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46話
しおりを挟む「おい!ちょっと待て!ここで俺から皆にあげたいものがある」
透はいきなり立ち上がった。店員に何か言ったと思ったらテキーラが人数分出てきた。本当にバカのようだ。
「おまえらまだやる気を出してないみたいだから、これ飲んでやる気だせ!」
「わー、テキーラ?透、頭沸いてんの?」
「透君、僕は君についていくよ」
「これ私も飲むの?」
それぞれに言いたいことを言うけど透は笑うだけだ。
「まっ、とりあえず乾杯!」
それを合図に仕方なく一気に飲み干すとかなり酒が効いてきた。本当にやばい。だけど皆へっちゃらのようだった。
「由季?まだ飲めるでしょ?はい」
レイラからまた酒を注がれる。レイラは体が小さくて華奢なくせにどうなっているのかいつも疑問だ。
「あのさ、そろそろ私やばいよ…」
「大丈夫、大丈夫!今日はまだゲストを呼んでるから」
「まだ誰か来るの?」
「スペシャルゲストを呼んだんだよ!もうすぐ来るかも?ま、でも早く飲んで?」
全く嬉しくないし楽しみでもないゲストは誰だろう。嫌な予感しかしない。私はレイラに酒を飲まされながらカラオケをして騒いで意識が霞ながらも頑張った。楽しいけど、もうあまり考えられない。
トイレにふらつきながら行って帰ってくるとパン!!とクラッカーを鳴らされた。驚いて少しよたつくとレイラが助けてくれてテーブルには小さいケーキが置かれていた。一体何事だ。
「由季!誕生日まだだけど前祝い!おめでと!」
「ん?あー、ありがとう」
私を椅子に座らせてくれたレイラはクスクス笑っている。誕生日を覚えていたのか。確かにもうすぐだし嬉しいけどケーキが食べれるかどうか悩んでいたら誰かが私の肩を抱いてきた。
「由季?大丈夫なの?顔真っ赤だよ?」
「んん、あおい?え?」
頭が朦朧とするけどそれは確かに葵だった。何でここに?葵は来るとは一言も私に言っていない。
「葵、なんで?」
「私が呼んだの!さっき言ったでしょ?」
横からレイラが口を挟む。そうだった。あれは葵だったのか。こないだ飲み過ぎないように言われていたけどもう後の祭りだ。
「あぁ、そうか」
「葵ちゃんとりあえず歌ってあげよーよ?ほら、よっちゃんとかも歌って?」
「え、あぁ、うん」
葵は戸惑っていたがレイラが誕生日の歌を歌うと皆歌いだした。歌い終わってから皆が拍手してくれてお礼を言うとよっちゃんはシャンパンをグラスに注いできた。よっちゃんももう潰れそうに酔っぱらっている。
「由季!誕生日おめでとう!!早く飲め!どんどん飲め!そして僕に貢献しろ!」
「あー、…ありがと、まかせろ」
「由季、飲みすぎだよ?もう止めといたら?」
葵はおろおろしながら止めるけど私はまだ飲める。誕生祝いなんだ、この際飲みきるつもりだ。
「いや、大丈夫だよ、もったいないから飲むよ」
「由季でも…」
「葵ちゃん大丈夫だよ、こないだ葵ちゃん泣かした罰だよ。早く飲んで由季」
私は一気に飲み干した。あの旅行の罰が今来ているならもっと飲むしかないか。顔も体も熱いし、なんなら眠いけど私はグラスをレイラに渡した。
「まだ、のむから…ほら注いで」
「よーし良し良し!飲め飲め!!付き合うよ!葵ちゃん潰そう!」
グラスを受け取って嬉しそうに笑うレイラに頭を撫でられるけど葵は隣から制止しようとしてきた。
「で、でも、由季もう限界そうだしもう止めてあげた方が…」
「ほらほら、葵ちゃんお酒注いだあげて?大丈夫だから!いつもね、もっと酷くなるからまだ平気」
「ほ、本当に?」
疑う葵に私は笑って促した。
「あおい?大丈夫だから。まだのむよ」
「由季、もう知らないよ?」
「へいき、へいき」
それからまたお酒を注がれて私は飲めるだけ飲み干した。誕生日を祝われて私は調子に乗って飲むだけ飲みまくっていた。
そして、意識が少しはっきりしたのは椅子から転げ落ちた時だった。もう歩くのもままならなくて椅子に座ろうとしても上手く座れなかった。大いに騒いだのにレイラはまだカラオケをしていて、透はよっちゃんをついに潰していた。こいつらは本当にやばい。
「由季?!大丈夫?もう帰ろう?」
手も足も痛いし酔いすぎて起きれない私を心配するのは葵だけだった。体を起こそうとしてくれるけど力が入らなくて葵に凭れてしまう。もう私は上手く話せない。
「あおい…ざぎにあえっていーよ」
「なに?」
「あー、だからぁ、さきにぃ…かえりな」
葵の胸に凭れながら頑張って話す。葵はずっと困ったような顔をしているけどそれも可愛かった。
「お、置いてけないよ?由季もう、喋れてないよ?もう飲んじゃだめ。帰るよ?」
「んんん、いや、まだ……のめんから」
「だめ。もう帰るからね。とりあえず椅子に座って?」
強い口調で言われた私は葵に立ち上がらせてもらってなんとか椅子に座った。何か怒ってるなと思ってたら嫌なやつが隣にやって来た。
「由季!起きろ!寝るな!おまえやる気出せ!今日の主役だろ!」
透は私の肩を激しく揺らしてきた。
「やめて……ぎもちわるぐなるから!」
「なら酒あるぞ!飲め!てか、よっちゃん今回も潰れたな。こりゃ、起こすか。起こして飲ますしかないか!」
今度は潰れたよっちゃんの肩を掴もうとしていたから急いで止めた。
「やめろ!…もう止めろほんどに!」
かわいそうなよっちゃん。透への恋が報われないよっちゃんが哀れすぎる。おまえの無念は私が晴らしてやる。私はそこらへんにあった酒を透へ渡した。飲みすぎてどのグラスに何が入っていて誰のか分からないけど酒なのは分かる。
「おまえ、他人に言っといてなぁ、飲まないのは……カスのやるごどだぞ。早くのみやがれ」
「お?なんだなんだ?よし、分かった俺が手本を見せてやる!」
渡した酒を一気に飲み干した透はかなり酔っているようでグラスを置いたのに倒していた。それに慌てて店員が駆けつけるが私達には関係ない。
「ほらみろ!次は由季だ。おまえはそんなカスみたいなことしないだろ?」
「はぁ?あたりまえらろ」
肩をバシバシ叩きながら酒の入ったグラスを私の前に持ってきた。力が強過ぎて本当痛いから止めてほしい。だけどこいつに煽られて飲まないのは癪だ。私はグラスを掴んで飲もうとしたところで手を止められた。
「由季だめ。透君、もう由季連れて帰るから止めてあげて」
「え?帰るの?まだいたら良いのに」
「もう由季が限界そうだから」
私と透の間に入って私の手をグラスから離す葵はどうやら本当に帰るみたいだ。私にももう飲まさないつもりだし、さすがこの中で一番まともなだけある。
「由季、帰るのー?今日の主役のくせに!もうよっちゃん潰れたし結局透は付き合わないしつまんないよー」
後ろから首に抱きつきながら体を揺らすレイラに止めてほしいけど抵抗できない。散々楽しんだのにまだ物足りなさげなレイラに内心引く。
「ちょっ、…ゆららないで」
「ははは、由季ろれつ回ってない!本当ウケる!可愛い!」
「耳元で、さぁぐな」
高い声で笑うレイラがうざくて振り払おうとしたらバランスを崩してまた椅子から落ちた。本当に痛い。痛いし体が上手く動かせなくて起き上がれないし眠い。
「わー!由季が落ちた!本当大丈夫?笑えるから止めてよ!」
「由季?!大丈夫?」
「おいおい、大丈夫かよ?本当笑えんな!!」
笑われてるけど何か言うにも言えない状況で椅子に上半身を凭れさせる。もう眠いし体が限界だ。私はやりきったと思う。こいつら相手に良くやった。
「由季?由季?大丈夫?!」
葵が肩を揺するけど、体を起こせない。
「あおい…ごめんね……もうがぇりな」
「由季?何言ってるの?もう一緒に帰るよ?」
「…わだじ……ごごで寝るよ」
「由季?!寝ないで?あと帰るだけだから!」
葵は無理矢理私の上半身を椅子から起こしてくれたけど床に倒れそうになった私を支えてくれた。葵からいつもの良い匂いがしてそれがさらに眠気を誘う。
「由季、本当に大丈夫なの?!」
「んん……」
瞼がもう開かない。
「葵ちゃん、由季寝るよもう」
「え?レイラちゃん、どうしよう…」
何か話し声が聞こえるけど私はもう眠気に勝てなくてそのまま眠ることにした。
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