毒花令嬢の逆襲 ~良い子のふりはもうやめました~

りーさん

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第一部 身の程知らずなご令嬢 ~第一章 毒花は開花する~

11. 今後の動き

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 マリエンヌが話を切り出すと、全員がマリエンヌのほうを見る。

「わたくし、今まであまり他の令嬢方と、あまり交流を持ってはいなかったでしょう?学園に入れば、正式に結婚の準備に動かねばなりませんし、そろそろ交流を広げたいと思っていたのです。皆さまの友人を紹介してくださいませんか?」

 マリエンヌの言葉に、ほとんどが戸惑いを見せるなか、アリスティアだけは目を輝かせた。

「もちろんです!マリエンヌさまとお話ししたいとおっしゃる者たちは多いので、話を通せばすぐかと思いますわ!」
「アリスティアさま。そう簡単に他の令嬢方をマリエンヌさまと会わせることはできませんよ」
「マリエンヌさまは友人が欲しいのでしょう?ですが、マリエンヌさまとただの友人として交流を深めようとする存在は少ないかと思いますわ」

 心の底から嬉しそうなアリスティアを落ち着かせるように、ルクレツィアとミルレーヌが言う。

 アリスティアは、その言葉に少し不満そうにしているが、アリスティアも中央貴族ではあるので、二人が正論を言っているのはわかっており、不満を口に出すことはない。

 そんなアリスティアをフォローするように、マリエンヌが言う。

「もちろん、皆さまがよろしければの話ですし、皆さまが信用できる相手だけでかまいませんよ」

 このほうが、マリエンヌとしてもありがたい。

 アリスティアたちが信用している者ならば、リネアたちよりもマリエンヌを信じる者がほとんどだろう。
 マリエンヌが選別する手間が省けるのを、歓迎しない理由がない。

「かしこまりました。念入りに吟味した上で、お茶会にお誘いいたします」
「それぞれの交流関係がありますし、全員を集めるよりは、それぞれの集まりに、マリエンヌさまが参加されるほうがよいかもしれませんね」
「あまり身分が低すぎると、マリエンヌさまに恐れ多さを感じるやもしれませんし、伯爵家以上に限定するべきですわね。人数も少なめのほうがよいかもしれません」

 アリスティアたちが、誰を誘うのか、いつ行うのかを話し合っている間に、マリエンヌは根回しの下準備を整えるために、シェリーナに声をかける。

「そういえば、シェリーナさまには、婚約者か恋人がおられるのですか?」
「い、いえ……」

 いきなりのことにシェリーナは動揺する素振りを見せながらも、マリエンヌの言葉を否定する。

 マリエンヌを見るその目は、なぜ急にそんなことを聞くのかとマリエンヌにたずねていた。

「ライオネルさまの件について話したとき、リネアさまの行動が許せなかったとお聞きしたのをふと思い出して、てっきり他の皆さまと同じような理由だったのかと、疑問に思ったのですが、違ったのですね」

 マリエンヌがそう言うと、アリスティアたちも話すのを止めてシェリーナのほうを見る。

 それを確認したマリエンヌは、言葉を続ける。

「わたくし、婚約者の女性がリネアさまの行いを快く思わないのは理解できるのです。ですが、婚約者がおられないのに、侯爵家の子息であるライオネルさまに意見までしたのはなぜなのでしょう?なぜ、それほどまでの思いを抱くのですか?」
「……わたくし、婚約者はいないのですが、思い人はいるのです。名は伏せさせていただきます」

 話したくない様子ではあったが、公爵令嬢であるマリエンヌには黙っていられないと感じたのか、ぽつりぽつりと話し出した。

「彼とは、婚約者ではなかったものの、幼い頃からの知り合いではあったので、友人以上の関係は築けていたと自負しております。ですが、学園に入ってからは、彼は、次第にわたくしとは距離を置き、リネアさまとの仲を深めるようになりました」

 リネアの名前が出ると、とたんにアリスティアの表情が険しくなる。
 ルクレツィアとミルレーヌも、あまり顔には出してはいないものの、不機嫌な雰囲気は醸し出していた。

 シェリーナは、三人の異様な様子に気づくと、びくりと体を震わせ、口をつぐむ。

 ここで終わってしまっては困ると思ったマリエンヌは、何かきっかけでもと口を開こうとするが、その前にシェリーナが口を開く。

「ご、誤解なさらないで欲しいのですが、少なくとも、当時はリネアさまにあからさまな非はなかったと思われます。わたくしが彼からお聞きした話では、落としてしまったハンカチを拾ってもらったのが話すきっかけになったそうですので……」

 確かに、それだけならリネアに非はないだろう。マリエンヌだって、同じ状況なら同じ行動をとったに違いない。

 だが、リネアの行動は、その後が問題視されている。

「きっかけはそうでも、その後の行動は逸脱しすぎているでしょう」
「そうですわ。拾ってもらったのなら、お礼を言って、そこで終わればよろしいのに」
「お、お礼として、三等級の学食をご馳走して、それ以降は距離を置いていたと聞きますが……」

 食堂では、それぞれの生活様式になるべく合わせるために、一等級から五等級までの食事が提供されている。
 一等級が一番高額で、五等級が一番安いので、あまり財産を持たない地方貴族は、五等級の食事が一般的である。

 シェリーナはわからないが、マリエンヌとルクレツィアは一等級、ミルレーヌとアリスティアは二等級の食事をしていた。

 ブラットン男爵家は資金に余裕がないはずなので、おそらくは五等級だろう。
 三等級は、財産を持つ子爵家や、あまり余裕のない伯爵家が食事することが多く、リネアが口にいれることができるものではない。

 ハンカチを拾ってもらっただけのお礼としてはやりすぎのような気もするが、それで終われば何の問題もなかっただろう。

 終わってないから問題視されているというのをさっきから話しているはずなのに、シェリーナは理解できないのだろうか。
 それとも、思い人が糾弾されていることが、気に食わないのだろうか。

 どちらかといえば、友人たちが非難しているのはリネアであって、シェリーナの思い人ではないのだけど……子爵令嬢のシェリーナには、まだ高位貴族の言い回しを理解するのは難しいのかもしれない。

「以前までの思いは理解しました。では、シェリーナさまは、その昔馴染みの殿方とリネアさまのことを、今はどう思っていらっしゃるのですか?」

 自分に舐めた態度を取る者たちには容赦するつもりはないが、シェリーナを悲しませてしまうと、さすがに良心が痛む。
 もし、まだ懸想しているのなら、という意図でたずねたことだったが……

「まだ、諦めきれない気持ちはありますし、リネアさまに思うところはあります。ですが、ライオネルさまを見たら、もう……疲れてしまって」

 なんともいえない顔をして、シェリーナはうつむく。

 それは、諦めのような、悲しみのような、複雑な思いを抱いているように見えた。

(悪いことしちゃったかしら)

 シェリーナを悲しませるつもりはなかったので、良心は痛むが、ここまでしてくれるなら、根回しとしては充分だろう。

 先ほどから、マリエンヌたちとの会話に聞き耳を立てている生徒から、話は広がっていくに違いない。シェリーナの表情を見れば、誰もが真実と思って広めてくれるだろう。

 そうなれば、おそらく、リネアは今以上に孤立する。後は、じわじわと追いつめるだけだ。

「でしたら、シェリーナさまは、今後はリネアさまたちと関わるつもりはないのですね?」

 ミルレーヌが、真剣にシェリーナにたずねる。
 シェリーナは、ゆっくりとうなずいた。

「はい。ライオネルさまの件もありますし、これ以上、余計な感情を向けたくも、向けられたくもありませんから」
「ならば、わたくしは、しばらく距離を置いたほうがよいかもしれません。ライオネルさまの婚約者という立場である以上、リネアさまたちには必然といってよいほど関わることになるでしょうから」

 ライオネルが起こした問題について、婚約者として動かなければならないミルレーヌは、間違いなくリネアにも接触する。
 ミルレーヌと下手に関わりを持てば、ライオネルやリネアと接触する機会が増え、その分、シェリーナの身を危険にさらすこととなる。

 マリエンヌに身の安全を頼まれた状態では、距離を置くのが最も安全だと判断したのだろう。
 マリエンヌも、特に異論はないので、咎めたりするつもりはなかった。

「では、シェリーナさまの保護の件は、アリスティアさまが中心になったほうがよいでしょう。ハーレライ伯爵家は、侯爵家に匹敵するほどの権力を持っていますし、アレクシスさまの件も解決しているようですしね」

 ルクレツィアの提案に、アリスティアはこくりとうなずく。

「かしこまりました。では、今後はわたくしが教室までシェリーナさまを迎えに行き、共に行動することといたしましょう。シェリーナさまもよろしいですか?」
「は、はい」

 シェリーナがうなずいたことで、今後の方針が完全に固まり、お茶会を終えた。
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