好きをこじらせて

神風団十郎重国

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12話

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「え?!確かに。これ葵、だね……え?どういうこと?」

「こんなに可愛い子なの?絶対No.入りできるじゃん!」

どういうことだ?違う意味で二人で驚いていると翔太はまた携帯を弄り出した。仕事について詳しく聞いてなかったけどつまり有名人だったの?思考回路が止まる。酔っぱらっているし全然理解ができない。

「何か見たことあるなーと思ってたら最近深夜帯の短いドラマみたいなのに出ててさ。調べてみたらノーナのモデルらしいし、本当驚いたよ。由季知らなかったの?」
 
「え?うん。全然知らないよ、仕事の話しないし詳しく聞いてないもん。驚き過ぎてなんか理解できないけど私芸能人に介抱されたの?やばくないか」

テレビも雑誌も見ない私にも分かる有名な雑誌ノーナに葵が載っててしかもドラマも出てる?嘘でしょ?あの甘えたがりで可愛い葵が?確かに最初に会った時から凄い綺麗で可愛くてスタイル良いとは思ってたけど混乱する。

「……あ、でも、仕事は雑誌とかテレビ関係って言ってたわそういえば」

ふと思い出した。詳しくは言ってないけど言ってはいた。すると翔太はため息をつきながら携帯を弄り、ほらとまた携帯を見せてきた。そこには葵のプロフィールが載っていた。受け取ろうとしたらレイラが興味津々に携帯を横から奪い取って食い入るように見ている。

「見たい見たい!えっとー、源氏名…じゃなかった芸名は英語でAOIで、誕生日は十一月二十日。二十五歳で身長は百六十八㎝、趣味は料理で都内でスカウトされて十八歳からモデルを始めるも可愛いらしいルックスが売れて若い世代から人気を集めついに深夜ドラマの深夜の恋事情にて女優デビューを果たす。って、深夜の恋事情ってあれ私見てるよ?結構おもしろいやつだよね?確かにこの子出てたよ」

レイラが相変わらずテンション高めで翔太に話しかけているが的を得た音読に葵のことであると納得がいった。
誕生日、年、趣味、そして最近のドラマデビュー。だから仕事が忙しくなると言っていたのだ。それに葵の元カレも発言は本当にあり得なかったけど随分とイケメンだったしあれは同業者だったのか。全てに合点がいく。随分分かったように話していたけど葵について何も知らなかったのを思い知った。葵の性格から自分から言わないのは分かるし私も聞いてないけど驚きすぎてどうしたら良いものか……漠然とする。

「これ、私、……どうしたらいいの?」

もうドラマの話をしてる二人に問いかけるとお互いに考えながら首を傾げている。これから変わらずに対応はしていくつもりだけど芸能人じゃ何か考えないといけないのではないか?

「んー別に良いんじゃない?今まで言わなかったのはただの友達だと思ってるってことじゃないの?それに自分から芸能人です、なんて言わないでしょ」

「確かに!でも、遊ぶ時とかは気を付けてあげたら?ファンとか多そうだし、オフに客と会った時みたいになっちゃうでしょ?」

「そっか、そうだよね」

確かにレイラが言ったことはちょっとあれだけど一理あるか。遊ぶ場所とか気を付けないとだな。ていうか芸能人とかいきなり言われてもあんなに近くでスキンシップしてたし家に泊まって一緒に寝てるし自分にビビる。頭撫でまくりだしハグしまくりだし私一般人だしこれ大丈夫なのか?少し悶々と考えているとレイラがまたお酒を注いで肩を掴んできた。もう目が据わっている。

「まぁ今度私にも会わせるってことで、とりあえず飲もう?飲んでるとこ見せて?」

「え?」

「由季、無駄な抵抗は止めろ」

翔太の諦めたような物言いに私も諦めてとりあえず一気に飲み干した。レイラは嬉しそうだ。
それから暫くして透が合流してレイラは透とも知り合いなのでかなりお酒が進んだ。葵のことは置いといて、それはもはや普通の人が飲むレベルではないくらい飲んだ。たくさん話して笑って楽しかったけど、私は気づいたら潰れていた。


起きたら見覚えのある部屋にいた。ここはレイラの家のようだ。酷い胸焼けと頭の痛みに昨日の事を思い出すも記憶が曖昧でどうやってここに来たのか分からない。体を起こそうとするも横からレイラに抱き付かれていて起きれない私は横で眠っているレイラの髪を撫でた。

「遥?起きて?それか離れて」

何も反応しない。困った私は本名で名前を呼び続ける。源氏名のレイラは外で使って二人の時は遥と呼んでほしいと言われている。外でもうっかり呼びそうになるけど今は随分慣れたなと頭をポンポン撫でてみた。

「んー…ゆ…き……?」

目を擦りながら眠そうにやっと返事をしてくれて、顔だけ遥に向けると化粧を落とした幼くて可愛い顔が私を見ていた。

「遥、離れてくれない?起きれない。ていうか私昨日どうなったの?また部屋まで連れてきてくれて本当有り難いけど記憶が曖昧で思い出せない」

遥は唸りながら一回離れるも今度は腕に抱きついてきて結局動けない。この子も随分甘えたがりであったのを忘れていた。

「昨日、コカボムいっぱい飲んだ後に由季潰れちゃったから、透が由季のこと運んでくれたんだよ」

「ああ、そうだった…のか。まぁいつも通りか。あ、私お金払った?」

「うん、ちゃんと払ってたから大丈夫。小銭落としまくってて透が笑ってたよ?」

会計も記憶が曖昧だったけど良かった。それにしても透も遥も酒が強すぎて本当に敵わない。ショットは沢山飲んでボトルも数本開けたのに私だけまた潰れてしまったようだ。全く二人にはため息がでる。遥はクスクス笑いながら腕に擦り寄って来た。

「由季、昨日おもしろくて楽しかった~。もう最高!本当に由季って楽しいよね?」

「はぁ、私で楽しみすぎだから。とりあえずシャワー貸して?ちょっとすっきりしたい」

「えー?じゃー、ぎゅーって抱き締めて?じゃないと貸さない!」

遥は子供のように腕から手を離すとからかうように甘えるように条件を言ってきた。この子は葵同様に距離が近いしスキンシップを好むからよくくっついてくるのだ。またかと思いながらはいはい、と優しく抱き締めると笑いながら抱きついてきた。

「やったー!最近全然会えなかったからベタベタしよーね?」 

「分かったから。もうシャワー行かせて?」

「んー、しょうがないなぁ…」

渋々離れると早く帰ってきてねと笑って解放してくれてようやくシャワーを借りられた。熱いシャワーのおかげで頭も体もスッキリした。シャワーから出て髪を乾かして戻ると遥はもう起きていてダブルの大きいベッドの横のテーブルに肘をついてテレビを見ていた。
この部屋は相変わらず生活感がない。遥は基本自炊はしないからキッチンは新品同様だし物も散らかさない。部屋には寝に来てるだけと言っている通りで、ちゃんとご飯は食べているのか疑う。いつも食べてるとは言うけど私の心配は尽きない。

「あ、早かったね。お帰り」

「うん、ありがとう。遥はシャワー浴びたの?」

「うん!私は昨日って言うか今日浴びた。由季どっち食べる?」

テーブルの上にはコンビニで買った胃に優しそうなスープが2つあってお湯を容れて待ってたんだろう。何でも良いよと言うと少し悩んでから決めていた。

「昨日コンビニで適当に買ったから食べたかったら食べてね?」

テーブルの上のコンビニの袋の中にはおにぎりや軽く食べられるパン等色々入っていて、私は小さくお礼を言って遥の隣に座る。私もスープを飲みながらテーブルの前のテレビを見た。何やら録画していたのであろうドラマが映っていた。

「昨日話してたやつこれだよ!幼馴染みとの三角関係?ってやつでね、面白いんだよ」

「ふーん。……あっ、本当に葵出てきた」

葵はどうやら幼馴染みに片想いしている役で主演ではないが重要な役柄らしい。主演はあの夜のバカな男で、見ているのが複雑だった。この仕事を始めたからあのバカ男に言い寄られていたのか。それにしても葵にしてはえらく滑舌に話していて表情もいつもと違っていて不自然というか初めて見る彼女の姿に違和感があって、まるで他人のようだった。いつもの内気な葵はそこにはいない。

「この子本当に綺麗で可愛いよね。由季、お酒のおかげで凄い子と知り合っちゃったんだね」

遥はにこにこ笑いながらおにぎりを取り出して食べている。それには本当に同意する。

「私もそう思うわ。……なんか理解できたけど、理解できない」

「?由季大丈夫?私もこの子に会いたいなー。ぶっちゃけ性格とか結構キツイの?女優とかモデルってそういうじゃん?どうなの?」

目を輝かせながら聞いてくる遥に苦笑いしながら答えた。残念ながら葵はおとなしい子なのだ。

「性格は普通に良い子だよ。ちょっと心配性って言うか気にしすぎちゃう所あるけど、おとなしい感じの子で恥ずかしがり屋で甘えたがりなとこは遥に似てるかな?」

「え?そうなの?なんか嬉しー!ねー、私にも今度会わせてよー。会いたい!」

「んー?でも仕事が忙しいみたいだし、ちょっと人見知りだから。まぁ機会があったらね?」

「えー。残念だけど、絶対だからね」

葵の事を考えると遥はマシンガンのように話すし、似てはいるけどタイプが異なりすぎるというか、会わせてもたじろいで緊張するだろう、主に葵が。遥はたぶんそんな事お構い無しだし。ここで遥が頷いてくれて良かった。不満そうだけど一応は頷いたから大丈夫だ。

時間を確認すると十二時を過ぎていた。随分寝ていたが朝方まで飲んでたんだ、早い方だ。私は思い出したように鞄を漁る。何か物をなくしたり忘れたりしてないか見て無事なことにホッとした。おもむろに携帯を取り出してチェックしていると葵から連絡が来ていた。今日の夜私の家に行っても良いか?と言う内容にドキッとした。 

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