これって政略結婚じゃないんですか? ー彼が指輪をしている理由ー

小田恒子

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第4章

その女性、誰ですか? 1

 徹也くんが女性を連れていることに私が戸惑っていると、徹也くんも同じように驚いたのか、私と弘樹の顔を交互に見比べている。

 徹也くんが一緒に連れている女性は、私と真逆でスラリと背の高いスレンダーな美人だ。仕事終わりに会っていたのか、二人ともスーツ姿。こうして見ると、身長も格好もバランスが取れていて、とてもお似合いだ。

 対する弘樹は身長はそこまで高くはないものの、人の良さそうな顔立ちをしている。
 それこそ学生時代から弘樹と一緒にいるので、周囲から私たちは恋人と勘違いされていただけに、事情を知らない徹也くんたちからはどのように見えるだろう。
 徹也くんが連れている女性は私たちを、弘樹は徹也くんとその女性を見つめている。

「あれ、徹也くん……凄い偶然だね」

「本当に……まさかここで晶紀に会うとは思わなかったよ。……ああ、紹介するよ。こちら婚約者の高田晶紀さん」

 徹也くんは連れの女性に私のことを『婚約者』と紹介した。
 連れの女性に私のことは紹介したくせに私には彼女の紹介がないのだから、私はどうすればいいのだろう。とりあえず会釈だけはしてみたけれど、一緒にいる女性は驚いたのか、一瞬目を大きく見開き、まじまじと私たちを見つめた。 

 会話が途切れ、微妙な空気が流れる中で、徹也くんは左手を私の頭の上にポンと乗せた。
 その手には、やはり昨日私が目にした指輪がつけられている。それに気づいて何だか内心モヤモヤする。

「……今日はまだ月曜日なんだし、早めに切り上げろよ」

 そう言うと、カウンター越しに武志さんを呼び、会計のやり取りをした。連れの女性は徹也くんから少し離れた後ろに立って、会計が終わるのを待っているようだ。
 徹也くんは支払いの際、チラリとこちらを見て武志さんに何やら耳打ちをし、武志さんは心得たとばかりに頷いている。

 会計の終わった二人が、店を出る後ろ姿を見送ることしかできなかった私たちは、カウンターに戻ってきた武志さんに衝撃なことを告げられた。

 何と、私たちの分まで一緒に支払いを済ませてくれていると。自分たちの分は自分たちで払うと武志さんに告げても、「こういうときは、年長者の顔を立ててあげるものだよ」と言われ、私たちは何も言えなかった。

 再び武志さんがカウンター奥へと姿を消すと、弘樹がポツリと呟いた。

「今のが徳井さんか……」

「うん、そう。まさかここで会うと思わなかった……てか、あの女の人誰だろう。私、あの人のこと知らないんだけど」

 私の呟きに弘樹も同調する。

「普通なら、どんな立ち位置でもお互いの名前くらいは紹介するけどな」
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