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第3章
もしかして、この婚約はカモフラージュ? 3
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それに対して、二次元にしか興味がなかった私は、全然浮いた話がなかったけれど、お互い特殊な性癖を堂々と赤裸々に語ることができる唯一の相手だった。
恋愛感情こそはないけれど、お互い四十歳になるまでに結婚ができなかったらカモフラージュで結婚しようかと冗談で言い合う仲だっただけに、私が突然『幼馴染と政略結婚することになった』のだから、まさしく青天の霹靂である。
最近は私が徹也くんとの件で慌ただしかったことと、弘樹も仕事で多忙を極め、こうしてゆっくりと顔を合わせるのも三か月くらい振りだろうか。
高校生の頃からずっと一緒にいたせいで、周囲からは私たちが長年恋人同士なのだとずっと勘違いされていた。学生の頃に弘樹を自宅へ招いたこともあり、一時期母にも交際を疑われていたけれど、私たちが全くそれらしい雰囲気じゃないことを悟ってからは、普通に受け入れてくれている。
私が徹也くんと婚約をしたことで、誤解もいずれ解けることだろう。
私は、この二か月の間に起こった出来事を弘樹に話した。
デリケートな内容だけに、電話やメールではなく、直接話を聞いてもらいたくて今日までずっと我慢していたのだ。人に聞かれるリスクはあるけれど、ざっと店内に視線を走らせたときに知り合いは誰もいなかったから大丈夫だろう。
お見合いの練習の経緯から昨日の結納まで、私の話を聞いた弘樹は驚きを隠せないでいる。
弘樹は私が最後まで話し終えると、状況は理解したと前置きをした上で口を開く。
「へえ……幼馴染とお見合いねえ……しかも結納当日に、晶紀がプレゼントした覚えのない指輪をしてるって……何じゃそりゃ」
そう、本当に何じゃそりゃ状態なのだ。
そもそも私は、アクセサリーの類には全くと言っていいくらい興味がない。昨日結納の席でもらった指輪にしたって、婚約指輪というくらいだからそれなりに高級品だという認識で、ブランドなんてさっぱりわからない。
「でしょう? 意味わかんないよね。で、弘樹はどう思う? 今さらながらなんだけど、私、本当に徹也くんと結婚してもいいのかな?」
「『結婚してもいいのかな』って、二次元にしかときめいたことのない晶紀がそれを言う? それにその婚約者って、晶紀のBL好きなこと、知ってるの?」
「二次元オタクってのは知ってるけど、BLに関しては知らないと思う……」
私の言葉に、弘樹はそうだよなと溜め息を吐いた。
「まあ、晶紀の幼馴染なんだから、晶紀の生態についてはある程度理解はあるだろうし、今さらバレたところで問題はないと思うけど……」
何やら失礼なことを弘樹はブツブツと呟いている。私の生態って、私は珍獣かっ。そう突っ込もうとしたときだった。
恋愛感情こそはないけれど、お互い四十歳になるまでに結婚ができなかったらカモフラージュで結婚しようかと冗談で言い合う仲だっただけに、私が突然『幼馴染と政略結婚することになった』のだから、まさしく青天の霹靂である。
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高校生の頃からずっと一緒にいたせいで、周囲からは私たちが長年恋人同士なのだとずっと勘違いされていた。学生の頃に弘樹を自宅へ招いたこともあり、一時期母にも交際を疑われていたけれど、私たちが全くそれらしい雰囲気じゃないことを悟ってからは、普通に受け入れてくれている。
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弘樹は私が最後まで話し終えると、状況は理解したと前置きをした上で口を開く。
「へえ……幼馴染とお見合いねえ……しかも結納当日に、晶紀がプレゼントした覚えのない指輪をしてるって……何じゃそりゃ」
そう、本当に何じゃそりゃ状態なのだ。
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「でしょう? 意味わかんないよね。で、弘樹はどう思う? 今さらながらなんだけど、私、本当に徹也くんと結婚してもいいのかな?」
「『結婚してもいいのかな』って、二次元にしかときめいたことのない晶紀がそれを言う? それにその婚約者って、晶紀のBL好きなこと、知ってるの?」
「二次元オタクってのは知ってるけど、BLに関しては知らないと思う……」
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「まあ、晶紀の幼馴染なんだから、晶紀の生態についてはある程度理解はあるだろうし、今さらバレたところで問題はないと思うけど……」
何やら失礼なことを弘樹はブツブツと呟いている。私の生態って、私は珍獣かっ。そう突っ込もうとしたときだった。
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