好きをこじらせて

神風団十郎重国

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11話

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朝ご飯も葵お手製の手料理で美味しかった。食べ終えた頃には十時を過ぎていて葵の仕事もあるし早めに帰ろうと歯磨きをして昨日着ていた服に着替えていたら葵は食器を洗い終わっていた。そして遊んでいる時はほとんど見ない携帯を見ていてこれは早々に帰らないとかな、と思った。

「由季」

声をかけようとしたら葵が私を呼んだ。嬉しそうに申し訳なさそうに寄ってくる。

「ん?なに?」

「これ……ありがとう」

葵は携帯を掌に乗せて私に見せてきた。何だかよく分からなかったけど覗いてみたら、あぁと頷けた。それは私からの連絡の画面だった。だからなんだか熱心に見ていたのか。恥ずかしいけど少し安心した。

「もう、連絡先消されたかと思ったよ」

葵はすぐに否定する。

「そんなことしないよ!…その、全然連絡しなくて…無視しててごめんね。……怖くて、見れなかったの。連絡しようと思ってたんだけど何て言ったら良いか分からなくて」

「いいよ。もう解決したことだし。怒ってないから」

ほとんど謝って気遣っている内容を送っていたことを思い出すと何だか恥ずかしいからしまうように促す。だけど葵は指でスクロールさせながら画面を見つめている。

「ううん、謝らせて。私が悪いし。由季こんなにいっぱい連絡してくれて…しかも全部私のこと気にかけた内容ばっかり。……由季も嫌な気持ちになったのにごめんね。でも、嬉しかった」

大切そうに眺めて笑いかける彼女にめげずに連絡した甲斐があったと思うと胸が満たされた気がする。

「分かったよ。もう充分だから」

それだけ言って頭を撫でてやる。嬉しそうにするから帰りずらくなってしまう。

「それよりもう本当に帰るね。もうすぐ仕事だし、色々準備とかあるでしょ?」

「うん。…分かった」

また案の定寂しそうにしてしまった。これは本当に悪いことをした気分になるから止めてほしいけど言ったところで無理だろう。私は気分が変わるように明るく話した。

「次はさ、うちに来ない?ゲームくらいしかないけどまた一緒にやろうよ?」

「…うん。絶対行く!」

「よしよし。じゃあ、色々また予定たてよ?」

「そうだね、まだ忙しいけど絶対予定空けるから。またいっぱい連絡するね」

今日はなんだか寂しそうな顔を見ずに終われそうだ。良かったと思ってまた頭を撫でてから身支度を整えて玄関に向かう。葵は犬みたいに付いて来て玄関で私を見つめる。靴を履いてじゃあ行くね、と言って笑いかけた。珍しく笑顔で彼女は見送ってくれた。

すっかり仲直りできてから私達はまた頻繁に連絡を取り合っていた。葵は仕事の忙しさがそれなりに落ち着いてきたのかまたまめに連絡をしてくるしたまに電話も掛けてくる。今日あったこと、料理のこと、興味があること、話は尽きなかった。
前と同じに戻れて私はこのやり取りがなんだか嬉しかった。

週が明けて休みの前日の夜、私は友達から当日に連絡を受けて前に葵と行ったバーに向かっていた。丁度空いていたし久々に来た連絡に即答していた。今日はまた残業になってしまったが平日の夜は案外空いている。店について目的の人物に声をかけた。まだ八時前なのに、もう結構飲んでいるようだった。

「レイラ?」

「あぁ!由季ー、遅いじゃん!何してたの?もー会いたかったよー!」

「私も会いたかったよ、久々だね」

捲し立てる彼女、レイラは椅子から立ち上がって抱きついてきた。強めに抱き付いてくる彼女を後退りながら抱き止める。

この子は透と飲み歩いている時に知り合ったキャバ嬢である。金髪でギャルのような派手な見掛けと可愛いらしい顔立ち。そして細くて華奢で小さい癖に信じられない程よく飲む。どうやって仲良くなったかは忘れてしまったがいつの間にか仲良くなってよく飲む仲になっていた。

レイラは座ってと隣の席を引いて私に促してくるから荷物を出勤していた翔太に渡して座る。

「由季助かったわ。レイラもう七時から来て超飲んでるよ」

「え、そうなの?翔太お疲れさま、後は私に任せろ」

レイラはバーテンと言うか誰にでも酒を飲ませてどんどん潰していくから翔太もそれなりに飲まされたんだろう、目が色々語っているようで、私が頷いて見せると小さく翔太も頷いてきた。

「とりあえずコカボムいれてー!しょーたー!」

「また?あんた何回飲むの?」

「今日はもう飲むだけ飲むの。由季の分と私と翔太のね」

「はいはい」

レイラは駄々をこねるように言うと渋々翔太は独特のコカボムのグラスを出して作り出した。テキーラよりはましだけどこれも強いやつだ。今日は潰れてしまうかもしれないけどレイラはなんだかんだ潰れても介抱してくれるし大丈夫だろう。一緒に潰れたらそれまでだが。

「レイラ最近仕事はどうなの?」

翔太が作っている間に私は近状を聞いた。レイラは今、都内のキャバクラで働いている。前は何回か場所を変えていたが今のキャバクラは長く続いている。それでも心配性な私は聞かずにはいられないのだ。

「普通だよ。最近指名が増えたから同伴とかアフターが多くなってめんどくさいけどまぁまぁ上手くやれてるよ」

「そっか。良かった良かった。何か困ったこととかあったら言ってよ?」

「由季いつも心配しすぎだよー。もー優しいなぁ。大丈夫だから。そんなことよりね、こないだの、優雅君にフラレた。他に女がいるって、もー本当にあり得ない!」

「え?まじ?まー、でもあれは別れて良かったんじゃない?あのバーテンだよね?」

レイラは落ち込んでいたけど私は案外安心している。この子はダメな男を引きやすくてあんまり長くは続かないことが多いし優雅と言う男はレイラの通うバーの店員でイケメンではあるが悪い噂しかない女たらしだった。恋をすると回りが見えなくなりやすいから忠告をあまり聞かないけど今回は堪えたようで

「うん、やっぱ由季の言う通りだった。もう暫くは恋愛とか無理」

と言って。シュンとしている。こういう所が憎めなくてまぁまぁと頭を撫でてやる。

「そんなの忘れて今日は久々に会ったんだから一緒にたくさん飲も?」

「うん!今日は潰しちゃうからね!」

「……レイラ、勘弁してそれは」

すぐに笑顔になるから私まで笑ってしまう。

「はい。できましたー」

すると、翔太がコカボムを三つテーブルに置いた。丸い形のショットグラスにはコカレロにエナジードリンクが混ざっていて色は入浴剤みたいで見た目はいつも思うが不味そう。でも味はショットにしてはましだ。今日は長くなりそうだ。私達は乾杯と言って一気に飲み干した。
テキーラよりはまだ飲みやすいけどこれも些か効くものがある。

「あー、これで三杯目だよレイラ」

「まだまだやるぞー!!」

グラスを回収して私にいつものお酒を作って翔太が出してくれるけどボトルで頼んでいるレイラはグラスを翔太から貰って自分で焼酎を適当に割って私にくれた。これはいつもの流れだ。

「はい、由季。いっぱい飲んでね?」

「……うん…ありがとう」

「今日は私がボトルいっぱいいれるからそんなジュース飲んでないでお酒飲んでね?」

にこにこ笑うから私はいつも断れないし断っても意味がない。翔太は頷いて見てくる。楽しくなりそうだなと自棄になりながら私はお酒を煽った。
それから、レイラの客の話や翔太の近状をお酒を飲みながら色々話した。レイラは終始客にキレていて鬱憤が溜まっているようで怒鳴りだしたりしていたから宥めながら話を聞いた。これもいつものことで笑えてしまった。私達は本当に変わらない。

「そういえば由季はこないだ来たぶりだよね?飲みに出てなかったの?」

翔太がレイラを宥めながら聞いてきてあれから透と飲んだきりなのを思い出した。ていうか、あれから葵のことばっかりだったのに今気づいた。

「私は…そうだね。透とあの後飲んだくらいでこないだ連れてきた葵と遊んでたかな?」

遊んでたとは言い難いけど、まぁそれで良いだろう。

「なになに?新しい友達?」

さっきまで怒っていたレイラはもう興味津々に擦り寄ってきてはいはいと肩を叩く。

「こないだ潰れた時に助けてくれたんだよ」

「へー、良い子じゃん!お酒飲めないの?」

「お酒弱いから全然。でも超可愛いよ?スタイル抜群だし、ね、翔太?」

「あ!それだよ、それで思い出した」 

残念そうにしてるレイラを他所に翔太は思い出したように携帯を取り出して弄りだす。何だ?レイラがもう肩に寄りかかって来ていてあまり身動きできないから少し翔太を待っていると

「確かにあの子超可愛いと思ったんだけど……あ、あった!これあの子だよね?」

と携帯を見せてきた。それは雑誌の写真みたいで可愛らしい服を着た葵がモデルのようにポーズを決めていた。
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