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第九章

第三話 阿呆教

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 政府を信じて増税に賛成する人々が一部に現れ始め、それに対抗

する人達との間で小競り合いが頻発するようになり、どこの町でも

武器を持った自警団が存在するので、自警団同士の抗争や同じ自警団

の中での内部抗争にまで発展するようになった。その中で勢力を強め

出したのが阿呆教(あほうきょう)である。


 阿呆教は、人間はそもそも阿呆なので反省しながら生きるべし

という教義の宗教団体で、複数の自警団に入り込んでいたが、自警団

の中にも以前の暴力集団への虐殺をやり過ぎたと反省してる者も多く、

これからは平和に政府を信じて不平不満を口にしなければ、人殺しの

過去も清算されると説法された住民が数多く入信していた。


 しかし大半の国民は、自分達の税金でごく一部のエリート層だけ

楽園の様なスーパーシティに住み、自分達は無政府状態のスラムに

住まわされ、いくら暴力集団の収奪が無くなったとはいえ、少ない

給料の50%も搾り取られるのは納得がいかなかった。その上なんだ

かんだで阿呆教も綺麗事を言いながらちゃっかり武装しているのだ。


 赤熊との死闘を終えた車輪はその場で赤熊を埋葬し、簡単な墓標

を立てて住処に帰って来た。「そうか、、あの男らしい最期だな」、、

倉庫のオヤジはある程度赤熊を認めていたが、この時代の暴力集団

にも古風な者が残っていた事に感心していたのだった。「ああ、どこ

で道を踏み外したのか知らないが、死に様はサムライだった」、、


 「しかし、山奥には未だに暴力集団がはびこっているんだな、町は

町で自警団が暴力集団みたいになってきてるのに」、、元レーサーは

車輪に増税や阿呆教の事を説明した。「国賊揃いの腐った政府はあの

時の暴動を見ても、国民が苦しんでる事より自分達の利益優先の様だな。

改心を期待したが、やはり国賊を討って変えるしか手は無しか」、、


 
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