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約束のスイーツ三昧 2
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店内の壁時計が十八時を知らせるメロディを奏で始めると、店員がブラインドを下ろすためにカウンターからこちらに向かってやってきた。ブラインドを下げたあと、出入り口の看板を店内に運び入れると、ドアのプレートOPENからCLOSEDに引っくり返すとドアに鍵をかけた。
「それではオーナー、お先に失礼します」
「おう、お疲れさま。また明日も頼むな」
店員は高橋くんに声を掛けると、作業場の隣にあるスタッフルームへと向かった。高橋くんもスタッフの声に返事をする。しばらくすると、店員はエプロンを外し、帰り支度を済ませて現れた。
どうやらレジの売り上げ金の集計や当日の精算は、高橋くんが人任せにはせずに自分でするのだろう。店員はレジに触れることはなかった。
「では、どうぞごゆっくり」
そう言って店員は裏口へと向かうと、ドアが閉まる音が店内に聞こえた。店員と入れ違いに、高橋くんが売り場に現れる。手に持ったトレイには、約束のスイーツとコーヒーが乗せられている。デザートタイム最強の組み合わせに、私の瞳が輝いた。
「待たせたな。今日のケーキは抹茶のロールケーキとバニラのマカロンだ。コーヒーはブラックでも大丈夫か?」
「うん、全然へっちゃら。てか、めっちゃ美味しそう!」
そう言うと、高橋くんはイートインスペースのテーブルに、ケーキセットが並べた。コーヒーは高橋くんの分も用意されているけれど、スイーツは私の分だけだ。色鮮やかな抹茶の緑と、淡い色のマカロン、見た目だけでも私の食欲を掻き立てる。仕事終わりでちょうど小腹が空いているので、このくらいの量なら余裕で食べられる。
「あの頃は、さすがに学校には綺麗に飾りつけしたケーキを持っていけなかったからなあ。飾り付けたクリームが潰れたら見た目最悪だし、季節的に食中毒起こしたら大変だしな」
「だねえ、でもクリームなしのスポンジケーキやカップケーキ、美味しかったよ。もちろん焼き菓子だって毎回楽しみにしてたもん」
「うん。いつも俺の作るお菓子をうまそうに平らげてくれてたもんな。スイの反応見るのが楽しかった」
「なんかそれ、私すごく食いしん坊みたいじゃない?」
「実際そうだったろう?」
当時の思い出話に花を咲かせながら、私は目の前に用意されたスイーツに手をつけた。さっくりとした食感のマカロンは口の中で上品な甘さが広がり、ついもう一つ食べたいと言いたくなる。続けざまに抹茶のケーキも、小豆がアクセントとなり、いくらでも食べられる。
一口ケーキを口にしたら、もう私の手は止まらない。あっという間に食べ終えると、高橋くんは目を丸くした。
「相変わらずの食いっぷり、嬉しいねえ。でもさ、俺、これでも有名パティシエなんだよな。もっと味わって食えよ?」
「だっておいしいんだもん、さすが有名パティシエ。てかさ、考えてみたら私って贅沢だよね。パティシエになる前から高橋くんの作るスイーツ食べてたんだもん。これってすごいよね? 昔も言ったと思うけど、もうこれみんなに自慢してもいいよね?」
甘い物を食べると、どうしても喉が渇く。
コーヒーカップに手を伸ばすと、そっと息を吹きかけて、冷ましながら口に含んだ。コーヒーの苦みが、口の中の甘さを中和するとともに、コーヒーの香ばしい香りと洋菓子の甘い香りのセットは、私をとても幸せな気持ちにしてくれる。
「そうだな、俺がこの道に進もうと思ったのは、スイのおかげだもんな」
高橋くんの言葉に、私はコーヒーカップを落としそうになった。きっとあの日のことを言ってるに違いない。私は、そっとコーヒーカップをテーブルの上に戻した。
「それではオーナー、お先に失礼します」
「おう、お疲れさま。また明日も頼むな」
店員は高橋くんに声を掛けると、作業場の隣にあるスタッフルームへと向かった。高橋くんもスタッフの声に返事をする。しばらくすると、店員はエプロンを外し、帰り支度を済ませて現れた。
どうやらレジの売り上げ金の集計や当日の精算は、高橋くんが人任せにはせずに自分でするのだろう。店員はレジに触れることはなかった。
「では、どうぞごゆっくり」
そう言って店員は裏口へと向かうと、ドアが閉まる音が店内に聞こえた。店員と入れ違いに、高橋くんが売り場に現れる。手に持ったトレイには、約束のスイーツとコーヒーが乗せられている。デザートタイム最強の組み合わせに、私の瞳が輝いた。
「待たせたな。今日のケーキは抹茶のロールケーキとバニラのマカロンだ。コーヒーはブラックでも大丈夫か?」
「うん、全然へっちゃら。てか、めっちゃ美味しそう!」
そう言うと、高橋くんはイートインスペースのテーブルに、ケーキセットが並べた。コーヒーは高橋くんの分も用意されているけれど、スイーツは私の分だけだ。色鮮やかな抹茶の緑と、淡い色のマカロン、見た目だけでも私の食欲を掻き立てる。仕事終わりでちょうど小腹が空いているので、このくらいの量なら余裕で食べられる。
「あの頃は、さすがに学校には綺麗に飾りつけしたケーキを持っていけなかったからなあ。飾り付けたクリームが潰れたら見た目最悪だし、季節的に食中毒起こしたら大変だしな」
「だねえ、でもクリームなしのスポンジケーキやカップケーキ、美味しかったよ。もちろん焼き菓子だって毎回楽しみにしてたもん」
「うん。いつも俺の作るお菓子をうまそうに平らげてくれてたもんな。スイの反応見るのが楽しかった」
「なんかそれ、私すごく食いしん坊みたいじゃない?」
「実際そうだったろう?」
当時の思い出話に花を咲かせながら、私は目の前に用意されたスイーツに手をつけた。さっくりとした食感のマカロンは口の中で上品な甘さが広がり、ついもう一つ食べたいと言いたくなる。続けざまに抹茶のケーキも、小豆がアクセントとなり、いくらでも食べられる。
一口ケーキを口にしたら、もう私の手は止まらない。あっという間に食べ終えると、高橋くんは目を丸くした。
「相変わらずの食いっぷり、嬉しいねえ。でもさ、俺、これでも有名パティシエなんだよな。もっと味わって食えよ?」
「だっておいしいんだもん、さすが有名パティシエ。てかさ、考えてみたら私って贅沢だよね。パティシエになる前から高橋くんの作るスイーツ食べてたんだもん。これってすごいよね? 昔も言ったと思うけど、もうこれみんなに自慢してもいいよね?」
甘い物を食べると、どうしても喉が渇く。
コーヒーカップに手を伸ばすと、そっと息を吹きかけて、冷ましながら口に含んだ。コーヒーの苦みが、口の中の甘さを中和するとともに、コーヒーの香ばしい香りと洋菓子の甘い香りのセットは、私をとても幸せな気持ちにしてくれる。
「そうだな、俺がこの道に進もうと思ったのは、スイのおかげだもんな」
高橋くんの言葉に、私はコーヒーカップを落としそうになった。きっとあの日のことを言ってるに違いない。私は、そっとコーヒーカップをテーブルの上に戻した。
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