上 下
98 / 155
第十章

第三話 警察署

しおりを挟む
 あえて捕まる事を選択した二人は、自動運転の無人護送車に揺られて

いた。元レーサーが窓の外を見ながら口を開く。「おかしい、AIとか

ドローンばかりで、人間の警官が1人も居ねーじゃねーか」、、「いや、

スラムでは普通に人間同士が近づいて会話してるが、公務員とか富裕層

は30年前のパンデミックから人と直接会うのを控えてるんだ」、、


 車輪が言うには、金のある者はウィルスや病原菌の感染を恐れ、また

犯罪予防の観点からも、他人と距離を置くようになったらしい。会話も

すべてオンライン、顔を覚えられたくない場合はアバターを使う者も

居るという。「まともに会って直接会話するのは実の家族位だろうな」、、

「な~んか金持ちってのはつまらない生き方してんだな」、、


 そうこうしているうちに護送車は警察署に着いた。確かに犯罪者と

直接対峙せず、代わりにロボットなどが犯人確保をしてくれれば殉職者

も出ないし、犯人から病気を感染されて警察署がクラスターになる事は

無いだろう。かくゆう車輪とて、過去に生身の兵士に代わって戦闘AI

に自衛隊の職を奪われているのだ。


 パトロールロボットに警察署に入るよう促された二人は署内に入ると、

いきなり消毒液を噴霧された。この時代は別にウィルスや病原菌が蔓延

している訳では無いが、スラム以外の建物の中に入る時は全身消毒が

常識となっている。それがスラムからの侵入者とくれば最早ばい菌と

同じかそれ以下、神経質にならざるを得ないのは当然だった。


 「何でも無いのに普段からこんな事してたら逆に弱くなるぞ」、、

ブツクサ言いながらも2人は取調室に入れられると、いきなり「お前は

指名手配犯の車輪だな?」、、と設置してある大型モニターの3Dキャラ

に尋ねられた。「そうだ。スラムは命を狙われて危ないし、ここなら

仕事に有りつけると思って侵入したらこのザマだ」、、




しおりを挟む

処理中です...