仮面夫婦のはずが、エリート専務に子どもごと溺愛されています

小田恒子

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番外編

続・仮面を取った後は……

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 夫である雅人さんと一緒にクリニックを受診して、一年が経過した。

 一番最初に、私の身体にも不妊要素がないか検査を受け、その翌月から体外受精に踏み切ったものの、やはり現実はそう簡単にはいかないもので……。

 私の胎内に受精卵を戻しても、うまく着床せずに流産した。

 流産をした後に、一度私にきちんと月経が訪れるか確認して再度体外受精に臨むのだが、史那がノロウィルスに感染して私達親にまで感染が拡大したり、他にも流行性ウイルスの病気を立て続けに貰って来ては都度妊活も中断したりして、ようやく最近落ち着いた所だ。

 一度流産を経験すると、もしかしたら次も上手く行かないかも知れないと言う不安に襲われる。
 雅人さんは、不妊の原因が自分にあるからか、常に私を気遣ってくれている。周囲からの遠慮ない『二人目は?』の声も、出来るだけ私の耳に入らない様にしているのだろう。

 私が思っていた以上に、不妊治療はメンタル面を蝕んでいく。

 なので、このくらいの期間が開いてからの治療再開がちょうどいいのかも知れない。

 妊活を中断中、雅人さんとは避妊具を使わずに愛し合う事も欠かさなかった。

 夫婦のコミュニケーション、スキンシップも、最初の頃は照れもありなかなか上手く行かなかったけれど、一緒に暮らし始めると、雅人さんはなかなかの甘えん坊だと言う事が分かった。

 史那が一緒にいる時は、頼りになるパパの顔を見せるものの、史那がお泊りで不在の時は、私から離れない。

 クールなイメージとは真逆のギャップが堪らない。

 今日は久しぶりに今井の実家にお泊りで史那はいない。
 そして、雅人さんは仕事を早く切り上げて十七時過ぎに帰宅してきた。

 いくら何でも早過ぎるのではないかと私が言うと、上司が何時までも会社に残っていると部下は帰り辛いだろうと反論されて言い返せなかった。

 思いの外早い帰宅だったので、夕食の支度なんてまだ出来ておらず、久しぶりの二人きりの時間と言う事もあり、外食することにした。

 日頃外で食事を摂る事のない私は、テーブルマナーとかも正直言ってよく分からない。
 高宮の専務取締役である雅人さんと一緒にいて彼に恥をかかせない様に、最低限必要なマナー等、教室があれば通いたいものだ。

 そんな私の心配をよそに、雅人さんは私とこうして外食をする時は必ず個室を取ってくれている。

 他人の目を気にしないで居られることに関しては感謝している。
 けれど、やはり家族以外で会食の機会があった場合の事を考えると、やはり自分に自信を付けたいからきちんと知識を習得したい。

 今日連れられてやってきたのは、中華料理のお店だった。

 コース料理もあるけれど、流石に食べきれないので色々と注文して二人でわけっこして美味しく頂いた。

 帰宅してシャワーも浴びて、お互い寛ぎモードの時も、雅人さんは私の傍から離れない。

 リビングでじゃれあっていても、気が付けば私を抱き上げて寝室へと連れて行かれる。

 そしてこの日も、日付が変わって明け方近くまで愛された。

 若いうちに二人目が授かればいいけれど、焦っても仕方がない。
 二人だけで過ごす時間が殆どなかった私達の、貴重な時間。

 新しい命を授かるのは、もう少し先でもいいかも知れない。



―終―
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