好きをこじらせて

神風団十郎重国

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20話

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「じゃあ、あんまり一人にならないようにして一人になるなら連絡。私にはいつ連絡しても良いからね?とりあえず来週は泊まりに行くけど、後なんかしてほしいことある?」

とりあえず明るいうちに帰してあげたいので今日は早めに解散する予定だ。色々取り決めを決めたが最終確認をした。葵は私の言うことに全部従ってきたから少し不安だ。この子の私への絶大な信頼感は驚くことがある。

「……毎日…電話してもいい?」

「うん、良いよ。後は何かある?」

「ない」

「よし、じゃあ、送っていくよ。もうすぐ暗くなるから、今日は早く解散しよう」

毎日電話する事になったけどこの子の不安が解消するなら安いものだ。私は頭を撫でて立ち上がる。
これから大丈夫か不安だけどとりあえず対策はできたし、ストーカーが早く捕まるのを願うしかない。葵が何かされないと良いけど私にできることは何でもしてあげようと思う。

駅まで雑談しながら歩いて改札で葵と別れた。本当は葵の家まで送って行こうと思ったけど悪いから良いと断られた。まだ明るいから引いたけど葵の後ろ姿に不安が募る。私のせいで一人にさせてしまって、さぞ怖い思いをさせた。なるべく一緒にこれからはいてあげないと。私は心の中でそう決意した。

それから本当に毎日電話をしてストーカーに何かされてないか確認して安心できるように色々話してあげた。葵は一人で家にいるのが不安のようで声が暗く元気があまり無さそうだけど話していくに連れていつもの葵に戻っていく。だけど電話を切る時はまた逆戻りで私は少し困った。

また数日後には私が葵の家に泊まりに行くと葵はずっと私にくっついていて離れなかった。連絡をしたり電話は頻繁にしていたがやはり不安は不安なのだろう。ご飯を食べてお風呂に入る時くらいしか離れていることはなくて後はずっと隣に引っ付いているから葵を抱き締めてあげたり頭を撫でてあげたりしていた。葵は特に何も言わないけれどそれが良いみたいで強く抱きついてきて離れなかった。これで安心できるならと私は今まで以上に優しく葵に接した。

しかし、そんな日々が続くもストーカーは変わらずに写真や手紙を送りつけてくる。今のところ葵が一人で出歩くのは控えているので遭遇したりはないがそれがかなり堪えているようで電話越しにとても怖がって怯えている。確かに写真は葵が写っているのばかりで葵への愛を書いた手紙が添えられていて本当に気持ち悪い。しかも、そのせいであまり出かけられないから葵は情緒不安定みたいで泣き出すことも増えた。どうしたものか。私も葵の状況に悩んでくる。できる限り一緒にいてあげたいがお互いに生活がある。

そこで私は、何か気分転換をしてあげたいと考えた時に丁度遥から連絡が来た。それは以前、話をしていた花見に行こうという内容だ。これは良い気分転換にもなるのではないかと思った。
二人で出掛けた方が葵の性格的には良いけど何かあった時もあるし葵のフォローは私が気にかけてあげれば良い。私は葵に花見に行かないか連絡をした。私の友達の説明をして、いい気分転換になるよと話す。もしかしたら断られるかもしれないと思ったもののすぐに葵から連絡が来て、行きたいと言っていた。それに安堵して遥とも予定を確認しながら合わせて日曜日に近場の川沿いの桜を見に行くことになった。

日曜の昼前に私は待ち合わせの駅前に来た。葵はもう着いていて今日はいつもの変装に帽子も被っている。これはかなり印象も雰囲気も変わるから気づく人は少ないだろう。それからレイラが来て、翔太が車で来た。あと一人黒崎という、飲み仲間のサラリーマンもいるが黒崎は川沿いの土手の空いてる場所で場所を取って待機しているらしい。黒崎は愛称として黒や黒崎と呼ばれていて愉快な楽しいやつだけどよく私のように潰されているかわいそうなやつでもある。
皆お互いに挨拶をして車に乗り込むもレイラは葵の横を確保して早速がっついていた。

「葵ちゃん?ていうか、さんか!本当に可愛い!!超顔小さいしスタイル良すぎない?なに食べてるの?本当に可愛いー!!会えると思わなかった!!嬉しすぎる!死にそう!」

「あ、……ありがとう、ございます」

「由季と本当に友達なんですね!ちょっと嘘かもって疑ってたけどもう信じた!!今日は楽しみましょう!色々話したいし!」

「は、はい」

葵は少し引いているけどレイラは気付いていないので、私は苦笑いしながら助手席から間に入る。レイラは悪気はないのだ。

「ほら、レイラ。そんなに詰めよったら葵が驚くから」

「あぁそうだったね!ごめんなさい。あ、そうだ!私こないだのドラマ見たんです。本当に良くて感動しました!あれは続編でないんですか?」

悪気はないが芸能人の葵に会ったことにより興奮気味で私の声はあまり意味をなさなかった。葵はたじろぎながらも答えていてかわいそうだけどレイラが止まらないので車はとりあえず頑張ってもらおうと程々にねと軽く言って前を向いた。

「黒崎は場所取りいつからやってるの?」

翔太に質問する。

「何か空いてる穴場あるから本当にちょっと前だって。黒もマメだよな。レイラが言い出したら即オーケー出して一番乗り気だよあいつ」

「あぁ、黒崎はレイラが好きだからね。相手にされてないけど」

「本当に。あれはただのバカだからな」

呆れたようにお互いに頷く。そう、黒崎はレイラが好きだけどレイラは全く相手にしていない。何をしても完全に空回りな黒崎はそれでもめげない。あの情熱は誉めたいけどよくレイラにも潰されているのにこれだから呆れる。

翔太と適当に話ながら桜が咲いている川沿いに着く。道は少し混んでいたけどすんなり着いた。葵はその間レイラに質問攻めにされていて大変そうだったけどレイラは楽しそうだった。車を停めて降りると近くに屋台が出ていた。土手を上った道沿いにズラリとたくさん並んでいる。

「レイラ、今日はBBQ的な感じなの?」

私の問いに少し高いヒールで来ていたレイラは歩きづらそうに答えた。

「うん、黒崎が小さいの用意してるみたいだけど、本当に小さいから屋台で何か買って来てって言ってたよ」

私は見かねて自然に手を差し出すとぎゅっと腕を掴んでくっついてきた。お礼を言うレイラはいつも大体高いヒールを履いている。可愛くないからヒールがないのは履きたくないと、どんな場所でも譲らないのだ。今日も川沿いと分かっていたはずなのにこれだ。少し呆れてしまうけど可愛くてあまり強く言えない私も私だ。

「レイラ、今日くらいはヒールなくても良かったんじゃないの?」

「だって、可愛くないんだもん!」

「でも歩きづらいでしょ?」

「頑張るから良いの!!」

「えぇ?でも、怪我するよ?」

「由季がいるから平気だもん!」

拗ねたように言うレイラに翔太はさぞ呆れている。これは私に矛先が向きそうだと苦笑いしていると

「由季、おまえが甘すぎんじゃないの?おまえレイラの保護者みたいなもんなんだからもっと管理しろ」

案の定言われてしまった。翔太は私が甘いのをよく分かっている。

「だって聞かないんだもん。しょうがないでしょ?」

「甘やかしてるだけだろーが」

「…否定はできない。……もう止めよ!とりあえず屋台!屋台で何か買って行こう?」

「はぁ」

溜め息をつかれたけど話を終わらせて屋台の方に向かう。とても怒ったり強く言うなんて私にはできないのだ。屋台はそれなりに数があって良い匂いがする。レイラはまた興奮気味に目を輝かせて見ている。子供みたいで微笑ましい。

「わー!とりあえず焼きそばとたこ焼きと後チキンも美味しそう!私焼きそば買ってくる!」

地面が歩きやすくなったから少し走って焼きそばを買いに行ってしまった。相変わらずなレイラを他所に葵を見ると葵もこちらを見ていた。葵は目線が合うと慌てたように視線をあからさまに逸らす。どうしたのかよく分からないけど話しかけた。

「何か食べたいのある?」

「何でも、良いよ」

「そっか、翔太は?」

「俺も何でも」

「じゃあ、適当に買うか。翔太レイラに付いてってあげて?私はお好み焼きと、唐揚げとか買っとくから他頼むわ」

「はいよ」

翔太をレイラの所に向かわせて葵に行こうと言ってお好み焼きの列に並んだ。桜は少し散ってはきているがまだまだ綺麗で桜を見ながら話した。

「桜、きれいだね」

「うん」

「なんか、レイラが質問攻めしちゃってごめんね?あれは悪気がある訳じゃなくてね、レイラは葵のことテレビで見てから好きみたいで」

「うん、大丈夫だよ。ちょっとビックリしたけど。…可愛い子だね。レイラちゃん」

「あぁ、そうだね。レイラは本当に子供みたいで可愛いから私もあんまり怒れないんだよ」

笑いながら答えるとそっかと葵も小さく笑っていた。お好み焼きを買って唐揚げを買いに行く。人が多いからぶつからないように気を付けていると二の腕ら辺をぎゅっと掴まれた。どうしたのか振り向くと葵がこちらを見て控えめに私の服を握っていた。何か食べたいものでもあったのかと思ってどうかしたと問いかける。

「あ、あの、人多いから…掴まったっていうか」

「あぁ、なんか食べたいのあったのかと思った。腕組んでも良いよ?」

「え?!そ、それは…その……いいよ。このままで平気だから」

凄く動揺していたけど断ってきたから頷いて唐揚げを買った。遠慮しなくても良いのにと思いながら他にも適当に買いながら葵と色々話してレイラ達と合流した。合流した瞬間に葵は掴むのを止めてまたレイラに捕まっていて、私はそれに心の中で謝罪と応援をしつつ見守っていた。レイラは買った物を全部翔太に持たせていて翔太も人のこと言えないじゃんとジト目で見るも無視された。全くなんなんだか。ムカつくやつめ。
私達は黒崎の待っている場所まで歩くと眼鏡をかけた黒髪の細くて背の高い黒崎が小さいBBQセットを準備して待っていた。

「黒崎お待たせ~!結構良いじゃん!もーなんか食べたいし飲みたい!」

「あぁ、皆!やっと来たか、もう準備できてるよ」

レイラがレジャーシートの上に一番に座って寛ぎだした。翔太も荷物を置いて座るも私は軽く黒崎に葵の紹介をして私達も座った。桜もよく見えるし人もそんなにいないし良い場所だ。黒崎も頑張ったようだ。私達は飲み物を用意してやっとお花見を開始した。
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