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初めてのことばかり 第4話
しおりを挟む桜谷さんのお部屋は、流石隊長のお部屋というだけあり、箪笥等の収納や巻物等の書物があっても、広々としていた。
きちんと整理整頓されている。意外と掃除とかマメなのかな。それとも、他に片付けてくれる人がいるとか……?
「まぁ、二人とも座りや。」
「ありがとうございます。」
桜谷さんは、私と藤堂さんに客人用の座布団と机を用意してくれた。
三人で挨拶をして食べ始める。夕食を自室で食べることを、女中さんに伝えたら、食べやすいようにご飯をおにぎりにしてくれた。
私は二個。桜谷さんと藤堂さんは、……十個弱あるだろうか、お昼の時も思ったが、とにかくすごい量を食べるんだなぁ。おかずは、ジャガイモの煮っころがしと柴漬け、あとお肉と野菜が入った鍋だ。このお肉は……何肉だろう?
「このお肉って、何のお肉でしょう?」
「これは、イノシシの肉だな。おそらく隊士の誰かが山で狩ってきたのだろう。……食うのは初めてか?」
「か、狩ってきた!?……そうなんですね!初めて食べたけど、美味しいです!」
そうか、豚とか牛なんてきっとそうそう食べられないのね。お肉を食べるのも山まで狩りに行かなければならないのか。大変だなぁ。私一人じゃ一生食べれられないな。
「そうか……桃子は都会育ちなんだな。」
「えぇ、まぁ……」
そうですとも。私は大都会東京からやってきました。探せばジビエ料理店くらいありそうだけど……でも、新鮮なイノシシ本当に美味しい。隊士さん達に感謝だな。
「お野菜の料理も多いですけど、この辺りには大きな畑もあるんですか?」
「おぉ、取締組で管理している畑がすぐ近くにあるで。おかげで野菜や米に困ることはないわ。」
「畑仕事にも興味があるのか?」
「……そうですね、一度もやったことないので、興味があります!」
「一度も?なんだ、珍しい娘だな。」
「そ、そや。桃子ちゃんは、ええとこの娘さんやねん。」
「そうなのか。それで女中か、お前も苦労するな。」
まずい、流石に変だったかな。桜谷さんが急いでフォローしてくれた。桜谷さん……すみません……。
「俺も、よく畑に行く。いい運動になるしな。興味があるなら、今度一緒に連れて行ってやろう。」
「ほ、本当ですか!楽しみです!」
良かった。なんとか誤魔化せたみたい。東京にいるとあんまり自然に触れる機会もないし、いい機会かもしれない。楽しみにしていよう。
神楽さんが言っていたとおり、藤堂さん、口数は少ないけど、優しい人なんだな。顔も彫刻みたいで恰好良いし。
私が食事を摂っている間に、桜谷さんと藤堂さんは、あれだけあった量の夕食を嘘のようなスピードで食べきってしまった。……見事な食べっぷりだ。見ていて気持ちのいいくらい。大食いの男の人って素敵よね。
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