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47話
しおりを挟む胸焼け酷いし頭痛いし最悪。
目を開けて思ったのはそれだった。
何がいったいどうなったのか理解できないけどとりあえず私は自分の家で寝ている。あの後帰れたのに驚くし私のキッチンに葵が立ってるのにも驚く。なんなんだ本当に、思い出せない。
「あおい」
「え?あっ、由季、起きたの?」
葵を呼びかけたら何か作るのを止めてペットボトルの水を持って来てくれた。こんな時でも優しくて罪悪感を感じる。
「水飲む?本当に飲みすぎだよ?昨日、本っ当に大変だったんだからね」
「うん、ごめん。ありがとう」
水を一口飲んで頭を抑える。最悪な二日酔いだ。葵と色々話したいけどとりあえずシャワーを浴びたい。
「色々話したいけど、ちょっとシャワー浴びてくる」
「うん、待ってる」
私は足早にシャワーを浴びに向かった。熱いシャワーを浴びてすっきりしたけど二日酔いは健在だ。居間のテーブルで鞄から胃薬を出して飲む。今回はかなり酷いなと他人事みたいに思った。昨日の記憶を断片的に思い出すけどこうなって当たり前だ。すると良い匂いのする野菜のスープを持ってきてくれた葵は隣に座ってきた。
「何か食べてからじゃないと薬飲んだらだめだよ。これ食べて?食べやすいと思うから」
「大丈夫だよ。酔っぱらいは皆こうしてるから。でもお腹減ったから食べる。ありがと」
葵はいまいち納得してなさそうだけどとりあえずスープをありがたくいただいた。相変わらず美味しくて身に染みた。本当に生き返る。
「あぁぁ、本当に美味しい。ありがとう葵」
「うん。熱いから気を付けてね」
「うん、それで昨日は本当にすいませんでした。ちょっと調子に乗って飲みすぎちゃった」
スープを飲んでから改めて謝るけど、葵は少し怒っているようだった。
「本当だよ?由季が潰れて寝ちゃうから帰るのすごく大変だったし、皆手伝ってくれたんだよ?」
「うん。マジですいません。家まで連れ帰ってくれて本当にありがとう」
「楽しかったのは分かるけど、もうあんなに飲んじゃだめだからね?」
怒った葵は少し怖いけど可愛かった。なんか、幸せだなと思いながら、うんと頷くもまだ怒っていた。昨日は椅子から落ちていたし本当に飲み過ぎていたので葵も珍しくまだ納得できないみたいだ。
「…本当に分かってるの?もしかしたら、襲われちゃうかもしれないんだよ?…眠ってたら分からないし、あんなに酔ってたら抵抗できないんだよ?」
「あぁ、うん。ごめんね。でも、そんなの大丈夫だよ。透とかいるし、まず私を襲う人いないから、心配し過ぎだよ」
心配性過ぎる葵に少し笑って可愛いなと思いながら安心させるように答えるけど、それは良くなかったようだった。
「そんなの……分からないよ!!」
いきなり怒鳴った葵は本当に真面目に怒っているようだった。私は思わず驚いて葵に向き直る。こんなに怒るのは初めてだった。
「あんなに酔って…眠ってたら…ありえるよ!由季のこと気になってる人がいるかもしれないのに…。由季は、由季は全然分かってない!!」
「葵…。うん、分かった、分かったから。ごめん、本当にもう気を付けるよ」
慌ててちゃんと謝るけど葵はヒステリックに怒鳴るだけだ。
「分かってたらもっと気を付けて!!」
「……ごめん、葵」
「由季は自分を分かってない!……分かってたら、あんな風にしたりしない!……由季は、由季は凄く魅力的なんだよ?あんな隙があったら、ほっとかない人がいるに決まってる」
「分かった。分かったよ、葵。次からはあんなに飲まないから」
私の発言は葵の神経を逆撫でしたようで上手い言葉が見つからないけど宥めるように言った。だけど葵は止まらない。私の両肩に手を置いて、必死な表情で私を見てきた。
「私の前以外で、あんな風にしないで。あんな風にして良いのは私にだけ。…私の由季なんだよ?私にしか絶対に見せちゃだめ。お酒は飲んでも良いけどあんなの、絶対に…だめ。由季は私だけの由季なんだよ」
「…うん、分かったから」
葵の迫力に動けなくて緊張しながら頷く。この子の想いに軽率だったと感じた。葵は私を片時も離したくないのだ。
「…分かってくれたの?私は由季を、誰にも取られたくないの。それが由季にその気がなかったとしても、絶対に。誰にも近寄ってほしくない。誰にも由季を触らせたくないし、触ってほしくないんだよ」
「分かってるよ、分かってるから。葵以外には触らせないし触らない」
安心させるように言っても葵は私の肩から手を離して訴えるように辛そうに言った。
「じゃあ、証明して?本当だって!私だけだって!……私しかいないって証明して!」
私は唾を飲んだ。また不安にさせてしまった、それが分かって葵の辛そうな表情に切なくなる。思わず葵の頬に手を伸ばす。葵が望むなら証明しないとならない。私の愛が、気持ちが伝わるように。
私は葵の頬を優しく撫でて引き寄せると無言でキスをする。啄むように角度を変えて何回も。
「好き、好きだよ、好き、愛してる」
キスをしながら気持ちを伝えて葵を見つめる。葵はキスをすると目が変わる。恍惚とした眼差しは私からのキスを待っているようだった。私は次第に長く口づけをする。愛情が伝わるように、証明できるように。
「葵、好き、本当に愛してるよ」
唇を離して吐息が触れる距離で囁く。そしてまた唇を重ねて舌で唇をこじ開けて舌を絡めた。頬に添えていた手は頭に回して力をいれる。離れないように葵に深く深くキスをする。それに葵はくぐもったいやらしい声を漏らしながら私に抱きついてきた。
「はっ…んん!あっ…んん…はぁ、んんん!はぁ、ゆ、っん…んん!き」
苦しそうな葵は私を時より呼びながら私に応えるように舌を絡めてきて、それが愛しくて思わず背中に手を這わせる。好きでどうにかなりそうだった。柔らかい感触と気持ちの良い温もりが私達を止まらなくさせる。舌を絡めてお互いの唾液を飲み込んで私はやっと頭から手を離しながら唇を離した。
「んっはぁ、好きだよ。伝わった?」
「んん、はぁ、…うん」
葵は火照った顔でまた私に抱き付いてきた。安心して満足したような葵に私は背中に手を回して優しく撫でる。これからは葵のことを考えて行動しないとならないと改めて思う。葵は私にのめり込みすぎて私がちゃんとしないとすぐに崩れてしまう。それこそ今日みたいに。
「私も、好き、……愛してる。好き過ぎて、好き過ぎて……伝えられない」
「そっか。私も好きだよ、本当に」
強く抱きつく葵は少し私に顔を向ける。その顔は不安そうだった。
「由季、本当に気を付けてね?」
「分かってるよ。大丈夫だから。それより、葵は他に心配なことない?前に葵が言ってたからちゃんと連絡もしてるし約束も守ってるけど大丈夫かな?」
葵とこないだ約束してから私は忠実に約束を守っている。以前よりも拘束されたような生活は葵の嬉しそうな声を聞くとそこまで苦ではなかったけど、今日の様子を見ると葵は何かまた感じているかもしれない。
「それは、平気。ちゃんと守ってくれていつも連絡くれるし、寂しくない。でも、……昨日は不安だったから……これから、一日の予定とか家に帰った時も連絡してほしい」
真面目に私が取られるかもしれないと思ってしまった葵を安心させるためにしっかり頷いた。また拘束されるような約束だけど、この子の不安は解消してあげたい。
「うん。分かった。昨日は本当にごめんね。他にはない?なんかあったら言ってね」
「あとは、平気。……それより私の方が、いつもごめんね。さっきも……怒っちゃって…」
葵は感情の起伏が激しいけど私はそこも葵の魅力だと思っているし、好きだからそんなに気にならない。だけど葵は気にしているみたいだ。
後悔していそうな葵の髪を撫でて笑いかけた。
「全然いいよ。好きだから平気」
「でも…私…」
「いいから。そのままの葵が好き」
「……ゆき」
不安がる葵に次は優しくキスをする。少し唇を離して見つめると葵は酔ったように私を間近で見つめて離さない。
「好きだよ。すぐ不安がっちゃうとこも、怒るとこも好き」
「うん……ありがとう由季」
笑う葵の目が求めているようでまたキスをしたくなったけど、これ以上したらキスで終われなさそうだし、私は一応二日酔いで葵も疲れてるだろうから止めた。
そして、そのまま葵を抱き締めて耳元で小さく囁いた。
「このまま葵としたいけど、今日は体調が良くないし…私の誕生日にしても良い?」
「……うん。良いよ?私も由季と……エッチしたい……」
それに葵は顔を赤くしながら承諾してくれた。その言葉はお互いに恥ずかしかったけど好きなら触れたいと思うのは当然のことだ。
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