうち震えている。
そんな神々にルイドートは呼びかけた。
「ドロンズ様、クリソックス様、どうぞ、こちらへ!」
二柱は、ルイドートの前に立った。
ルイドートは、大きく両腕を広げて言った。
「私はこのハビット公国の王となり、『泥団子』の神ドロンズ様と、『クリスマスプレゼント』の神クリソックス様を国教の神として信奉する!!神々は、我らと共にあるぞ!!!」
ウオオオオオオオオオオオ!!!!
地鳴りのような歓喜の声だ。
ドロンズとクリソックスは、感に耐えぬような面持ちで、守るべき信者達を見渡している。
「……り!」
「……ーり!」
どこからともなく、声が上がった。
二柱は、信者達の声に耳を傾けた。
「しーり!しーり!」
「「「しーり!しーり!しーり!」」」
「「「「「しーり!!しーり!!しーり!!」」」」」
二柱は、真顔になった。
「……ドロンズよ、我らは尻を司ったことがあったかい?」
「断じて、否、じゃ。クリソックスよ」
民衆の信仰が、ダイレクトに二柱の存在そのものに伝わってくる。
クリソックスの尻はきゅっと引き締まり、フォトジェニックな美尻へと変貌を遂げる。
あと二千万人の信仰ポイントを貯めれば、クリソックスの尻はオルハリコン化するということが、なんとなくクリソックスに伝わった。
このままいけば、クリソックスの神性に『尻の守り神』という属性が加わりそうだ。
一方ドロンズの尻はあと少しでPC筋ができそうであった。
PC筋とは、肛門に繋がっている筋肉で、肛門の開け閉めと、男のスタンダップに、密接な関わりを持つ。
つまり、ドロンズにとうとう肛門が……!
ドロンズの尻はむずむずした。
後三百人の信仰ポイントでPC筋が、そこから千人の信仰ポイントで、肛門の穴が生まれることが、ふんわりとドロンズに伝わった。
大変だ。
ドロンズの神性が『尻※の神』として定着してしまう!
ドロンズは、悲愴な表情を浮かべた。
「もはや、背に腹はかえられぬ」
「どうしたの、ドロンズ?」
「ちょうどよい。お前と尻で愛し合っているという噂も、これで消えるだろう」
「……何を、する気?」
クリソックスが訝しげにドロンズを見やる。
ドロンズは、盛り上がる民衆を臨むと、彼らに呼びかけた。
「人の子らよ!お前達は心得違いをしておる!!」
民衆がざわつく。
ドロンズは言葉を重ねた。
「お前達はわしらを『尻の神』と言うが、それは有り得ぬ!」
どよめく民衆にドロンズは告げる。
「わしらには、そもそも尻はない。わしらの姿はイメージであって、生身とは違うからだ!イメージで、尻を作ることはできるが、ほれ、この通り!!」
ドロンズは後ろを向いて前屈みになり、手で広げた生尻(イメージ)を、民衆に見せつけた!
「わしの尻に穴はない!何故なら、生物として、ものを食べる必要も、排泄する必要もないからじゃあ!!」
「ない」
「本当だ。※がない……」
「おい、遠くて見えん!誰か、視力強化かけてくれ!」
「ほらよっ」
「マジで、※がねえええええ!!!」
「「「「「ドロンズ様に、※がねえぞおお!!!」」」」」
現場は大混乱している。
ドロンズは構わず話を続けた。
「ちなみに、クリソックスにも※はない!そもそも、わしらは男に見えるが、実は性別もない。おい、お主もやれ!!」
「え、いいけど」
クリソックスも、生尻(イメージ)を民衆に見せつけた。
「「「「「クリソックス様にも※がねえええ!!!」」」」」
「つまり、わしらが尻で愛し合っているというのは、有り得ぬ。な、クリソックス!」
「そうだね、ドロンズ!」
二柱は、信者達に尻を突きだしたまま、肩を組む。
そんな仲の良い二柱を見て、ノーラがドロンズに言った。
「ですが、クリソックス様がお刺しになった刺繍入り守りを、受け取られましたよね?」
「受け取ったぞ。ほれ、これじゃろ?」
ドロンズが体内から、刺繍入り靴下を取り出した。
「「「「「……」」」」」
ドロンズ達は知らない。
あの刺繍入りお守りは、女が、戦争に向かう夫や恋人に刺して渡すものである。
特に、未婚の女が恋人に渡す場合、『帰ったら結婚してね』という意思表示であり、それを受け取るということは、『無事に戻ったら結婚しよう』という婚約成立の儀式でもあるのだ。
トールノア王国では、誰もが知るラブラブの儀式である。
つまり、二柱は婚約してしまったわけで……。
戦争が終わって無事に戻ったので、後は結婚秒読み状態なわけで……。
そんなラブラブな二柱は、現在下半身丸出しで仲良く肩を組んでいるわけで…………!!
民衆は思った。
(((((なるほど、プラトニックの愛で結ばれているのか!)))))
高尚な神の恋愛事情に、民衆は信仰を新たにした。
「?なんだろう。ドロンズが、いつもの三割増しくらい毛量が増えて見えるよ……」
「お主こそ、いつもの三割増しくらい彫りが深いぞ?」
二柱は、互いにじっと見つめ合っている。
ちょっと相手がイケメンに見えてきているようだ。
民衆は、微笑ましそうに、愛し合う(ように見える)二柱を見守っている。
その背後から、民衆に向けてルイドートは言い放った。
「今日この日は、大変めでたい日である!ハビット公国の誕生に加え、公国の国神であるドロンズ様とクリソックス様の二本の道が今一本の道となろうとしている!皆はこれを認めるか!?」
「「「「「認めるぅ!!」」」」」
「では、古来よりのしきたりに則って、クリソックス様の刺繍守りを証とし、公国の民を証人として、ドロンズ様とクリソックス様の道は、永遠に結ばれた!!」
「「「「「うわああああああああ!!!!」」」」」
急にわき起こったかつてない大歓声に、ドロンズとクリソックスは、ハッとして辺りを見回す。
二柱は知らない。
知らぬうちに婚約状態だった二柱が、トールノア王国に伝わる『刺繍守り』を使った婚儀がいつの間にやら執り行われてしまったことに。
まさか、自分達が夫夫(ふうふ)となってしまったとは、全く気がついていない。
「何かわからないけど、信者達が喜んでいるよ、ドロンズ」
「ふむ。我々が愛し合っている、などという誤解も解けたろうし、いや、めでたいことよ」
「ドロンズ様ー!おめでとうございまーす!」
「クリソックス様ー!おめでとうございます!!」
「おお、信者達も、祝ってくれておるな」
「ありがとうー、人の子らよおーー!」
二柱は、上機嫌で民衆に手を振る。
まさに、知らぬが神、であった。
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