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30話
しおりを挟む散々飲まされて久々に吐いて潰れた私は気付いたら透に激しく体を揺さぶられて起きた。酒が回りすぎて抵抗できない。体が揺れすぎて気持ち悪かった。
「おい!起きろ!まだ酒が残ってるぞ!全部飲まないと帰れないぞ!!」
うるさすぎる声は頭に響く。
「うぅ、ちょっと、や、……やめろ本当に」
「早く目を覚ませ!死ぬぞ!」
「もう、起きてるから!本当に揺らさないで!」
私が強く言うとやっと体を揺するのを止めてくれた。力強すぎるからと思うけど、飲みすぎて頭は回らないし気持ち悪いし記憶が飛び飛びだ。今何時だ?色々と状況が掴めない。透は全く変わった様子がなくて声が大きくてうるさかった。
「ほら起き抜けの一杯飲んで帰るぞ!」
よく分からないけど透からグラスを渡されたから受け取って口に含む。お茶のような味がするけど薄い?
「ん?これ水?」
「いや、酒だよ。おまえもう味すら分かんないのか?」
真面目な顔で答えられてムカつくけど適当に返した。
「そうみたい。そろそろ死ぬのかな…」
「おまえが死ぬとかあり得ないけどな!」
味の薄い酒を飲みきって冗談を言いながら立ち上がるとよろけてしまうがすぐに手が延びてきて支えられた。
「由季、危ないよー!もう大丈夫?今日も楽しかったね」
レイラが支えてくれる。助かったがこいつはまだまだ元気なようだ。頬に顔を擦り寄せてくるのがくすぐったくてうざかった。今は止めてほしい。
「ちょっとうざいから。ていうか、歩けない、もう色々無理だわ」
「うん!うん!良いよ!本当ストレスなくなったね!さ、もう家に帰ろう!!」
レイラのその声に透は立ち上がった。
「そうだな!おーい!チェックして!」
頭がくらくらして意識が危ういけどもう帰るようだし財布を鞄から取り出そうとするとレイラがその手を掴んで止めてくる。
「由季?今日は透の奢りだから大丈夫だよ?」
「あぁ、そうか」
そんなこと言っていたな。忘れていた。私達に遠慮はないし、じゃあ良いか。透は会計が終わったらしくレイラと交代して私に肩を貸しながら店を出た。ママは何か口うるさく言っていたが適当に流しておいた。
「よーし!戦士達よ!後は私の家に出陣だー!」
レイラは私達の前を歩きながら元気よく拳を上げた。なぜこんなに元気なのか理解できない。
「おい、レイラも手伝えよ」
「えー?私か弱いし、指示係だから指示しか出しません。さぁ、私に付いてこい!」
元気なレイラはよく分からないことを言っていてうるさい。ほぼ透に頼りながら歩いていたが眠いし限界が来て足の力が抜けると目を閉じて地面に座った。
「おい?どうした?」
「もう……私はだめだ。皆先に行って」
「由季何言ってんだよ?これから帰るだけだぞ」
「もう歩けない」
透は肩を揺らしてくるけど私はここまでだ。もう疲れた。
「いや、歩けよ?おまえは一生歩くしか能がないだろ」
「はぁ?あんたみたいなバカに言われたくないんですけど。なんて屈辱なの…穴掘って埋めてやりたい」
行き過ぎた冗談はいつものことだけど、透に言われて腹立たしくて立つ気にならない。
「由季それ楽しそー!私も手伝うから埋めてみよ!?それで首だけ出して逃げちゃおーよ!」
「はぁ?そんなことより本当に寝るかもしんねーから早く起こすぞ!レイラも手伝え!」
楽しそうなレイラを置いといて透は手を引っ張ってくるけど体に力が入らないし眠いしもうだめだ。するとレイラが抱き締めてきたらしく胸に顔を押し付けられる。息が苦しくて困る。
「ゆーきー!!起きて!帰ったらすぐに寝て良いから?ね?」
「……苦しいから、離して」
強く抱き締められてから頭を離されて苦しさから解放されると顔を両手で挟まれる。さっきからずっと上機嫌にレイラはにこにこ笑っている。
「由季可愛いなぁ。シラフだとすっごいまともなのに、お酒入るとダメダメだよね?」
「そんなの皆そうでしょ」
正論に正論で言い返すも、レイラはにこにこ笑う。
「私は変わらないもーん!ねぇねぇ、チューしても良い?」
めんどくさいレイラの駄々が始まった。
「やだ…」
「えー?だめー!だめです!勝手にしちゃうもん」
抵抗もできずに左右の頬に何回かキスを勝手にしてきたレイラはどうやら本当に機嫌が良くてだいぶ飲んだようだ。そうじゃないとキスなんかしてこない。珍しいなと思いながら満足そうに笑うレイラは最後におでこにキスをして私の両手を引っ張る。
「可愛いから奪っちゃったー!早く帰ろう!透も手伝ってよ?」
「もうタクシー呼ばね?」
「はぁ?もう少し歩かないとないよ!そこまで我慢!」
「はぁ、しょうがねーな」
二人に引っ張られてようやく立つもふらつく私を見かねて透はほとんど無理矢理持ち上げるみたいに私を横から支えながら歩いてくれた。ありがたいけど体が揺れて少し気持ち悪い。
「ゆ、揺らさないで…!」
「はぁ?歩けば揺れるだろ!せっかくの厚意に…迷惑料払えよな」
「透、女々し過ぎ!なにそれ!だから彼女ができないんだよ!ていうか由季はいつもこうでしょ!」
「確かにいつもだな…」
一言多いレイラになんだかんだ言いながら私を気遣って歩く透。二人は何か話して笑っているようだけど頭がぼんやりしていた私はタクシーに乗るなりすぐに眠ってしまった。
次に目を開けたらベッドの上で隣には遥がいた。昨日の記憶が曖昧だけどここは遥の家だ。そういえばタクシーで遥の家まで来たんだった。二日酔いで頭が痛い。本当に飲みすぎた。
「おはよー。よく眠ってたね」
「……おはよう」
隣で横になりながら私を笑って見つめる遥は前から起きていたみたいだ。
「昨日のこと、もう覚えてないでしょ?」
「曖昧だけど覚えてるよ」
起きてなんとなく思い出してきているが頭が痛すぎる。
「本当に?昨日もすっごく楽しかったよ、道端で座っちゃうから楽しくなっちゃった」
嬉しそうな遥。楽しそうで何よりだ。
「それは、…あー…そんなことあったかな」
「ほら覚えてないー!せっかくチューしてあげたのに」
頭が痛いながら考えると確かにそんなこともあったとうろ覚えに思い出した。全く何を考えているのか。楽しそうな遥を他所にベッドから起き上がる。
「とりあえずシャワー貸して」
「どうぞ!どうぞ!」
ゆっくりと歩きながらシャワーを借りる。
熱いシャワーでのおかげで覚醒してハッキリと目が覚めた。本当に久々に飲み過ぎたみたいで記憶は飛び飛びだけど、やっと思い出しては来た。久しぶりに会って楽しくてはめを外し過ぎた気がする。二日酔いはあるけどまぁ、楽しかったから良しとしよう。
「ねぇねぇ、こことかどうかな?」
シャワーから出て軽く一息ついていると遥が雑誌を持って隣から寄りかかるように見せてきた。それは温泉の特集みたいで綺麗な露天風呂が載っている。
「良いんじゃない?部屋の露天風呂とか豪華じゃん」
「やっぱり?ここの露天風呂良いよね!葵ちゃんと色々話してるんだけど、葵ちゃんは芸能人だから部屋の露天風呂付きにする予定なんだ!熱いけどリラックスしたいしね」
「確かにそうだね。でも遥、本当にいつの間に葵と仲良くなったの?葵が教えてくれたけど本当に驚いたよ」
ぶっちゃけ私は葵はここまで遥と仲良くなると思っていなかった。
「え?忘れちゃったけど話してたら結構話合うから、意気投合したっていうか…」
ページを捲りながら普通に答える遥にさすがだなと感心する。遥の社交性は見習う所がある。遥は本当に昔から誰とでも仲良くなる。遥は頭を私に預けながらこちらを見てきた。
「それよりさ、やっぱご飯だよね?海鮮の方が良いかな?」
「何でも良いよ」
どうでも良かった訳じゃないけど発言がまずかったか、遥は少しムッとした。
「なにそれ、興味無さそうにさー。やっぱり葵ちゃんに聞くし」
「興味あるよ。ごめんごめん」
「ばーか」
怒ったような言い方に苦笑いしながら頭を撫でると甘えたように抱き付いてきたから機嫌が直ったのかとホッとしながら携帯を取った。そういえば、今何時だ。おもむろに確認すると着信と連絡が来ていてそれは葵からだった。最近忙しいから電話はしないのに着信は珍しく、文面も近いうちに会いたいとのことだった。忙しいのに大丈夫なのか?少し疑問に思う。もしかして何か悩みとかがあるのか?
「なに?誰から?」
楽しそうな遥が訪ねてきた。
「え?葵だよ」
「えー、ずるい!」
「旅行一緒に行くでしょ?」
さらに強く抱き付いてきた遥を撫でながらとりあえず承諾の返信をした。特に断る理由もないし少し心配だ。すると遥が寂しそうに呟いてきた。
「最近全然遊んでくれないよね?」
確かに花見以来会ってなかったしこうやって飲むのも久しぶりだ。葵と出会う前は頻繁に遊んでいたから寂しい思いをさせてしまったのかもしれない。だから何かと葵の名前を出していたのか、携帯を置いて体を遥の方に向けた。遥は体を離すと不満そうにこちらを見てくる。
「ごめんね?最近色々あったから」
「葵ちゃんとは遊んでるじゃん!」
「それは、そうだけど。ちゃんと遥とも遊ぶよ」
痛いとこを突いてくる。頭を撫でてもまだ不貞腐れている。困ったものだ、遥はこういう所は本当に子供っぽくて、少し対応を間違えるとずっと怒ってしまう。
「ずっと放置してたくせに。寂しかったんですけど、ばーか」
「ごめんって。じゃあ、近いうちにまた遊ぼう?ね?」
「本当に?」
疑うような様子に何度も頷く。
「本当に、本当」
「絶対だよ?」
「うん、絶対」
黙る遥にこれでもダメかと少し諦めていたら勢い良く抱き付いてきた。後ろに倒れそうになるも手をついて受け止める。良かったと安堵した。怒らすと長いからそちらの方が困ってしまう。
「じゃあ、許す。だけどまた放置したら怒るからね?」
「分かったよ」
「ふふふ、ちゃんと守ってよ?」
「はいはい」
笑って釘を刺す遥に私は頷くしかなかった。
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