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エピローグ

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 何とか支えなしで歩けるようになったので、一度家に戻る事にした。
 でもその前に、直哉さんの洗濯機の中を確認すると、昨夜の敷きパットが嵩張り、結構な量になっている。
 一宿一飯の恩義ではないけれど、家に戻る前に洗濯をする事にした。

 洗濯機を回している間に、掃除機をかけて、部屋のゴミ箱からゴミを回収して片付ける。
 私が使う予定の部屋も、掃除機をかけて荷物を入れる準備をする。
 洗濯物を干し終えて自宅へ戻ると、管理会社へ今月中に退去する事を伝えた。
 その際にエアコンの相談をすると、そのままでも構わないとの返事だったので、好意に甘えて置いていく事にした。

 退去予定日を伝え、その日に引き渡しをするので家賃も日割り計算で算出すると言われ、退去に要する手続きも色々と聞いて教わった。
 退去日は、日曜日。土曜日までに荷物を運び出し、日曜日に清掃して引き渡すので、運び出せる荷物を持って部屋を出た。

 八月の陽射しの中での荷物運びは、思いの外体力を消耗する。汗も半端なく流れ落ちる。
 両方の家のエアコンを稼働させて、何度も往復する。
 衣装ケースから一度洋服を出して運び出し、空になったケースを運ばないと、重いし手が滑るので効率が悪いけど、頑張って運んだおかげで洋服全てと貴重品は移動が完了した。
 くたびれてしまった私は、自分の部屋の冷蔵庫の中の食材で夕飯を作り、直哉さんに仕事が終わったらこちらに来て貰う様に連絡を入れた。

 ご飯を炊きながら冷凍していた肉を解凍して、豚肉の生姜焼き、味噌汁、卵を焼いて野菜を刻む。
 有り合わせのもので申し訳ないと思いながらも買い物に出る元気はない。
 食事の準備が終わって、荷造りを再開していると、スマホからメッセージを受信するアラームが鳴った。
 もちろん、直哉さんからだ。

『了解』

 ただ一言だけでも、返信が届くとやっぱり嬉しい。
 しばらくすると、部屋にインターフォンの音が鳴り響く。モニターの前には、私の最愛の人が立っている。
 私は、笑顔で彼を迎え入れた。

「お帰りなさい、直哉さん」

「ただいま、里美」

 婚約したてだけど、これからの人生を、一緒に歩んで行く人。
 十二年前に封印した恋心の鍵は、いつだって、ここにある。

 ー終ー
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