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第十章

第四話 登録済み

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 車輪達を捕まえた警察側は、もう車輪の素性を把握している様だ。

モニターの3Dキャラにトボケて答える車輪だったが、「ここは成功

した者だけが住めるスーパーシティだ、お前の様な兵隊崩れでしかも

大量殺人犯がここで仕事に有りつける訳は無かろう」、、と一蹴され

た。「殺人犯でも殺ったのは犯罪者と傭兵の特殊警察だがな」、、


 3Dキャラは今度は元レーサーに尋ねる。「お前は5年前の鈴鹿の

レースで暴力集団から八百長をしろと脅されて屈し、結局自分から

引退して過去の全てを抹消してスラムに落ちたようだな」、、「何だ

俺の事も調べたのか。そらそうだろ、ビクビクしながらワザと勝ったり

負けたり、大金は貰えたが俺にとってそんなレースに意味は無ェ」、、


 「調べたと言うよりは登録済みと言った方が正しい。このスーパー

シティでは住民の全てがコンピューターで管理されている。スラムの

住民は放置対象だからその範囲外だが、お前達は元々公務員とプロの

モータースポーツの選手だ。そういう人間もデータは登録されている。

もう少し世渡りが上手ならこちら側の住民だったのにな」、、


 ベールに包まれていたスーパーシティの事が段々解って来た車輪は

会話を続けた。「そうかよ、そりゃあ勿体無い事しちまったぜ。大多数

の国民の不幸の上で利益を得て、こんな所で贅沢三昧とはさぞ気分が

イイんだろうな。折角だ、成功の秘訣とやらを是非とも尊敬する竹内

平助センセイに教わりたい。俺なら最高のボディガードになるぜ」、、


 3Dは一瞬止まったが「留置場に行って貰う」、、と返してきた。

「しまった、そんなに甘くなかったか」、、車輪と元レーサーはAI

ロボットに囲まれ移動する様促された。このままでは元レーサーは罪が

軽くとも、車輪は確実にもっと厳重な脱出不可能な場所に拘束されて、

拷問の上で処刑されるだろう。逃げ出すチャンスはこの移動中だけだ。
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