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10話
しおりを挟む球技大会の気合いも入れた所で球技大会本番がやってきた。当日には朝から皆で買ったゴムでお揃いのポニーテールにして日焼け止めを塗って準備は整ったが競技が始まってすぐ私達はやはりやる気がなかった。
「日差しが熱すぎ……。焼ける。早く終わらせて体育館で啓太達応援しようよ」
眩しそうな顔をしながら提案してきたのは富田だった。私達は一回戦で負けてしまって今は違うチームがやっているのを見ながらベンチで休憩中だ。
「賛成。私もとにかく体育館行きたい」
ハンドタオルを頭に乗せながら真奈はだるそうに言った。もう暑くはなってきているがこう天気がいいとさらに熱さを感じる。
「だね。ていうか啓太達勝ってるかな~」
私も手で目元に日陰を作りながら同意した。日に焼けるのは好ましくないし、順位なんかどうでもいい。熱いなぁと思っていたら綾乃が口を開いた。
「頑張るって言ってたから勝ってるよきっと」
ウザい主張は好きだから信じてんのかと醒めながら思う。私がいるのに本当にバカな綾乃だ。
「そうだね」
「大樹がまずバスケ部だから問題ないでしょ。次富田達だからさっさとベースボール終わらせよう」
「だね~。日に焼けるし」
私はムカついたのでそれとなく笑って流した。くだらない話なんかしたくもない。するとキックベースの試合が一通り終了したみたいで私達の番になった。
「お、行くよ皆。敗者復活。富田達弱いからすぐ終わるよ」
「あぁー、だるぃ~。綾乃引っ張って~」
「真奈大丈夫?」
真奈はだるそうに綾乃に引っ張ってもらってから立ち上がった。それからキックベースは予想通り負けた。皆やる気ないしどうでも良さそうだし勝ち負けをこだわってる人はいないのでまぁいいだろう。
私達は休憩を挟んでからすぐに体育館に向かった。体育館ではバレーとバスケが灼熱しているようで応援の声も聞こえる。私達は端の方に固まって座りながらバスケを眺めた。
「今どこまでいったのかな?」
綾乃はきょろきょろしながらちょうど啓太達の試合を見つめる。
「あ、ボードに書いてあるよ。啓太達勝ってんじゃん」
そう言って指を指す富田。確かに体育館の隅にあるホワイトボードの表を見るとうちのクラスが勝っている。今やっている試合も点はうちのクラスが勝っているしこれを勝てば次は決勝戦だった。
「さすがバスケ部だね。買ったらお祝いだこれは」
真奈は楽しそうに呟くが今日は体育祭の打ち上げという事で体育祭が終わったら皆でなにか食べに行く予定だがまだ何を食べるかは決まっていない。真奈はきっとお祝いよりもそっちが楽しみなんだろう。
「あっ、シュート入ったよ!」
綾乃は普段よりも少し興奮したように言う。啓太が何人か抜きながらシュートを決めたから嬉しいんだろう。あぁ、またイライラしてきた。私は気持ちを抑えながら笑った。
「本当だ。すごいね啓太」
「うん。強いんだね」
ちょうどブザーが鳴って試合が終わる。これで少し休んだら決勝だ。私達は座りながら決勝が始まるのを待った。綾乃はその間嬉しそうに啓太を目で追っていて気に食わない他ない。私はそれでも笑って話ながら決勝戦が始まると皆で啓太達を応援した。
「啓太ー!大樹も頑張れー!」
ボールをパスしながら攻める姿に富田が声を出すとすかさず綾乃も小さな声で応援する。
「頑張れ啓太君と大樹君」
「頑張れー」
私も一応合わせて応援はするものの不愉快だった。綾乃は目を輝かせてずっとあいつを見つめている。私の綾乃なのにムカつくんだけど。あんなのどこがいいんだろう。男と付き合ったってめんどくさいしやって終わるだけじゃん。私は横目で綾乃を見ながら滲み出る嫉妬に綾乃の腰に腕を回して少し綾乃に凭れた。
「な、ナギちゃん?どうしたの?」
どうしたも何もムカつくんだよ。でもそんな事は言う訳もなく私はちょっと動揺している綾乃に笑った。
「なんか、キックベース外だったから疲れちゃった」
「そっか。じゃあ、支えててあげるから休んでいいからね」
「うん。ありがと綾乃」
綾乃は本当に素直で可愛い。だけどムカつく気持ちは無くなる訳もなく私は綾乃の膝に乗せていた手を腰に回していた手で触った。今はあいつから少しでも気を逸らしてやりたい。私は関係ない話をした。
「綾乃近いうちに服買いに行かない?」
「え?服?」
「うん。こないだ出掛けよって言ったじゃん。暑くなってきたし夏服ほしいなって」
綾乃は軽く触った手に抵抗もせず控え目に軽く握って応えてくれたので私も軽く握った。綾乃はこのくらいのスキンシップなら昔からやっていたから平気だ。
「いいけど、シフト出しちゃったから休みがまだどうか分からないよ」
「あぁ、そっか。じゃあさ、休み分かったら教えて?」
これを機にまた駒を進めたい。綾乃は頷いてくれた。
「うん。分かった。楽しみにしてるねナギちゃん」
「うん」
「あ、……あのね、ナギちゃん…話は変わるんだけど…」
応援する声も雑談する声も混じる中綾乃はちょっと困ったようにもじもじしだした。また啓太の話だろうか?故意的に話を逸らしたのにイライラさせるなよ。私は仕方なく優しく聞いてやった。
「ん?なに?」
綾乃は私の催促に小さな声で私だけに聞こえるように言った。
「あの、……今日のね、打ち上げ……ナギちゃんの隣にいてもいい?」
それはつまり啓太の隣にはいたくないという事だ。こないだも逃げてきてたし恥ずかしいんだろう。くだらない。私は笑ってやった。
「いいよ。恥ずかしくなっちゃったの?」
「……うん。……なんか、意識しちゃって、緊張して……困るから……ナギちゃんといたい……」
「だからこないだのシュークリームの時も私の隣に来たの?」
ムカつく。あんなやつ意識して、私ならいいって……下にでも見てんのかよ。怒りと嫉妬は私の中で渦巻くがさらけ出しては計画が水の泡だ。私の問いかけに綾乃は手を少し強く握って恥ずかしそうに頷いた。
「…うん。……話せるのは嬉しいけど……私、なんか……困っちゃって……」
「じゃあ、もうちょっと練習しないとだね」
私はにやけそうになりながら笑った。練習したからさらに意識が向いたのだろうが陥れてやるチャンスだ。綾乃は練習を思い出したのか見るからに照れだした。
「そ、それは、……えっと……」
「しなくていいの?綾乃のためなのに」
笑いながら私は綾乃の親友として言う。私のポジションで言う言葉には力がある。綾乃は恥ずかしそうに私を見ながら小さく言った。
「それは……したい……」
私はそれだけでにっこり笑ってしまった。ほらね。やっぱり私の言葉は強い。綾乃が思うつぼで気分がよくなる。
「じゃあ、また時間作ってしようね」
「……うん…」
これで明確に予定が立てられる。予定を立てられたらもっと色を変えていかないと。私は綾乃と立てられた予定に満足していると隣で富田と喋っていた真奈が私に凭れてきた。
「なにいちゃついてんのナギと綾乃~。二人とも熱すぎなんですけど」
ちょっかいをかけて来た真奈に私は冗談を言った。
「今いいところだからやめてよ真奈」
「え、けしからぞおまえら。私も混ぜて」
「真奈はダメでーす」
「じゃあ富田が」
「富田は真奈よりダメでーす」
話に混ざってきた富田は真奈の隣から体を乗り出して上半身を私と真奈の膝の上に乗せてきた。
「よいしょ!じゃあ、富田ここで混ざりまーす」
「いや、重いから退いてよ富田」
「乙女に重いとか酷い真奈。もう絶対退かない」
ふざける富田は真奈の腰に抱きつく。真奈は笑いながら呆れていた。
「富田早くどいてー。ナギ助けてよー」
「ごめん今綾乃といいとこだから」
「え?ここでまさかの裏切り」
私達は笑いながら話しつつバスケの応援は二の次になった。
だが、バスケは余裕で優勝していた。あの後皆と話して笑っていたが優勝はおめでたいのでささやかながら皆で予定通り何か食べに行こうという話になったが富田の提案でかき氷を食べに行く事にした。今日は熱いし皆運動終わりなのでまだ時期的には少し早いけど楽しみだ。
体育祭が終わって皆で歩きながら駅に向かうと電車に乗って目的の場所に向かう。そして目当てのかき氷屋さんまで来るとちょっと行列ができているので皆でメニューを見ながら並んだ。
「大樹も啓太もお疲れ。二人ともすごかったね。話しててあんまり見てなかったけど」
メニューを見ながら笑う富田に大樹も笑った。
「話してたのかよ。まぁいいけどそっちはどうだった?」
「え?富田達は普通に一回戦敗けの敗者復活も敗けだよ」
「そんな弱かったのかよ」
当たり前に言う富田に啓太は突っ込みを入れたがまぁ、仕方ないとしか言えない。
「だって運動なんかねぇ……。それよりバスケめっちゃ皆注目してたからこれで誰か告ってくるかもよ?なんかキャーキャー言ってたし」
「いや、ないだろ」
ありそうな話をした富田に普通に言ったのは大樹だった。
「え?なんでよ?あるよね真奈」
「うん。ないよりはあるんじゃない?」
「いや、でも昔から試合しても一回もないからないよ。な?啓太」
「な。それな」
なんか悲しい話を聞いてしまったが笑えたのでちょっと笑っていたら富田は明るく言い放った。
「じゃあ、今日は頑張れって意味も込めてのお祝いにしよう」
「それいいね。今日も頑張ってたけどもっと頑張るようにって話だね」
面白いので話に賛同したら大樹は明るく笑った。
「俺、もう今年最後だから思い出ほしいし頑張るからな」
「なんか切ないんだけど。まぁ、頑張ってね大樹も啓太も」
真奈もクスクス笑っているけど二人はこれから気合いを入れていくらしい。私達はその後皆でかき氷を食べて大満足だった。
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