好きをこじらせて

神風団十郎重国

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19話

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葵の恋愛話を終えてとりあえずホストの名刺は全て捨てた。葵はなんだかほっとした顔をしていた。それにしても、葵に好きな人がいるとは本当に上手く行ってほしいものだけど少し寂しくて胸がもやつく。

「由季、今日は…予定ある?」

冷蔵庫から適当に飲み物を探っていると葵が控え目に聞いてきた。今日は特に何もない。休みの日の前日に予定を入れることが多いから休みの日は大体空いている。

「んー、ないけど。あ、そろそろ帰る?送って行ってあげるよ」

「…まだ帰りたくない」

葵は我が儘と思っているみたいで暗い表情をするけど私はそんなこと思わないので明るく答えた。

「うん。じゃあ、ゲームする?こないだ友達から借りたんだけどヤバイやつあるよ」

「…うん、やる!」

適当に飲み物を取ってテーブルに戻ると飲み物を置いてからはいはいと返事をしてゲームのコントローラーを取って起動する。
嬉しそうな葵は私の隣に擦り寄って密着してくる。いつもの定位置だ。

「これね、ゾンビ出てくるやつなんだけどゾンビが強くて死なないし本当ビビるよ」

「え?ゾンビ?怖いやつなの?」

驚いたような声にそういえば葵は本格的に戦ったりするのは苦手でやらないと言っていたことを思い出した。

「あ、大丈夫。そんな怖くないし教えてあげるから。それに銃で撃つだけだから簡単だし」

「本当?やったことないよ」

ゲームが始まる。ゾンビと戦うアクションゲームだけどそんなに操作は難しくないから大丈夫だろう。早速キャラを動かしながら説明をする。

「大丈夫だよ。ほら、まずここで視点動かして、でここで撃つ。それでこれで動かしてリロードかな」

一通りやって見せると葵はうんうんと頷く。私はコントローラーを渡して葵にやらせた。教えた通りにさっきのことをやり終えた葵は大丈夫そうだ。

「うん、大丈夫。じゃ、進もう!ここから右に行って道なりに歩くとゾンビいるから皆倒す!頑張ってね」

「うん。なんか怖いけど、ちゃんと出てくるとことか教えてよ?」

「最初は怖いとこないから大丈夫だよ」

葵は少し怖がりながらキャラを動かして進めていく。すると早速ゾンビが奇声を上げて走って出てきたと同時に葵も大声を上げた。

「わぁ!!なに?!早い!怖い!!」

いろんな場所を撃ちまくっていてゾンビには全く当たっていない。大丈夫か葵。慌てて怖がってる葵はおもしろくて、死んじゃうよ葵、と言うもゾンビに怖がってそれどころじゃない。

「葵ここは別に怖くないとこだしこの先がね……」

「きゃあぁ!!!怖い!!!由季!!」

葵が叫び声と共にコントローラーを手放して横から抱き付いて来た。そして、顔を隠している。
キャラがゾンビに攻撃されて画面にゾンビがアップされている。やられている音にビビりまくって強く服を掴んでいる葵。その姿が可愛いし本当に笑える。開始数分でこれとは何か悪いことした気がするがそんなに怖くないのに慣れてないからか。葵が手放したコントローラーが震えているから私が代わりに操作した。

「葵大丈夫だよ?ほら、倒したから。ビビりすぎだよ」

「ほ、本当に倒した?怖い」

まだ顔を隠してる葵は私が倒したゾンビの奇声にまた怯えている。こんな怖がりだったなんて知らなかった。ゲームを止めて優しく肩を撫でる。

「大丈夫だってば。まだ始まったばっかりだよ?」

「だって、怖いしびっくりしたんだもん!何で教えてくれないの?」

顔を上げて少し怒ったように抗議する葵はそれでも服を握ったままだ。怒っても可愛いから迫力はないけど宥めるように頭を撫でた。

「教えたじゃんさっき。ごめんね。そんなに怖がると思わなかったんだよ。じゃあ、私やるから見てる?」

「…だってリアルだったから。…由季がやってるの見てる」

「はいはい」

葵は腕に強く抱きつきながら若干顔を腕に隠している。そんなに怖いなら止めても良いけど、大丈夫か。少し不安だけと開始した。すぐにゾンビがまた出てきて戦う。

「うわ、なに?……怖いっ!」

ゾンビを倒した時の奇声に怖がってまた顔を隠している。本当に大丈夫なのか。

「……止める?違うのもあるけどそっちやる?」

あまりに怯えるから見かねて提案するも首を横に振って明らかに強がったように否定した。

「やる!見てるから、早く進めて?」

「え?あぁ……うん。分かったけど、嫌だったらすぐ言ってね?」

「大丈夫だから」

なぜか強がる葵は腕にまた強く抱き付いてきた。全く大丈夫そうじゃないのに珍しい態度に不信に思う。たまに葵はよく分からない時があるけどとりあえずゲームを進めた。だけど葵はずっと驚いてばかりで肩を震わせて時おり顔を隠したりしていて、こっちの方が驚いてしまう。進めている途中に何度か止める?と問いかけても大丈夫と凄むから止めれないし。そのまま葵の驚く声に驚きながら進めるがとりあえずボスを倒して休憩という名目で一旦強制的に電源を切った。

「ちょっと、怖かったね?ごめんね」

「大丈夫」

全く大丈夫そうじゃない葵は疲れたような表情をしていて、私もなんだか疲れた。アクション系とホラーと言うか驚くやつは苦手なんだなと改めて理解して次からは気を付けようと思う。私の腕に凭れかかって来た葵にばつが悪くなってとりあえず違う話題を話した。

「あー、葵さ、最近仕事はどうだった?」

「仕事?んー、こないだドラマに出たからそれの影響で取材が増えたかな?」

「そっか、良かった良かった。あれ見たよ?葵別人みたいでビックリした。でも葵の元カレに片想いみたいな感じだったから違和感が凄かったよ」

あんな風に言い寄る姿を見てからドラマを見たからあまり感情移入できなくて申し訳ないが見てて葵がかわいそうだった。葵も思い出したように言う。

「あぁ、そうだよね。何かあれで勘違いされた?みたいであの頃は本当に大変だったよ。でも由季のおかげでもう言い寄られることもないから大丈夫だよ」

「なら良かった。にしてもあれでかなり人気も出たみたいだし体調とか本当に平気?」

「うん。大丈夫だよ?疲れる時もあるけど、平気。そんなに心配しないで」

笑う葵は大丈夫そうだけど芸能人だし色々あるだろうし私は心配性だから心配は完璧には拭えないけど頷いた。

「何かあったらちゃんと言うんだよ?私で良ければ助けになるからね」

「…………うん」

不自然な間は葵が何か考えているようだった。少し視線を下げるしどうしたのだろうか。悩み事か?一ヶ月も葵と話していなかったんだ何かあってもおかしくはない。葵は言いずらかったり考えていると間が空きやすいから、私は体を葵に向けて話しやすいように目線を合わせて小さく笑いかけた。

「何かあった?何にもなかったら良いけど、どうかしたかなって思って」

「う、うん。……あの、……」

言うのを迷っていそうな葵の手を優しく握ってあげる。大丈夫な事が伝わるように。

「うん、なあに?」

優しく話しかけると手を握り返してきて言いずらそうに話した。

「あの、……今ね、今、その……す、ストーカー……されてて……」

「え?ストーカー?!」

衝撃的な発言に心底驚く。ストーカーってあの家ついてきたりするやつだよね?やっぱり芸能人だから熱狂的なファンがいるのか、でも今時のそういう人って何するか分からないし危ないし会ったら殴った方が良いのか、動揺して色々考えてしまう。

「そ、それ大丈夫じゃないじゃん!何ですぐ言わないの?」

「え、あの、言いずらかったって言うか、心配かけちゃうかなって……ごめんなさい」

少し強めに言ってしまったから驚いたようにシュンとして謝ってくる葵にハッとする。私が怖がらせてどうするんだ。

「ごめん、動揺しちゃって、怒ってないから。それいつからなの?」

「えっと、二ヶ月はしないけどそのくらいから。最初はなんか、視線を感じるなくらいだったんだけど、ここ最近は…家に私の写真とか送られてきて…、なんか変な手紙も入ってて。こ、怖くて、一人で歩いてると付けられてる気がするし、不安で家にいても怖いし、どうしたら良いのか……分かんなくて」

どんどん目線を下げて下を向いてしまう葵は本当に不安がっていて声も怯えている。早く気づいてあげれば良かったと後悔する。私とのことがあったから無理だったけどあんなことしてる場合じゃなかった。

「それ、事務所とかマネージャーさん?とかに言ったの?」

「うん。警察に連絡してくれてパトロールとか増やしてもらったらしいしマネージャーも極力一緒に行動してくれる。あとタクシーとか使うように言われてるけど、やっぱり怖くて、気持ち悪い。一人でいると不安で、あんまり……眠れない」

弱々しく語る葵は私の手を強く握った。安心させるように私も握り返して背中を撫でる。相手は何してくるか分からないし家もバレてる、相当怖かっただろうに。こんなに葵を一人にしておくべきでなかった。後悔するも後の祭りだ。

「じゃあ、極力私も葵と一緒にいるよ。眠れないなら電話したりとか泊まったりとかするし、どうしても一人になっちゃうなら連絡して?いられたら一緒にいるから。それにストーカーに接近されたりとかしたら即逃げて連絡する!いい?」

「うん。分かった。ありがとう」

「ごめんね、気付いてあげれなくて。それにしても家まで分かってるなんて…何かイタズラとかされてない?」

「…たまに、インターホン押されて……誰もいないことある。写真も、手紙も、最近毎日あって……怖いし、気持ち悪い」

振り絞るように言って頭を私の胸に預けて服の袖を掴む葵。私は優しく頭を撫でてあげた。気持ち悪いやつだしこんなに葵を怖がらせて許せない。どうにかしてやりたいけどどうしたものか。接近するにも危険だ。それに葵がいないとストーカーは現れないだろう。私はとりあえず葵が落ち着くまで優しく抱き締めてあげてから昔護身用で買ったスタンガンを葵に渡した。使い方を教えて何かあったら使えるようにできるだけ身近に置いておくように指示する。

それから葵のスケジュールと私のスケジュールを確認して休みの日はなるべく泊まるようにした。心配だから私の家に泊まるように促したが私に何かあったら嫌だからと言うから葵の家に泊まることにした。こちらとしては逆だけど葵があまりに強く言うし何かあっても私が最悪盾にはなれる。何も運動とかはしてないけどいないよりはマシだ。
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