スーパーシティ ～放置国家～

第九章

第四話 勧誘

　次の日、車輪は元レーサーの農作業を手伝い、夕方からオヤジや

近所の住民達２０人程と倉庫に集まった。ここはこの地区の自警団

にもなっているが、自警団と言っても外部からの襲撃に備えながら、

普段は交代で火の用心等の見回りをしている程度だ。だが一応の武器

はある程度用意してある。


　「やはり全国の自警団に呼びかけてスーパーシティを陥落させる

しか無いな」、、元レーサーが口を開いた。「そうだな、以前みたい

に非暴力で訴えても、奴らは暴力集団をけしかけたり、増税したり

国民目線になれない事はハッキリしたからな。まあだからと言って

阿呆教みてえな自警団とは組めねえがな」、、オヤジも言う。


　「阿呆教は最近特に勢力を広めてるけど、他にも宗教系や共産系も

自警団に入り込んできてるからな」、、「まともな自警団が今どれだけ

いるか疑問だよ」、、「どけど今は国民の男=自警団員だ、変な方向に

行ってる自警団なんか少数派だと思うぞ」、、住民は口々に意見を言い

合った。すると外から鈴の音と共に阿呆、阿呆、と聞こえてきた。


　何事かと思ってると、いきなり倉庫のドアを勝手に開けて、白装束で

頭部もターバンみたいに白い布を巻きつけた者が５人程ゾロゾロ入って

来た。「我々は阿呆教です。阿呆教に入った自警団は全国で百を超え

ました。あなた達も我々の仲間となって一緒に祈りましょうぞ。さすれば

必ず救われますぞ」、、リーダーらしき者が勧誘してくる。


　「阿呆はお前らだけだ。丁度お前達の話をしていたとこだ、阿呆は

信用できないとな。ワシらに迷いは無ェ、自分のする事、してきた事に

ちゃんと信念を持ってるよ。帰った帰った」、、オヤジが言うと「そう

ですか、地獄に落ちるのを救いたかっただけですが、それは非常に残念

ですな」、、そう言うと５人は阿呆、阿呆と呟きながら帰って行った。