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第七章

第十話 点と線

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 削げ鼻とナイフでの勝負を挑まれた車輪は若干戸惑った。「俺は

別にかまわんが、何で今時銃じゃなくナイフなんだ?」、、「面白ェ

からだよ。俺は早撃ちだけなら恐らくオメーより上だ。その上オメー

は利き腕の右手が無ェ、そんな雑魚と勝負して何になんだ?」、、

「片腕の俺に情けをかけてくれるってわけか」、、


 「オメーの為じゃねえ俺の為だ。スーパーシティのエリート共見ろよ、

テメーらは空調効いた部屋でパソコンイジりながら下界見下ろしてよォ、

自分達は勝ち組だなんぞとのたまってやがるが、勝ちも何も奴らに

生きるか死ぬかの勝負なんてした事あんのか?俺は命掛けた勝負に

勝ってきた奴しか男として認めねえ、それが人間の雄だっ!!」、、


 「確かにな。真剣勝負の意味をはき違えてる奴は多いな」、、車輪

もそこだけは共感する。「だろうが。あとはオメーへの憎しみだ。たかが

兵隊さん上がりが俺ら裏社会に楯突きやがってよォ、だから点より線だ!」

、、「点より線?」、、「銃弾ブチこんでもオメーに穴が開くだけだろが、

刃物なら線ってワケよ。より残虐になァ、暴力的って奴だっ!」、、


 「削げ鼻よ、お前のゴタクは分かった。だが俺とお前は似ている面が

あるぜ。俺も長年戦場に居たが、命令とはいえ一般人、いわゆる非戦闘員

を攻撃する奴は兵士として認めねェ、やはり兵士が勝負すべきは己と互角

かそれ以上の戦力を持つ敵だ。殺るか殺られるかの中で強い敵に勝って

こそ軍人としての誇りがある。まあ人殺しなのは否定しねェがな」、、


 削げ鼻はニヤっとして「キマリだな。拾え」、、そう言うと刃渡り

30cm程のサバイバルナイフを車輪の足元に放る。「兵隊さんのオメー

にゃそれが良いと思ってな。俺はコレだ。」、、同じ位の長さのドスを

出し、鞘から抜く。車輪も「気ィ使わせたみたいで悪ィな」、、そう

言いながらサバイバルナイフを取り、左手に構えた。
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