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最終章

第四話 国賊の末路

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 とうとう地獄の門をくぐる事となった国賊、竹内平助。仮想現実の

世界は非常にリアル且つ的確に再現されており、そこらの映像より遥か

に綺麗で鮮明だ。モニターの中の竹内のアバターも本人からしても味覚、

触覚、痛覚どれを取っても現実世界と見紛う完成度の高さ、故に富裕層

は移り住む者が後を絶たなかったのだ。ただし(現世)を選べばの話。


 早速竹内は本人そっくりの裁判官のキャラクターにより皮剥ぎの刑を

命ぜられ、獄卒の鬼に体の皮をゆっくり剥された。「ぎぃいぃやぁあー」、、

車輪はモニター越しにそれを見て吐き気がしたが、全身の皮が剥される

まで小一時間見入ってしまった。それが終わると針山地獄へ連行され、

数万もある太い針の上を歩かされている。「いぎゃあぁぁあーっ」、、


 これが現実ならば間違いなく絶命しているだろう。だが皮肉にも身体

や時間から解放された世界では、脳が生きてる以上は死ぬ事は無いのだ。

(現世)の場合は選択肢もあるが、この竹内自ら作った(地獄)では

投獄された者にその選択肢は無い。従って痛覚等はそのままに、脳が

生きるあと百何十年は、死ぬ事も許されず文字通り生き地獄なのだ。


 モニターの中とは言え、絵や本の中でしか見た事が無い地獄の絵図

をまざまざと見せられた車輪は、戦場とはまた違う残酷さに身震いした。

「竹内よ、、、俺はこんな悪趣味なものをこれ以上見る気は無いから

もう行くが、貴様の様なハイパー・クズの最期はこれが相応しいのだ」、、

この後は舌を抜かれたり釜茹でになったりを延々繰り返すらしい。


 これなら車輪に銃で射殺された方がよっぽどマシだっただろう。車輪

は部屋を出るさい、汚い物を見るかのように竹内の生身の身体が入った

液体入りのカプセルを何気なく見たが、仮想現実の意識と生身の身体

がまだ微かに繋がっているのか、目は白目を見開いた状態で糞尿を垂れ

カプセルの液体と混じり合い、本当に汚く惨めな姿となっていた。
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