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第9章
彼が指輪をしている理由 1
二人が店を後にすると、徹也くんが私に謝った。
「スカート、汚してごめんな。慎太郎が着替え持ってきてて助かった」
「慎太郎……?」
初めて聞く名前だ。もしかしたら、坂下さんの本名だろうかと思ったら、やっぱりそうだ。
「あいつ、本当の名前は慎太郎って言うんだ。女装してるときに本名で呼ばれたら萎えるから雪奈って名乗ってる」
「そっかぁ……たしかにあの姿で慎太郎はないなぁ。でも、本当に女の人だと思ってた」
女性の姿をしていた坂下さんのことを思い出すと、徹也くんは私の手をそっと握った。
驚いて顔をあげると、真剣な表情の徹也くんが私を見つめている。
「もしかして、妬いてくれた……?」
これって何だか本当の恋人みたいな会話だ。
私は俯いて、ボソボソと呟いた。
「ヤキモチかどうかはわかんないけど……、何かモヤモヤした」
私の答えに納得したのか、徹也くんはご機嫌だ。
「僕は、ずっと白石くんに嫉妬してたよ。どうすれば晶紀の中で僕の存在が一番になれるか、そればかり考えていた」
意外すぎる言葉に私は驚いた。驚くことが多くて心が全然落ち着かない。
「あー、ダメだ。やっぱり新しいスカート買いに行こう。あいつの服を身につけてるって思ったらじっとしてられない。パンケーキ食べ終わったら、一緒に洋服見に行くよ」
テーブルの上に、冷めた紅茶と徹也くんが注文したパンケーキが置かれている。
それを眺めながら、私は思っていたことを口にした。
「徹也くんの、その指輪……」
私の声に徹也くんは指輪に視線を落とすと、左手薬指から指輪を外し、私に握らせた。
「これ、晶紀のだよ。覚えてない?」
徹也くんから渡された指輪をマジマジと見つめて、私は声をあげた。
「これ……!!」
失くしたとばかり思っていた、修学旅行中に買ったおもちゃの指輪、それだった。
どうして徹也くんがこれを持ってるの……?
「修学旅行のお土産で、僕に晶紀とお揃いのお守りくれたの覚えてる?」
晴明神社で買ったお守りのことだ。昨日夢を見るまで、すっかり忘れていたことは黙っておこう。私は頷いて、話の続きを促した。
「晶紀が中学三年の夏休み、課題が終わらないって泣きついてきたこと覚えてる?」
それは数多くある私の黒歴史の一つだ。
夏休みの課題で出された英語のワークブックが、夏休み最終日前日に出てきたのだ。
大量のプリントに紛れて、その存在をすっかり忘れていた。
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私の答えに納得したのか、徹也くんはご機嫌だ。
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意外すぎる言葉に私は驚いた。驚くことが多くて心が全然落ち着かない。
「あー、ダメだ。やっぱり新しいスカート買いに行こう。あいつの服を身につけてるって思ったらじっとしてられない。パンケーキ食べ終わったら、一緒に洋服見に行くよ」
テーブルの上に、冷めた紅茶と徹也くんが注文したパンケーキが置かれている。
それを眺めながら、私は思っていたことを口にした。
「徹也くんの、その指輪……」
私の声に徹也くんは指輪に視線を落とすと、左手薬指から指輪を外し、私に握らせた。
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「これ……!!」
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どうして徹也くんがこれを持ってるの……?
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